第17話 〜敵の正体は〜
創造を終えてからそんなに時間が経っていないので、見た目的には変化は感じられなかった。
しかしテーマパークであるはずの世界に歓声が全く聞こえない。
「単独行動はしないほうがいいよな」
後ろの振り返り4神いることを確認する。
……いや5神いる。
「誰だお前」
俺は真ん中に立っているそいつを指差した。
「なんなん。急に。怖いやん」
後ろに数歩下がったそいつは狐色の髪に狐のお面を被り、和服姿だった。
「お前はなんだ?」
「ん?俺?俺のこと気になるの」
楽しそうに聞いてくる。
「あぁこの辺お前のお仲間が仕切ってるのか」
「なかまぁ〜そんなダサいもん俺は知らんで」
「えっ?知らないの?」
「それよか君らは何でここに来たん」
「ここに仲間を傷つけた奴がいるからカチコミに来たんだよ」
「はーカチコミ〜それは大変やね」
「悪さしないから、付いて行ってもええ」
楽しそうやんと謎のお面の奴が絡んでくる。
「来ないで下さい。得体の知れない者を連れて行くことなどできませんので」
破壊神が丁重にお断りした。
「えぇ〜なんでなん。ぜーったい楽しくなるやん。連れて行って」
「ダメです。現状あなたが敵か味方かこちらでは判断つきかねます」
「いやいや〜また〜そんなこと言って、僕いた方が後々役に立つかも知れへんよ〜」
ウロウロウロウロされており、中に進むことができない。
「先に様子を見てきてくれないか」
俺は重力神と発明神の2神に声をかける。
「はいよ。サクッと見てくるとします」
2神が消え、こちらには破壊神・知恵の神と3神になった。
「君名前なんて言うの」
俺はお面野郎に質問した。
「興味持ってくれた系〜?せっかくだし答えちゃおっかな〜」
「俺は創造神。この世界を創った神だ」
「かみぃ〜最近はやってるんやろか。しかも世界創造って」
こいつ信じていないようだ。
しかし最初に会った時より機嫌がいいのか雰囲気が柔らかい。話し方のせいなのかどこか胡散臭さが消えない。
本能がこいつに注意しろと言っている。
「僕は」
知恵の神も名乗ろうとしていたので、慌てて止める。
「んーどうしちゃったの?他の方らも挨拶してくれてええのに」
俺は2人にはこいつには能力を明かすなとテレパシーを送った。
「まだ時間があるから後からこいつらには名乗らせますので、君の名前教えてくれる」
口元が僅かに歪んだ。
「あぁ俺はこの世界の
名前の部分だけ特殊なボイスでおそらく魅惑か何かの特殊効果がある。
しかし俺には効かない。
神格レベルが上がった際に、言葉にできるものについては俺自身特殊効果をつけられるようになり、そもそもこの世界創ったの俺だからなぁ。
他の神達はここにくる前にいろんなステータスを全能神にバフしてもらったし、そう簡単にどうにかならないはずだ。
なぜ神なのに、最初からそういうの無効にしないんだろうな。
「そうか。アキ。それじゃ勝負しようか」
どんな魅了をかけたのかは知らないが、俺が普通に話しているのに驚いているようだ。
「お兄さんやりますねぇ」
センスで口元を覆うと、「それでは始めましょう」そう宣言する声が聞こえた。
景色が変わり、気づけばゴーカートに乗せられていた。
走って勝負しようってわけか。
ゴーカートに自信があるわけではないが、このコースは恐らく俺が創ったゲームのままだろう。
それならワンチャン可能性がある。
「始める前にルール説明するでぇ」
気づくと隣の車にアキは乗っていた。
ゲームは全部で3種類。先に2勝した方が勝者。
ゲームの最中に起こる出来事は全て現実の肉体にも反映される。
ゲームに勝利しなくても、どちらかが戦意不能に陥ったら強制終了。
ゲーム中は何をしてもいい。
「ルール理解した?特に質問なければ始めるけど〜?」
「いや、待て。ゲームはどうやって決まるんだ。お前が決めるとお前が得意なものになって不公平だろ」
「ん〜?別に俺が決めてんちゃうけどぉ〜。自動。そうそう自動や」
お面をしているので表情は読み取れないが、恐らく嘘だろうな。
「はいはい。それでこのゲームはゴールすればいいのか」
「そうね。ゴールすればえぇよ」
「そうか。ゴールはこのスタート地点ってことでいいのか。あと何周すればいいんだ」
「ゴールはここ。3周すればえぇかな」
「そうか。このゲームについては理解した」
「ほなほな始めよ〜」
スタートラインに上部でカウントダウンが始まった。
”3” ”2” ”1”
ビューン。爆速でアキがスタートを切った。
俺の乗ってる車はぷすぷすと音を立てた。
スタートする前にタイヤをやられていた。
「それじゃお先〜」
そう言ってアキは俺の視界から消えた。
はぁ〜。わかっていたがため息を吐くと俺はペンを取り出し。タイヤを4つ描き込んだ。
4つ目を描き終える頃にアキは1周目を終え2周目に入った。
「あれれ〜そんなんで大丈夫なんキミ〜」
俺は挑発に乗ることもなく淡々と作業する。
よしっ。俺は作業を終えやっと車に乗り込んだ。
これで動くだろうか。車を動かすもボロ車なのか全くスピードが出なそうだ。
俺はやっとの思いでスタート地点を通過した。しかしその横をアキが通り過ぎた。
「これで勝ったも同然やな」
見えなくなる彼を見送ると俺は車をもう一度走らせた。
1位:創造神
テロップにそう表示される。
「おいふざけんな」
スタート兼ゴール地点に戻ってきたアキが俺に詰め寄ってきた。
「なんだ?何が不満なんだ」
「お前何したんだよ。なんでお前が1位なんだよ」
怒ると話し方が変わるらしい。こっちが素なのだろうか。
「別に。ルールに則ってゲームをしただけだが。違反したのなら1位になるはずないだろ」
「ふっっざけんな。お前全然車走ってないだろ」
「それが何か」
すっとぼけてみる。
「おかしいだろ」
「それを俺に言われても。俺が1位それは変わらない。早く次のゲームに行こうぜ」
チッ。
盛大に舌打ちをして、掴んでいた俺の服を離した。
第2ゲーム
俺とアキは向かい合って椅子に座っていた。
間にはディーラーが立っていた。
「次は運ゲー。ハイ&ローやな」
調子が戻ってきたのか、強がっているだけなのか口調が戻っている。
「ハイ&ロー?」
「知らへんのか。言うてもこれオリジナルルールなんやけどな。ここに裏返しのトランプがあるやろ。これが例えば6より上か下かどっちか決めるんや。今回は”上”と宣言したとする。このカードをめくってみるやろ。今回は”K”だったので成功やな」
「へぇ〜そんなゲームなのか」
どうしたものかね。何も小細工できなそうだ。
「そんなら始めてえぇか」
「ちょっと待ってくれ。これは上か下は口頭で言えばいいのか?」
「あっそやった。ここでは手元にボタン用意してるからどっちか押してくれたらえぇよ。右にあるのが上。左にあるのが下ボタンや」
「わかった。ありがとう」
「ほな、はじめよか」
ディーラーが1枚のカードをテーブルに置く。
「これは6より下か上か」
俺は迷いながら”上”のボタンを押した。
「2人ともボタンを押したので、捲らせていただきます」
緊張が辺りを包む。
「”7”です」
俺はホッと胸を撫で下ろした。この戦いどこまで続くのか。
「両者”上”を選択しましたので、続けさせていただきます。この後は出た手札の数より上か下かを選択していただきます」
そういうルールなのか。
その後2ターン目、3ターン目と続き、続いて4ターン目。
”5”より上か下か。
「創造神はん”上”選択したやろ」
確かに俺は”上”を選択してた。なんでわかるんだと思ったが、ブラフか。
どう考えても5より上の数の方が多い。まだまだトランプの数は多いのだから、どう考えても上の方が出る確率が高い。
ディーラーがトランプを捲る。
「”K”です。両者とも”上”を選択したので続けます」
「お前も上じゃねーか」
「僕、下を押すなんて一言も言ってへんよ」
その後5ターン、6ターンと続いた。
いつまで続くんだ。このゲーム。
慣れていないゲームということもあって、案外疲れている。
「ほなそろそろ勝負しましょか」
アキが声の低めのトーンでつぶやいた。
7ターン目
”10”より上か下か。
俺は上を選択していた。
「ほぉ〜案外勝負師なんやねぇ」
アキは俺がどちらを選択したのか見透かしているようだった。
「はいはい。あなたほどではないですよ」
俺は適当に返事を返す。
「”10”でした。同じ数字でしたので次のカードが上か下かで決めさせて頂きます」
ディーラーが続けてトランプを捲った。
「”7”ですね。勝者”アキ”」
アキは対して驚きもせずに、こちらをみた。
「ほんなら次のゲーム行きましょか」
第3ゲーム
暗い森の中にいるようだ。
なんだこのゲームは見たことないぞ。
「このゲームはサバイバルゲームや。やーっと楽しいゲームやってきたわぁ」
嬉しそうな声を出す。
「この森のフィールドの中で、相手を探し出しこのナイフで相手を刺した方が勝ちや。至ってシンプルなゲームやろ」
アキは持っているナイフを舌でゆっくりと舐めた。
「そのナイフ本物か?」
「えぇ本物ですよ。あなたの分お渡ししますね」
そう言ってアキからナイフを渡される。
俺は材質を確認する。
「すまん。念の為君のも確認していいか」
俺はアキからナイフを貸してもらう。
「ん。同じだな」
重さや切れ味など確認するとアキへとナイフを返却した。
「ここから始まり、1分間は好きな場所へ隠れたり移動する時間や。この腕時計に敵の位置が表示されるようになってるんで適宜確認してなー」
アキは少し考え込む。
「他に説明しなきゃいけないことなんかあったやろか」
「すまんこのこの顔に見覚えあるか」
俺は消えた豊穣神と芸術神の似顔絵を見せた。
「ん〜?それは誰や〜知らんなぁ」
「そうか知らないか。最近ここに来たはずなんだけどな」
「あぁちょっと待って、もう少しで思い出せる気がするんやけど」
うーんうーんと考え込んだ。しばらくするとポンと手を打った。
「あぁいたわなぁ〜めっさゲーム弱かったからすっかり忘れとったわぁ〜堪忍な」
ヘラヘラと続けた。
「そのこら知り合いなん」
「あぁ知り合いだ」
「そっかそっかぁ」
表情が見えないのに、とても愉快そうな顔をしているのがわかる。
不快だ。
「あぁーゲーム全体の話しとらんかったなー」
アキは話を変えた。
「このゲームな勝者は敗者を駒にできるんやで」
そう言って彼は自信が来ている羽織の裏地を見せてくれた。
そこには駒にされた者たちが縫い付けられていた。
「ふふふえぇやろ〜」
1つ手に取ったそれは豊穣神のようだ。
「悪趣味だな」
「なんや趣味合わんなぁ」
「早く終わらせてやるよ」
「そんなら説明は終わりにして始めよか」
「あぁ」
正位置についた俺とアキの間でカウントが始まる。
1分か。その間に準備できることは全部準備するか。
相手がどのように攻めてくるかわからないが、一瞬で終わらせてやる。
カウントが残り5秒になった。
緊張で震える手と足を、大丈夫だと言い聞かせる。
”1”そのカウントが聞こえた瞬間。
俺は敵の元目掛けて走って行こうとした。
しかし俺の足に何かが引っかかりその1歩すら進めなかった。
俺は足元を見る。
そこにはゾンビのような見た目をした者達がいた。
俺の足を必死に掴んでいた。
「くそっ」
こいつらをどうにかしないとあいつの元に行けない。気を取られたその一瞬。
恐らく1秒にも満たないその一瞬。
俺の世界がぐるぐると回り始めた。
はっ。
何が……起こっているんだ。
「勝者:アキ」
どこかからファンファーレが鳴り響いた。
「負け……たのか。俺は」
「せっかくいい勝負できると思ったのに残念やわぁ」
アキの顔が俺の正面にあった。
「よくお話しできるねぇ〜首しかないのになぁ〜」
首?
「あー事情把握できてない感じかぁ〜そんならあっちみてみぃ」
そう言って方向転換させられた。
無様にも俺の身体らしきものが倒れていた。
「……」
そこで首を斬られたということを脳が認識したのか。俺はそれ以降の記憶がない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます