第20話 〜それぞれの役割〜
「それではみなさんも賛成ということで、賛成多数でしたので、世界を2つ創ります。僕は準備があるのでしばらく顔出しませんが、その間くれぐれも羽目を外さないでくださいね」
「おぉまかせとけ」
軍神が答える。
「捜索の方も引き続きよろしくお願いします」
そう言い残し全能神はどこかに姿を消した。
「それじゃ、対策チームのメンバーも暇になっただろうから一緒に捜索よろしくな」
「おうまかせろ」
俺は発明神に近寄る。
「なぁ発明神」
「なんじゃ。神を探す機械なら作ってすでに使ってみたが見つからんかったぞ」
「えっそんなもん作ってたんか。凄いな」
発明神は首を横に振る。
「いや、見つけられていないのだから、意味ない。改良する予定さ」
「そうか」
研究者ってのは試行錯誤の繰り返しだもんな。失敗したから終わる訳ではないしな。なんて言葉を掛ければいいのかわからなかった。
「……なぁそれはどこら辺を示していたのか覚えているか」
発明神は静かにコチラを見ると地図でこの辺りだと第2世界があった場所の少し南側を指した。
「そうかありがとな。俺もその辺探してみるわ」
「そうか。まぁ頑張れよ」
俺は発明神と別れると、教えてもらった場所へと水神と一緒に向かった。
「なぁ水神。お前どちらかと言えば龍じゃん。なんか気配とか感じたりしないのか」
少し困った顔をした水神。
「いえ僕にはわかりません。僕はあまり力をコントロールできないのです」
「あぁお前の力が膨大すぎて身体がまだ制御できてないのか。それなら軍神に鍛えてもらうといいぞ。多分あいつは力のコントロールうまいだろうから。まぁ話しかけづらいなら重力神とか破壊神もコントロールうまそうだけどな」
「……そう、ですね」
「発明神が言ってたのはこの辺だよなぁ」
辺りは大小様々な欠片が集まっていた。
「あっ」
急に水神が声を上げた。
「なんだなんだ何か見つかったか」
「いえあそこ……」
水神は何かを指差した。
「ん?どれだ?」
俺は水神と指差した方へ進んだ。水神はたくさんの欠片の中から小さな欠片を1つ拾った。
「これ光ってる」
「光ってるだって」
俺から見ると他の欠片とは特に代わりのないただの欠片の一部だ。
「豊穣神のところに持っていこう」
水神はなぜか豊穣神の名をあげた。
「豊穣神ね。どこだ。おーい豊穣しーん」
俺は豊穣神を見つけると大きな声で叫んだ。
破壊神と一緒にいた豊穣神は辺りをキョロキョロしていた。
俺はわかるように手を振った。
「どうされました」
豊穣神は俺と水神を交互に見た。
「えーっと、水神」
俺は水神に話を振った。
「これ。他の欠片と違う」
「どれどれ見せて」
豊穣神は水神から欠片を渡されるとじっくりと観察した。
「ちょっと持っててくれる」
豊穣神が水神に欠片を渡した。
豊穣神はどこからか1冊の本と自身の身長よりも少し大きい杖を出すと何やら唱え始めた。
「豊穣の神が問う。本来の姿をここに。
パァーと辺りが優しい光に包まれた。
欠片が様相と変えた。
「……命与神?」
普段はお面を着けているので、外した顔を見るのは初めてだが、間違いなく命与神だと感じた。
「おい。おい。聞こえるか命与神」
「無理に起こさないで休ませてあげましょう」
「おい。命与神見つかったぞ」
俺は他の神に伝えた。
第8世界へ移動し、ベッドへ横たわらせると、他の神々もみんな集まっていた。
「命与神はどこで見つかったんだ」
軍神が聞いてきたので、小さい欠片になっていたこと。そしてそれを豊穣神が元に戻したことを伝えた。
「そうか。防御魔法を使っていたか」
「これは愛の神の魔法のようね」
魔法を解除した豊穣神が補足した。
「あとは愛の神を探すだけだな」
命与神が見つかったことで、皆やる気が出たようだ。
「それを見つけたのは誰だ?」
軍神に問われたので俺が答えた。
「水神です。俺には見えませんでしたが、光って見えていたようです」
水神がこくりと頷いた。
「発明神の機械が指し示していた場所にありました。なのでもう一度試せば愛の神が見つかるかもしれません」
俺は発明神の方を見る。
「すまん。すでに改良していてその時と少し状況が違うんだが、試してみるか」
発明神は改良したばかりの機械を取り出すとスイッチを入れた。
しかし方向を指し示す針はぐるぐる回っていた。
「……」
「これはどういうことだ」
軍神が聞いた。
「俺たちが指し示されてる可能性あるか?」
第2世界の近くに発明神だけが降りてもう一度試すことにした。
「うーん」
やはり結果は同じだった。
発明神が戻ってきたが、どう言葉を掛ければいいのか。
気まずい空気になった。
「よしっ切り替えていこう。水神がいるんだもう一度探しに行ってみよう」
命与神の事を芸術神に任せ、俺らは第2世界の近くへと戻ってきていた。
「水神の見えている景色を模倣神コピーすることはできますか」
知恵の神が模倣神に聞いた。
「なるほどその手があったか」
「はい。それならば水神だけに負担をかけることなく手分けして探すことができます」
模倣神は「試してみます」と言った。
模倣神は水神へと姿を変えた。
「……」
皆が息を呑む。
「どうでしょう。光っているものが特にないのでどういう感じかわかりません。これで見つかるかわかりませんが、発明神何か目につけられるものを持っていますか」
発明神は慌ててメガネを渡した。
模倣神は9神分のメガネ型の水神視点を作り終えると少しだけ小さくなった。
破壊神だけなぜか
「第2世界があった場所だけじゃなく全体的に分担して捜索するぞ」
軍神がそれぞれの神を分散させた。
俺は他の惑星の近くではなく、軍神が指定した移動できる最端へと来ていた。
「いやぁさすがにこんなところにはないだろう」
辺りを見渡すが光っているものは特に見つけられない。
「ゆっくり中心部に戻るかー」
その時視界の右端に映った、歪みのようなものがなんとなく気になった。
俺は触れようと右手を伸ばした。
ジュッ。
触れた部分が焼けた。声にならない痛み。
ふと誰かの気配を感じた。
「ぜ…んのう…しん」
全能神がこちらを振り返った。
「おや、創造神じゃないですか、こんなところで何をしているんですか」
「えっ?何をじゃないよ。それはこっちのセリフだ。俺らは愛の神の捜索をしてるだけだ」
「そうだったんですか。あっ。先程あれに触った部分見せてください」
俺は右手を全能神に見せた。
「あぁ痛そうですね」
そう言うと右手を俺の手の上に翳した。
みるみる怪我が治っていく。
「さて、治りましたね。さて私が何をしているのか聞きたかったんですっけ」
「あ…あぁ」
「新しい世界を作るのに、どうするか実験をしていたのですよ」
「あぁそうだよな光源になるものが必要だもんな」
「はい。第2世界が爆散してしまい、どのような熱量で仕組みの惑星だったのかを考えていました。今のところ生物が住めるような場所は提供できなそうですね」
「まぁ住めなくても問題ないんじゃないのか。全体が熱量として光を与えることができれば。ってかそもそもこんな場所で1神だけで考えてたっていい答え出ないんじゃないか。知恵の神とかに相談すればいい答え出てきそうだけどな」
全能神は首を横に振った。
「いいえ、これは私の仕事なのです。他の方には知られてはいけないのです。知られてしまってはいつ悪戯されるかわかりませんしね」
「……なぁ全能神は今回の犯人に心当たりあるんじゃないか」
俺は全能神の少しおかしな行動に、何かを隠しているのではと不信感を抱いていた。
「……どうしてそう思ったのです」
目つきが鋭くなった気がした。
「そうだな……お前の行動がおかしいからじゃないか」
「そうですか」
全能神はなんだか納得いっていないような顔をしていた。
「恐らくだが、知恵の神も怪しんでると思うぞ」
「えっ知恵の神もですか?」
「お前隠し事向いてないんじゃないか」
「まぁそれはさておき、愛の神探しに戻らなくていいんですか」
「あぁーまぁでもそっちは時期に見つかるだろ」
「そうなんですか」
「えっ見つからないことあるか?」
「まだ見つかっていないのでしょう。でしたらちゃんと協力してあげたほうがいいですよ」
「そうか。まぁ取り敢えず後で話聞くからな」
俺は全能神に背中を向けると周囲を軽く捜索して、皆の元へと戻った。
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