第18話 〜覚悟〜
「創造神さん」
外からゲームの中継映像を見ていた僕は叫ばずにはいられなかった。
次は僕か破壊神が戦わなければいけないのか。
僕はゲームというのはプレイしたことがない。頭脳を使うものであれば勝算はあるが、戦闘系なら難しいだろう。
そんな空気を察してか破壊神が「次は私が一戦交えてきます」と僕に伝えた。
「重力神と発明神がまだ戻ってきておりませんが、何かあった可能性もあります。もし私が負けるなんてことがあったら、あなたは迷わず第8世界にお戻りください」
そう言って僕の手を握った破壊神。
「……でも……」
「大丈夫ですよ。私こう見えても腕には自信があるんです」
ニコッと笑う破壊神の瞳には並々ならぬ闘争心が宿っているようだ。
かっこいいな。どうして僕はこういう時に自分から行くことができないのだろうか。危険なことはいつも僕以外が。頼りない自分に、無力な自分に泣きたくなった。でも泣いはいけない。
「気をつけてください」
瞳に涙を溜めてそういうのが精一杯だった。
しかし意外にも勝敗はすぐに決まった。
第1ゲーム
将棋であった。
押されている破壊神。しかし何かを待っているかのように静かに盤面に向き合っていた。
相手が勝利を確信した次の瞬間。
状況が一変した。
何が……。
相手は油断していたのだ。自分が攻めているのだと。
それが誘導されたものとも知らず。
恐らく破壊神は将棋に詳しい。そしてアキと呼ばれる支配者は詳しくはないのであろう。それが勝敗を分けた。
「勝者:破壊神」
僕は小さくガッツポーズをする。
第2ゲーム
ゲームセンターなどでよくある格闘ゲーム。
しかしここでは実際に戦うのはプレイヤー自信。ボタンの操作などはない。
僕は破壊神の戦った姿を見たことがないが、全能神達に捕まった時は抵抗もほぼなくあっさりだったと聞いた。
相手は恐らく先ほどのように捕まえた者達を使って挑むのだろうと予想はついた。
大丈夫だろうか。僕は見るのが辛い。
「すいません。久しぶりなので少しアップをしてもよろしいでしょうか」
破壊神は始まる前に、軽く飛んだり軽く殴ったり蹴ったりの動作をおこなった。
「ありがとうございます」
すぐにゲームは始まった。
破壊神が
敵のHPは0になった。
「勝者:破壊神」
圧倒的な力を見せつけ、破壊神は勝利した。
ゲーム空間が解かれると僕は破壊神の元に走った。
「破壊神」
「ははは。そんなに泣きじゃくっては笑われてしまいますぞ」
どこからか取り出したハンカチで僕の涙を拭ってくれる。
「あれ?どうして破壊神の服ボロボロなの?」
涙でちゃんと見ていなかったが、破壊神の服はあちこち裂かれたかのようになっていた。
「なぁにちょーっと力を使っただけですよ」
破壊神はどこかで自信の力を使ったようだ。
「それじゃあいつを起こしてくるかな」
破壊神は先程まで戦っていたアキを叩き起こすと駒になっていたメンバーを解放させた。
僕は倒れている豊穣神と創造神の元へ駆け寄る。
ゲームの最中に起こる出来事は全て現実の肉体にも反映されると言っていたが、ブラフだったようだ。
しかしどちらもすぐには目を覚さない。
僕がしばらくそこで2神の様子を見ていると、破壊神はどこからか重力神と発明神を抱えて持ってきた。
「全く手がかかりますね。眠らされていましたよ」
そうはいうものの破壊神はとても優しい表情をしてた。
僕は立ち上がって破壊神を抱きしめる。
「ありがとうございます。破壊神」
「はは。至極恐悦でございます」
破壊神はそう言いながら僕の頭を撫でてくれた。
しばらくしても誰も目を覚さない。
破壊神は服装を着替えキセルを吸っていた。
空から1枚紙が降ってきた。
”おめでとう”
先程まで戦っていたアキは首謀者ではないようだ。というかこれは他の事件に関連しているのだろうか。単純にゲームが強いこの世界の住民なのではないだろうか。
僕達に喧嘩を売っている犯人は一体何が目的なのだろうか。
僕は紙を握り締めると、深呼吸した。冷静でいなければみんなのブレーンとして。
4神が目を覚さないので、そのまま第8世界に転移することにした。
「以上です」
僕は第8世界に残っていた全能神に、第6世界で起こったことを報告した。
「そうですか」
全能神は何を考えているのだろうか。焦っている様子は見受けられないがどこかおかしい気がする。
「あっそう言えば」
僕はクシャクシャにしてしまった紙を全能神に渡した。
「敵はどこからか僕達を監視してます」
どこから僕達を見ているのか、次に何が起きるのかわからない。どうすればいいんだろうか。
「全能神は何か発見ありましたでしょうか」
「いえ、ここでいろんな映像を確認していましたが、新しい発見はありませんでした」
「次はどうしましょうか」
全能神は周囲を見渡す。
「そうですね。今動けるのは私、水神、破壊神、そして
第1世界:争いは多発しているが、国同士の争いなので要観察
第2世界:爆散。原因の究明。他の惑星へも照らしていたので早急に明かりに変わるものが必要。
第3世界:穴が空いていたが修復済み。穴が空いた原因は不明。再発防止のためにも調査が必要。
第4世界:中心部にある光源が弱くなっているためか、全体的に動きが見られない。
第5世界:異常なし
第6世界:支配者であるアキを捕獲。現在は通常通り運行。
第7世界:異常なし
第2世界から第4世界についての調査が必要だ。
「全能神僕に第3世界と第4世界の映像を貸していただけますか」
全能神は少し驚いた表情をしていたが、ここでただ状況が変化するのを待っていても意味がない。僕が役に立つ時が来た。
「えぇどうぞ」
「ありがとうございます。しばらく集中するので声をかけないでください」
「そうですか。わかりました。無理はなさらないで下さいね」
僕は全能神に頭を下げると早速映像の確認をすることにした。
第3世界と第4世界に異常が発生したのは、第2世界の爆発とは関係ない。
だとするとこの周辺の映像を確認しても何も映らないはず。
もっと前の映像を確認しないと。
僕は、模倣神達が襲ってきた時に被害を被り、創造神が直し忘れている可能性も考えた。
しかし、予想は外れた。
創造神は修復した時きちんと元通りだった。適当に作業してはいなかった。
ではいつだ。
俺はそれ以降の映像を眺め続けた。
そして第3世界の穴について決定的な証拠を見つけた。
「あった」
映像をアップにする。
それは
映像の位置を変える。
それは間違いなく第4世界の宇宙船から放たれたものだった。
「あれ、でも1番外側の層には水は漏れていなかったんじゃないのか」
僕はしばらく穴の空いた場所を確認していたが、やはり水は惑星の外へは漏れることはなかった。
そしてしばらく経ってから、第3世界から宇宙船ではなく第4世界へと何かが放出されるの確認した。
水の塊だろうか。それは第4世界の中心の光源に見事に的中していた。
この件は、僕達へメッセージを送ってきたものとは違うそう確信した。
僕は全能神達がいる場所へ戻った。
すると、予想外の神が姿を表していた。
「軍神、模倣神も」
よく見ると両者とも見た目が少し違う。
軍神はいつもより老けており、模倣神はまた小さくなっていた。
「お二方もお力を使ったのですね。無事で何よりです」
「おう心配かけちまった見てーだな。それにしてもどうしてこんなに眠りこけてるんだ」
「それは先ほども説明したでしょ」
全能神が呆れた顔をする。
軍神が戻ってきたことで全能神の表情は少し和らいだ気がする。
違和感があったが、全能神も心配でしょうがないのだろう。
まだあと2神戻ってきていないが、どうか無事でありますように。
「知恵の神、戻ってきたということは何か進展あったのでしょう」
2神が戻ってきた感動で忘れていた。
「そうでした。第3世界と第4世界の異常についてはわかりました」
僕は先程の映像を見せながら、何が起こったのかを起きている神達に説明した。
「これは惑星同士の争いなので、神である僕らの出番はないのではないでしょうか」
「えぇそうですね。実際にそうであれば私たちは介入しない方がいいでしょう」
全能神は含みのある言い方をする。
「何か懸念点があるのですか」
「さて、水神貴方はこの件何か心当たりないですか」
急に話を振られ視線が集まり水神は落ち着かない様子だ。
「僕は、知りません」
「それは僕に誓えますか」
全能神が少し圧力をかける。
「……」
水神は押し黙った。どうやら事情を知っているようだ。
「僕……僕は手を出してはいません。それは誓います」
語尾が弱々しい。
「何かが、僕の横をものすごい速さで通り過ぎました。僕は瞬時に何者かにこの世界が狙われたのだと判断し、世界の外に漏れそうだった水を僕の力を使い漏れないようにしました」
水神は唇を強く引き結んだ。
「映像ではわからないのですが、その後すぐに水は激しく振動しました。しばらく僕らは何もできずにただ水の中を漂うしかありませんでした。やっと揺れが止まった時には世界がぐちゃぐちゃになっていました。まだ僕の力は規制されていましたし、漏れそうだった水を止めたので元に戻す力がありませんでした。僕は水の世界で1番力を持つクジラと魚人に第4世界が襲ってきたこと。そして第4世界の弱点について話しました。水の世界から放たれた水の球は第4世界の要である光源に直撃しました」
水神は下を向いた。
全能神全能神は神を裁く力を持っている。どのような決断を下されるのか水神は恐れているのだ。
しばらく沈黙が続く。誰もが全能神の言葉を待っている。
しかしこの静寂を破ったのは全能神ではなかった。
ふわぁぁ。
大きなあくびをして創造神が目を覚ました。
「ん?お前らどうしてそんな辛気臭い顔してんだ」
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