第19話 〜新たな一歩〜

何やら近くで話し声が聞こえるが、まだ微睡の中にいるのかあまり聞こえてこない。

なんか首が痛い気がするな。ってか何があったんだっけ。

思い出せそうで思い出せない。

俺は起き上がると大きなあくびをした。

辺りを見渡すとすごく重々しい雰囲気が辺りを包んでいた。

「ん?お前らどうしてそんな辛気臭い顔してんだ」

事情がわからないので、そのまま疑問をぶつけた。

視線が一気に俺に集まった。

「よかったです全能神」

知恵の神が嬉しそうに飛び込んできた。

「おー何か心配かけたか悪いな」

「おや、眠る前の記憶ないのですね。まぁあまりいい思いはしないのでそのままでいいと思います」

破壊神が言うのだから、無理して思い出さなくても良さそうだな。

横を見ると重力神や発明神、芸術神と豊穣神も眠っているようだった。

「ごめん何かあったんだろ。話し続けていいぞ」

こほん。全能神が咳払いをした。

全能神と水神を除く他の神が緊張した面持ちをしていた。

「水神の能力をしばらく預かります」

水神は暗い顔をしていたが、思ったよりは悪くない内容だったのか?

「なぁそれの判断しばらく俺に預けてくれないか」

事情を何も知らない俺は全能神に意義を申し立てた。

「はぁ?創造神何を言ってるんですか。事情を知らないでしょう」

全能神に正論を言われたが、俺も負けじと言い返す。

「ほら全能神も忙しいでしょ。ほとんどの時間を水の中で過ごしている水神から水取りあげちゃったら、陸に打ち上げられた魚同然でしょ。流石にそれは可哀想じゃん」

何言ってんだこいつと言う目をしてる。

「まぁまぁ水神もまだ幼いんだし、俺が色々教えるよ。だからさ全能神は目の前のこと集中してくれよ」

正直俺が眠っている間にもしかしたら解決していることもあるかもしれないけれど、パッと見た感じ命与神と愛の神はいなそうなので、先にそちらの解決を急いで欲しかった。

「それにしても軍神も模倣神も無事だったんだなぁ。であの時結局何があったわけ」

俺は盛大に話を逸らした。しかし他の神達もまだその話を聞いていなかったのか、2神に視線が集まった。

「あぁそれもそうだな」

軍神が話を始めた。

「みんなとの通信を終えて俺と模倣神は第2世界へ転移したはずだった。しかしなぜか跳ね返されたのか、外側にいた。第2世界の熱は神をも溶かすものって聞いてたし、実際に物凄い熱いと言うよりは針で刺されるような感じだったかな。だから一瞬で防壁を張った」

軍神が思い出したのか一瞬苦い顔をした。

「それでどうしようかと模倣神と話していたら、逃げてって声が聞こえて俺は模倣神の力も借りて全世界と俺達に瞬時に防壁を張った。その後はご存知の通り、大爆発した。さすがに爆風までは防ぎきれなくて、俺と模倣神はそれぞれ飛ばされちまったわけよ」

「飛ばされた後はどうしてたんだ」

「多分俺も模倣神もしばらく気を失っていたんだろな。俺は老けちまって視界が悪くなっちまったもんで、迷子になっていて、幼くなっていたいた模倣神に見つけてもらうまで辺りをうろうろ彷徨っていたってわけだ」

「頑張って探しました」

模倣神はとても苦労したのであろう。苦笑いしていた。

「そうですか。お疲れ様でした」

全能神が労いの言葉をかけた。

「なぁ誰か探索能力持ったやついないのか」

辺りを見回すが首を縦に振るものはいなそうだ。

探索能力があれば、命与神や愛の神を探せるのではと思ったんだけど、誰も持ってないか。

他に何か探す方法ないだろうか。

悩んでいる間に、眠りについていた豊穣神が目を覚ました。

彼女は自分の指を確認すると、「やった制約が解除されてるわ」と喜んだ。

「誰かしら。ゲームで勝利してくれたのは。ありがとう」

横に眠っている芸術神を激しく揺すり起こすと「見て取れてるわ」と自身の指を見せた。まだ寝ぼけていた芸術神。しかし指を見て制約が解除されているのを知ると、目が大きくなった。

「ほんとだーよかったー」

芸術神は豊穣神に抱きつき涙を流していた。

「2神ともゲームに負けて制約かけられてたんだな」

俺は話しかける。

「そうなのよ。転移してすぐゲームが始まったのだけれど、私ゲームなんてしたことなくて」

豊穣神が急に止まった。

「やだ、思い出したくもなかった」

ゲームに負けた時の記憶を思い出したのだろうか。嫌そうな顔をした。

「あーもう余計なこと思い出しちゃったは。本当に不愉快だわ」

「首……」

「やだやめてぇ」

芸術神を遮る豊穣神。

芸術神が言ったその単語を聞いた途端、俺も思い出した。全身に鳥肌が立った。

俺は首がつながっていることを再確認するために、首を触った。

「よし」

この一連の動作を見ていた芸術神。

「創造神も負けたんだ」

ニヤニヤとコチラを見てきた。

「くそっ。行けると思ったんだよ」

「もう少しでしたもんね」

知恵の神が励ましてくれるが、その言葉が俺にぐさっと鋭利な刃物のように刺さった。

「くそーってかあいつ誰が倒したんだ。知恵の神か」

頭の回転が速いのは知恵の神だろうけど。

「ふふふ」

知恵の神は嬉しそうに微笑んだ。

「あれはなんと”破壊神”さんが倒してくれました」

俺と豊穣神、芸術神が優雅にティータイムをしている破壊神へと視線を移した。

「えぇ」「えぇー」「あらあら」

破壊神は俺らの視線に気付いたのか、ひらひらと手を振ってきた。

「意外だな。まさかゲーム得意だったとは」

「あれはだいぶ手慣れていますね」

知恵の神が当時の状況を熱弁してくれた。


重力神と発明神も目を覚まし、現在の状況について改めて全能神が話してくれた。

命与神と愛の神の捜索と故意的に行われたであろう第2世界の爆発並びに第2世界に代わる世界の創造。

対策チームと捜索チームに分かれて作業することになった。

もちろん俺は対策チーム

世界創造終わったばかりなのに第2世界の変わりの世界を作らなければならないなんて。

まじ誰だよ。爆発させたやつ。絶対ぶん殴ってやる。

「第2世界のあった場所にもう一度世界を創りたいところなんですが、爆発した欠片なども集まっており同じところに惑星を創造することができません。同一円周上に惑星が並んでいましたが、配置を他の惑星の内側もしくは外側に配置することになります。何か意見はありますか」

「なぁ新しい惑星さクロワッサンみたいにぐるぐる移動できたりしないか」

「……」

全員意味がわらかないと言うような表情をしていた。

「クロワッサンの中心の部分上に第1世界から第7世界の円があって。あっ横から見た時のな。でそれにぶつからない距離でクロワッサンみたいな形に動かしたら面白くないか?」

「クロワッサンは三日月型ではなく菱形の方でいいですか」

捜索チームのはずの破壊神が話に混ざってきた。

「お前捜索言ったんじゃないのか」

優雅にティータイムをしながらすっとぼけた顔をしていた。

「何を言ってるんです。捜索チームですよ。ほら映像見て全体を把握しているんですよ。それであなたのおっしゃるクロワッサンの形は菱形でよろしいでしょうか」

「えーっと、こう言うやつだよこう言うやつ」

俺は俺は想像しているクロワッサンを絵に描いて見せる。

「やはり菱形でしたか。そこがわからないと皆さんと話が噛み合わないかと思い助言させていただきました」

それだけいうと映像の方に向き直った。

「なるほど。創造神は双円錐……。螺旋状に移動する惑星にしたいとおっしゃっているのですね」

「説明が秀逸すぎてわかんないわよ」

芸術神が俺の頭を小突いた。

制約が解かれたからなのかすっかりいつもの調子に戻っていた。

「やっぱりお前はそっちの方がいいな」

「……な、な、何言ってんのよ」

芸術神はそっぽを向いた。

周囲を見渡すと全能神がニヤニヤしてコチラを見ていた。

重力神と水神はよくわからなそうに首を傾げていた。

「ほ、他に何かアイデアあるやついるのか」

「その……」

「ん?重力神何かあるのか」

「えーっとその惑星を行ったり来たりさせるのは結構大変だと思うんですけど」

「あーそれもそうかもな。全能神その辺ってどうなるの」

「えぇそうですね。惑星単体を見ればそれぞれ回転しておりましたが、回転方向は変わらないですし、速さもほぼ一定なので、創造神が提案した動きはだいぶ難しいかも知れませんね」

「そうか。まぁそれなら仕方ないか。他になんかいい方法ないかなぁ」

「……」

「それこそ円錐の先端に新しい惑星作って、円錐の面の部分の円状に他の惑星じゃダメなわけ。それなら前より全体の惑星を照らせるようになるけど」

芸術神が沈黙を破った。

「おぉーそれもおもしろそうだな」

「もういっその事その反対側にも惑星作ってどちらの時間帯も光源がある状態作ったら良くないか。片方は眩しくてらし、片方は優しく照らす」

「それはおもしろいですね」

黙って話を聞いていた模倣神が話に混ざる。

「どうだ全能神できるのか」

「……まぁできなくはないですが、他の皆さんにも一度意見を伺いましょう。言っておきますけど忙しくなるのは創造神ですからね」

全能神に釘を刺される。

「まぁ他のやつも描けるようになったしさ、模倣神もいるしどうにかなるだろう」

俺は楽観的に答える。

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