第22話 〜仲間とは〜
俺が目を覚ましたのはちょうど軍神が悪魔に爪を刺されたところだった。
「嘘だろ」
飛び起きた俺は状況を確認した。
「創造神、状況は最悪です。このままでは僕たちは全員やられてしまいます。今のところ悪魔の弱点という弱点が見つかっておりません」
知恵の神は説明してくれた。
この場に残っているのは、豊穣神、重力神、知恵の神、発明神、芸術神、まだ眠っている水神と命与神。
俺は水神と命与神を叩き起こす。
「おいお前ら眠りこけてる場合じゃねーぞ。早く起きやがれ」
少し乱暴に扱ったため芸術神に頭をぶん殴られた。
「なんだお前そこまで元気なら戦いに参加してこいよ」
「はっ無理に決まってんだろ。武器なんて持ったことすらねぇよ」
「それは俺だって一緒だ」
「ほら早く起きろ」
水神が動いた。
「水神まずいぞ覚醒してくれ」
「あれ僕……」
「すまん。水神ちょっと力を貸してくれないか」
状況を把握してないが切羽詰まった様子だったからなのかコクリと頷いた。
「ありがとう。知恵の神と豊穣神は手分けして封印魔法の準備をしていてくれ。じゃあ命与神借りてくから。あと重力神悪いが俺の重力軽くしてくれるか」
「えぇわかりました」
そう言って水神と命与神を抱えた俺は軍神の元にやってきた。
途中命与神が目を覚ましたので、移動しながら作戦を伝えた。
俺は悪魔に向かい軍神をぶん投げた後急いで悪魔を通り過ぎる。
時間を稼いでもらっている間に俺は宇宙の端にやってきた。目的の代物を手に取ると悪魔の元へと急いで戻った。
軍神が悪魔の方に飛んでいる間に、命与神が俺が描いた鳳凰に命を吹き込み。襲い掛かる。宇宙からは水神により大量の水責め食らっていた。
俺は悪魔の背後に見知った影を見つけた。
「あれ模倣神生きてたのか。そう言えば姿なかったな」
攻撃を受け朦朧とした意識の中、模倣神は手に何かを握っていた。
「へぇすげぇな」
なんの模倣神は鎖を悪魔の身体中に巻き付けていた。
俺はその鎖を引っ張り重石を描いて空に飛ばないようにする。
水神の水が止むと宇宙の色は眩い光に包まれた。
「グハッ」
悪魔の顔が歪む。手下たちは光で蒸発していく。
悪魔の大きな本体はみるみる小さくなっていく。
「豊穣神・知恵の神」
パァーと悪魔の周りに光が集結する。
ポンっと音を立てると手のひらくらいの小さな瓶に悪魔が詰められた。
「あけろ。だせー」
ジタバタと暴れ回る悪魔。それを尻目に俺は明るい宇宙に向かって叫んだ。
「よっしゃー」
叫んだと同時に吐血した。
「うぇ……血の味がする」
捉えられていた愛の神は重力神がキャッチし豊穣神が様子を確認した。
その他命与神が動かした生物により軍神や模倣神など他の神達についても豊穣神が処置を施した。
「全能神見当たらないみたいだけどどこにいるの」
何も知らない命与神が呟いた。
「そういえばどこにいるんでしょうね」
知恵の神も疑問に思っているようだ。
「全能神が悪魔だったってわけじゃないのか」
「えっ全能神と悪魔は別物じゃないの」
「悪魔に直接尋問した方が早いな」
「近くに全能神がいないか確認してみるぞ」
発明神が神発見器を手に取る。
しかし戦いの最中壊れたのか、元々ちゃんと発見できないのかその機械は動かなかった。
「そんなはずは」
発明神はもう一度スイッチを入れる。
しかし結果は変わらなかった。
「……ここにはいないのでしょうか。それとも全能神が悪魔なのでしょうか」
発明神は唸る。
「でもそうだとして、どうして全能神は悪魔になる必要があったのでしょう。やっと世界が完成したところです。世界を壊すならわかりますが、僕たちを襲ってくるのはおかしいのではないでしょうか」
知恵の神が考えを整理しながら、状況を確認する。
「悪魔の弱点が光で、その第2世界が壊されたから悪魔が出現できるようになったのであれば、全能神は悪魔ではないのではないでしょうか。そう言えば創造神はどうして悪魔が明かりが苦手だと思ったのですか」
知恵の神に質問される。
「あーそれは天啓だ」
「天啓」
俺でもよくわからないのだ。目が覚めて悪魔を認識した瞬間に”光”が弱点だと、誰かの囁く声が聞こえたのだ。
思い返せばあれは全能神の声だった気もするな。
いやぁでもあいつが悪魔……。いやあいつは知っていたのか。悪魔が襲ってくるということを。だから様子がおかしかったということであれば一応筋は通らなくもない。
「くそっそういう事か」
俺が声を荒げたので知恵の神が驚いた顔をした。
「何かお分かりになりました」
「取り敢えず第8世界に移動しよう」
怪我を負ったものは寝かせ、それ以外のメンバーは座って俺が話し始めるのを待っていた。
「恐らくだが全能神はこうなることを知っていた」
驚いた表情をしたものと特に無反応なものに分かれた。
「まぁ全能神だものね」
全能神と1番付き合いの長い命与神はさらっと告げた。
「あぁ、全能神はおそらく先の未来を把握していたんだろうな。そして自分だけでどうにかしようと動いていた。どこまでか予見していたのかはわからないが、第2世界が爆発した辺りから様子がおかしかった」
「第2世界が爆発したことにより、悪魔が襲ってくることが確定したと?」
知恵の神が情報を付け足す。
「水神。俺たちが
唯一起きていて全能神の護衛をしていた水神。
「僕は……」
「いい私が答える」
口籠る水神に変わり芸術神が状況を説明するようだ。
「お前らが第6世界に飛んだ後、取り乱している私と水神に全能神は気を張っていると疲れるからと言ってハーブティーを入れてくれた。しばらくすると私も水神も眠りについてしまった。眠るように魔法でもかけていたんだろうな」
話の内容に相違がないのか水神も頷いた。
「お前らが戻ってくる少し前に、水神と私は目を覚ました。その時には全能神もいたし特に気にしてなかった」
「おかしいなと思ったんです。僕の眼は他の神と少し見え方が違うみたいなので。全能神の魂というのでしょうか。それが変化していることに」
気づいていたのに、説明することもできずにいた水神は自分を責めた。
「まぁまぁそう落ち込むなって誰も水神のこと責めたりしないんだからさ」
「その後会議した後に全能神はどこかに行かれましたが、彼はどこに行っていたのでしょうか」
破壊神は当然の質問をぶつけてくる。
「えーっともう言ってもいいかこれ」
宇宙探索をしている際に全能神を見かけたが、話だけ伝えたところで別に作業内容が伝わるわけじゃないし話してもいいか。
「何よ何か知ってることがあるならもったいぶらずに言いなさいよ」
芸術神にどやされる。
「愛の神の欠片が一部なくてみんなで分かれて宇宙探索しに行っただろ。その時に俺の行ったエリアの本当に端の端にあいついたんだよ。新しい光となるものを作るために作業しなきゃいけないって、作り方がわかってしまうと悪戯される可能性があるからとか言ってた」
「それってもしかして」
「あぁ悪魔を弱体化せた光は全能神が作っていた光だ」
「そうだったんですね。でもそうだとしたらどうして最初に全能神が悪魔だと思ったんですか」
「それは……」
自分でも少し疑問に思っていた。俺は気を失うまえ全能神の姿をしたやつに襲われたのは間違いない。しかし目覚めた時みんなが戦っていたのはすでに悪魔だった。どうして俺は全能神が悪魔をだと思っていたのだろうか。自分自身でもうまく答えが出ない。そして全能神が悪魔だとしたらやはりあの光は創り出せるはずが無い。
「なんでだろうな」
「全能神が普段からしっかりと信頼を築かないから誤解を生むんだろ」
眠っていた軍神が目を覚ましたようだ。
「軍神っ」
「大丈夫か」
「あぁすまんな。他のものは大丈夫か」
他とは一緒に共闘した冥界神、模倣神、破壊神のことだろう。
「私はピンピンしておりますよ」
破壊神が身体を動かし少し顔を歪めた。
「こら安静にしてなさい」
豊穣神に叱られ大人しくなる。
「冥界神と模倣神はまだ眠っているわ。軍神程の致命傷ではないから時期に目を覚ますと思うわ」
手当てをした豊穣神が言うのだから大丈夫だろう。
「この結末もあの野郎の予想通りなのか」
「さてどうだかね」
俺は瓶に入っている悪魔に視線を移すと問いかけた。
「お前全能神をどこにやったんだ」
プイッ。そっぽを向いた。
「あらあら創造神そんなんじゃだめよ。もっと優しく聞かないと」
そう言う豊穣神は悪魔に「ほらおねーさんに教えなさい」と優しい口調で聞いたが、その迫力は鬼が憑依したかのようだ。
やっぱり普段優しそうな方が、怒ると恐ろしいな。
悪魔は恐怖に負けたのか、豊穣神の方を見た。
「うっせぇババア」
まさかの暴言に豊穣神がきれた。
「こいつ燃やしていいかしら。言っておくけどね私愛の神より若いんだからね」
愛の神を奪おうとしていた悪魔。驚いた表情をしていた。
バチコーン。
豊穣神の頭に何か当たった。
ものが飛んできた方を見ると愛の神が目を覚ましたようだ。
「豊穣しーん」
愛の神が笑顔のまますごい形相で豊穣神を睨んでいた。
「ひゃぁーごめんなさーい」
年齢問題はセンシティブな内容のようだ。
まぁぶっちゃけ年齢って言っても神だし、顕現順がイコール見た目に関わるわけでもないし、そんなに気にしなくてもいいと思うんだが。
「まぁいいわ。回復してないみんなのために1曲舞わせていただきます」
愛の神は起きたばかりだと言うのに、元気だなと思ったのも束の間。
激しい音楽が流れてきた。
どう見ても踊りと合ってない。しかし誰もツッコミを入れない。
しかし愛の神が踊るにつれ、怪我していた部分がみるみる回復しているのがわかる。
「さすがですね」
破壊神が呟いた。愛の神の舞を見るのが初めてではないのだろう。
愛の神が舞い終わる頃には身体も軽くなっていた。
俺は悪魔に全能神の場所を改めて聞こうとした。悪魔の方を見るとすっかり目がハートになっていた。今ならポロッと情報が出てきそうである。
「それで全能神はどこにいるのかしら」
愛の神が優しく問いかける。
「全能神は時の狭間にいます」
「時の狭間だ。それはどこにあるんだ」
「はっお前らそんなことも知らないのか」
悪魔に馬鹿にされる。
「あらあら優秀ね」
愛の神は悪魔を褒める。調子に乗った悪魔は快く教えてくれる。
「第8世界とは切り離された世界だよ」
「待ってそれはどこなんだ。どうやればそこに行けるんだ」
誰も知らない。おそらく全能神は敢えて教えていないのだ。
「さぁなそれは俺も知らん」
「くそーどうしろって」
神達の間に沈黙が流れる。
スッと手があがった。
「知恵の神。何か分かったのか」
「いえ、わかりませんが、第8世界の全能神のエリアに行ってみてはいかがでしょうか」
「えっでも何もないんじゃないか」
全能神は途中までずっと寝ていたし、あまり自信のエリアに戻っているような様子はなかったはずだ。
「いえ、きっとあるはずです。手がかりが」
全員で全能神のエリアへ移動することになった。
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