第21話 〜引っ張るものとして〜
「欠片いっぱいあるね」
冥界神が呟いた。各々光っていた欠片を集めたところ1つではなく散らばっていたと言うことだ。
「散らばっていたから発明神の探索機ではぐるぐる回っていたのか」
「どうでしょう。わかりません」
「創造神の方には何もなかった感じですか」
俺だけが何も持っていないのでちゃんと探してないと思われてるな。
「俺の方には光っているものは何もなかったぞ。そもそも俺1番遠くまで行かされたわけよ。さすがにあそこまでは飛ばないって」
さすがにみんな文句は言ってこなかった。
「それじゃあ豊穣神に確かめてもらうか」
集めた欠片全てを豊穣神へ渡す。豊穣神は1つずつ丁寧に観察する。
「まぁいいわ取り敢えず戻してみましょう」
そう言って先程と同じように呪文を唱えた。
先程より様々な色の光が辺りを包んだ。
「まだ終わらないのか」
命与神の時とは違いすぐに光が止まない。
その間水神がどこかへ行こうとしたので、俺は止めた。
「こらどこいくんだ」
「パーツが足りないみたい」
「多分あっちに残りのパーツがある」
水神が行こうとした場所は俺が探索していたはずの場所だ。
「すまん俺ちょっと水神と行ってくる」
他の神に言い残して俺は水神の後を追った。
まじか大丈夫か。どこにあるかはわからないがあまり遠くまで行くとなると全能神と鉢合わせする可能性があるぞ。
自分が欠片を見落としていたことよりも、全能神のことを心配していた。
待てよ。でもあいつ別にやましいことしてるわけじゃないし、どうにかなるか。
カーンカーンどこからか金属を打ち付けるかのような音が響いた。
待てよ。あっちは。
水神を止めようとしたが、水神は思ったより移動が早くて止めることができなかった。
「あれ」
水神は全能神が持っていたものを指差した。
「あれか……」
全能神が愛の神の一部と思われるものを使い何かを製造していた。
最悪の展開だ。黒幕は全能神だということになる。
「くそっ」
俺は全能神が右手に持っていた灼熱のブツを奪うと水神へ急いで戻るように言った。
水神は意図を察したのか、龍へと姿を変えた。
「おまっここ水の中じゃないぞ。大丈夫なのか」
俺は水神の背中に掴まりながら聞いた。
「少しなら」
後ろから全能神が追いかけてくる。
俺は全能神の方を見ながら急いで銃を作成し全能神へ向かって撃ち込む。
当たったかと思ったが、効いている様子はない。
「まじかよ」
俺は戦闘レベルで言えば下の方だ。なんせこんな平和そうな世界で争いなど起こると思ってないからな。
俺は武器になりそうなものを手当たり次第描いて全能神へ向けて投げた。
しかし単純な攻撃は躱されてしまう。
そりゃそうよな。相手は魔法も使うんだ。
全能神は移動しながらぶつぶつと何かを詠唱しているようだった。
ただでさえ暗い空間がより暗くなったと思った瞬間。
どぉぉんん。
何もない空間から雷が水神に向かって落ちてきた。
ゴロゴロとまだ雷が落ちてきそうだ。
「水神大丈夫か」
俺は水神を心配しながらも次落ちてくる雷を避けるために避雷針を描いて、空へぶん投げる。
ピカッ。雷は避雷針へと思いっきり音を立てて落ちた。
よっしゃ。っと思ったのも束の間俺は急に宙に投げ出された。
水神が龍の姿から人型に戻ったのだった。
俺は水神を拾うとなんとか他の神が待っている場所へ急ぐ。
ヒュッ。背中に何かが刺さり、バランスを崩しそうになる。
その後も脚や腕にも攻撃を受けたが、気合いで走る。
はぁはぁはぁはぁ。
視界にやっと他の神が見えかかった。
感覚はすでになく、視界もぼやけてきた。
これはやばいな。
でも水神を……。
****
どぉぉんん。
「今度はなんだ」
皆が警戒した。
「あれを見てください」
知恵の神が創造神達が行った方角を指し示した。
「あっちは創造神達がいる方角です。何かあったようですがどうしますか」
ここでは指示を出すとすれば我の仕事か。
「第8世界にいるやつ一旦ここに連れて来い破壊神」
「仰せのままに」
破壊神はものの1秒もしない間に芸術神と命与神を連れて戻ってきた。
「冥界神、破壊神、模倣神は俺といくぞ。重力神はここで寝ているやつとその他を守ってくれ。豊穣神は前線には出てくるな。負傷したやつを回復してやってくれ」
戦えるやつと戦いには向いてないやつを即座に分けると、俺は仲間を引き連れ問題があった方向へと急ぐ。
「師匠あれ創造神と水神」
冥界神に言われたがまだ少し距離があるようでちゃんと確認ができない。
「やばそうだな。我が合図したら冥界神はあいつらを豊穣神に届けてくれ、我は襲ってきてるやつの顔を拝んでくらぁ」
「りょ」
創造神達の距離を把握する。
「3カウントで行くぞ。”3””2””1”今だ」
俺は創造神を背中側に隠すと飛んできた鉄の球を剣で薙ぎ払った。
「敵のお出ましか」
敵の顔を見て言葉を失った。
「全能神……」
「軍神しっかりしてください。あれは全能神ではありません。見た目に騙されないでください」
破壊神が意識を戻してくれる。
「じゃああいつはなんだ」
「悪魔」
戻ってきた冥界神が答えた。
「あくまだぁ〜」
予想外の答えだったので素っ頓狂な声をあげてしまった。
全能神の姿をしていたそいつは、バレたからなのか姿を変えた。
全長100Mくらいありそうな巨大な肉体と羽を持ったそいつは果たして我らで倒すことができるのだろうかと思うほど圧倒的な大きさを持っていた。
「いやはや、まさかこんなに大きいとは」
どうしようかと考えあぐねていると「キャァー」という悲鳴が聞こえた。
今度はなんだ。
「愛の神が攫われたようです」
右目にモノクルをつけたままの破壊神が状況を伝えてくれた。
もう一度悪魔の方を見ると左にて愛の神を握っていた。
「趣味悪いですね。これで迂闊に攻撃できなくなりましたよ」
模倣神は構えていた銃をハンドガンへと変えた。
「悪魔に何が効くんでしょうね」
「さてなんでしょうか。軍神殿どうされますか」
我はこのために戦闘について鍛えたきたのではないだろうか。何が得策なんだ。悪魔という得体の知れない敵。自分達よりも何倍も大きい。
悩んでいる間に宇宙から大量の槍が降ってきた。
破壊神が大量の砲弾を撃って半分以上撃ち落とすと。模倣神が散弾銃でさらに半分にし、冥界心が鎌で残りの分を撃ち落とした。
こんなにも戦える味方がいたのか。
悩んでる暇はない。
「まずは羽を狙うぞ。我らより大きいその翼で飛び回られたら狙えるもんも狙えない」
「愛の神には加護を与えていますので思いっきりやってください」
気づけば他の神達も近くまで移動していた。
「俺が重力操作で操るのでその間に撃ち落としてください」
「よしっ行くぞ」
俺は冥界神と俺は近距離型なので敵に近づく。
破壊神はどちらもできるようだが、今回は遠距離から支援するようだ。模倣神もライフル銃に変更していた。
俺は悪魔に目的がバレないように顔面に向かって飛んだ。
冥界神は背後から羽を狙いに行った。
「ふんわかりやすいこと」
悪魔は羽を大きく羽ばたかせた。
しかし重力神が力をかけているのか、思ったより動けないようだ。
一瞬の隙を見計らい、それぞれが悪魔に攻撃した。
しかし模倣神と破壊神の攻撃は片手腕で防御され、我の攻撃はその掌で払われた。冥界神の羽の攻撃はかすり傷程度なのか全く動じていない。
悪魔は宇宙から再度槍を降らせた。
「ちっ」
我は剣に風の力を込めると「
折れた槍は一部守らなければならない神の元にも降り注いだが、豊穣神が結界を張ったおかげでどうにか防いでいた。
「普通の弾じゃ無理か」
皆の元に戻ると模倣神がそう呟いた。
「そうですね。色んな攻撃をして弱点を探してみましょうか」
その後火・氷・水等々できる限りの攻撃をしかめてみるもどれも弱点になり得るものではなかった。
悪魔は飽きてきたのか、早く終わらせようとしているのか、手に持っていた愛の神を紫の結界の中に閉じ込めるとこちらへ向けて薄ら笑いを浮かべている。
「万事休すか」
バチン。我は気合を入れ直すため両の頬を強く叩く。
「お前ら持っている砲弾を全部打ち込め。冥界神は弱体化しそうな毒やら酸やらをぶちまけてこい。我は片羽を折ってくる」
「おっしゃー気分上がってきましたよ。
「俺もちょっと近距離行ってくるわ」
ハンドガンを両手に持つとゴーグルをつけた。
特に合図もなく破壊神の怒涛の砲弾が悪魔目がけ飛んでいく。我はそれを避けながら、悪魔の背後に回る。
模倣神は悪魔の右手に乗ると走りながら、銃をぶっ放している。
冥界神は、悪魔に効きそうな薬品を鎌を使って味方にかからないように気をつけながら全体にぶちまけている。
砲弾で煙が舞い上がってる隙に我は大剣を振り下ろした。
「くっ」
羽の根元がとても硬く全く通らない。それでも気合いで少しずつ押し込んでいく。
「重力神」
我は叫んだ。重力神は俺の剣にだけ重力負荷をかけた。
太かった根元部分を通過するとザザザザと一気に羽を裂いた。
さすがに悪魔もこれは効いたのか全身を回転させた。
我はふわっと上部に飛び悪魔の頭頂部に大剣を振りおろす。
よしっ。と思ったのも束の間左指で大剣を持たれる。
くそっ。大剣をぶん投げられた。
しかし想定内だ。俺は大剣を消すと新たに毒薬を仕込んだ大きめのクナイを顔面に目がけて投げる。
いくつかは左腕で払い除けられたが、それ以外は顔と腕に刺さった。
特に顔色を変えない悪魔。
「まぁまだまだだよな」
大砲をぶち込んでいた破壊神はステッキを右手に持つと悪魔の足元をステッキで引っ掻いた。
どういう材質なのか。悪魔の顔が歪んだ。
「破壊神いいぞ」
このまま続きたい。
模倣神は隙を伺いながら悪魔の周り後ぐるぐると高速に移動していた。
冥界神の状況を確認すると鎌で皮膚を抉っているようだ。
しかしこの状況は続きはしなかった。
悪魔が小さい声で何かぶつぶつ言い始めた。
すると宇宙の色が変わりいくつもの魔法陣が出現し始めた。
「まずい。一旦退け」
冥界神と破壊神が瞬時に仲間の元に戻った。
「模倣神はどこだ」
他のメンバーも探すが見当たらない。
「捕まったか」
魔法陣から悪魔の手下だろうか。大量の悪魔がやってきた。
「まずいぞ」
水神と創造神の手当てを終えたのだろうか。
豊穣神が杖を横に倒した状態で浮かせた。
「大地の恵みよ、力を。豊穣の名の下、願う。
木々が成長して悪魔の手下を捉える。
「今のうちに」
豊穣神の声で我に返る。
「行くぞ」
発明神や知恵の神も何やら機械を手に持っていた。
圧倒的に優勢だと思っていた。
駆け出したその瞬間を多大なる衝撃を受けた。
「軍神」
皆が我を呼んでいた。ゴフォァ。大量の血を吐き出した。
悪魔がニタニタと笑っていた。
悪魔の右手の3本の爪が俺の腹を貫いていた。
悪魔は我の腹から爪を引き抜くと血を払った。
我はその後やられていく仲間を。ボロボロになる仲間を見守ることしかできなかった。
「よぉ軍神辛そうだな」
横を見ると創造神が立っていた。
「なぁ軍神まだ身体は動かせるか」
我は身体で息をしながら、上体を支えられ立ち上がった。
「はっ老体を舐めるんじゃない」
強がりだった。
「おうそりゃよかったぜ」
そう言うと「ちょいとすまんね」と我を抱き抱えると悪魔に向かった投げた。
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