第2話 〜第1世界〜

さてそれじゃあ本題の世界創造始めるかー。

俺は眼下を見下ろすと何から取り組むべきか考え始める。

やはり最初に海、山、大地とか大きいものから描き始める方がいいよな。

うーん海か大地かどっちが先の方が楽なんだ。

取り敢えず基準となる部分を決めたいが、いかんせんそんなことを決めるのが初めてなのでどうしたものか困る。

最初は大地を作るか。そして海、後は空もあったほうが気分が上がりそうだな。

試しに大地となる地面部分を一旦全部染めることにした。

1つ補足しておくと、この世界……もとい惑星は球体である。

そして中心となる部分がどこなのか、外周がどこなのかも理解できている。

俺はペンを使って中心から適当な位置にまた球体を描くとそこを全部海と定義づけすることにした。

俺は海の上に立つと大地にする部分をいくつか線で囲んでいく。

線が引き終わると、持っていたペンを線で囲んだ部分に突き立てて、色を染めることにした。

「茶色に染まれ」

ペンが触れている部分から一気に地面と定義した部分が茶色に染まった。

「おおっ……。すげぇ」

ペンのちゃんとした使い方がわからないが、なんとなくではあるがこのペンの使い方を理解する。

これ違う色にしようと思ったら一気に染まるってことだよな。試しに他の色にしてみる。

「白に染まれ」「黒に染まれ」

満足したので地面は元の色に戻した。

さて次は山を描くことにする。先程の感じだと、小さくていいから適当に目の前に山を描いて大きくして配置すれば早そうだ。

最初に世界を創造しろと言われたときは原寸大に描かなければいけないと思っていたが、思っていたよりはなんとかなりそうだ。

俺は先程大地にした部分にいくつか山を配置する。山といっても木とか土をそれぞれ描くのはさすがに無理なので遠くから見たフワッとした状態だ。

さて次は空だ。

しかしどこからが空になるんだ?空の定義とは?俺は神だから自由に移動できるが……。まぁ考えてもどうにもならない。試しにやってみるか。

「空よ青く染まれ」

ブワッと空だと思った部分が青く染まった。

なるほどわざわざ突き立てなくても染めようと思えばどうにかなるんだな。

ちなみに空は青く染めたが、本当は光の反射によるものだ。

俺は描くだけで時は操れない。時間については誰かが設定するのだろうか。

まぁ細かいことを考えても無意味だな。

空を描いたので、なんとなく雲も描いてみることにした。

雲といえば、やはり雲の上に寝転んだり乗ったりするの憧れだよな。

俺は自分より大きめの雲を描くとそこに寝転んだ。

まぁ想像通りだが、横にはなれない。浮いているので落ちることもないが、どことなく服が濡れた気がする。

雲の概念を雲形のベッドとにでもすれば寝れそうではあるが。

さて次は何を描くか。

大きなものは描いたつもりだがあとなんかあるか?

ちなみにだが、俺は地球という惑星について知識を全能神に教えてもらった。

できればこの世界は地球というものを参考にして欲しいと、資料を渡されていた。

でも果たしてここには人間が住むのか?

そもそも俺はどこまで描くんだ?動物や生物は動かなそうだったが、植物とか野菜とか食べるものは描けるのか。

あれ?待てよそもそも地球を参考にしろとは言われたが、長い歴史があるわけで、その時々によって恐竜が住んでいる時代もあれば、氷河時代なんてのもあるな。それに人間が住むなら建物とか作る必要があるわけで、建物とかは時代や場所によっても違いがある。いろんな時代の建物が組み合わさっていたら混乱しないか。その辺について何も聞いてなかったが、どうするんだ。

気になってくると絵を描く手も迷いが生じる。これは確認する必要があるな。

「おーいここは何が住む予定なんだ」

俺は他の2神に向かって問いかけた。

しーん。

なんの応答もない。

しばらく待ってもう1度問いかける。

「おーい全能神、命与神どっちでもいいから返事してくれ」

やはり反応はない。


「あなたたちの心に直接語りかけています。この世界は何が住むのでしょうか」

俺は全能神の顔を思い浮かべて話しかけてみた。

シュン。

「なんです?今忙しいので手短にお願いします」

ナイトキャップを被り、白いネグリジェを着て、目を擦りながら出てきた全能神。

「あの〜もしかしなくても寝てました」

はぁ〜ぁ。全能神は大きなあくびをする。

「寝てないですよ〜」

あくびまでして、どうしてそんなにわかりやすい嘘をつくのか。

俺は半ば呆れながら、全能神に確認したかったことを聞く。

「この世界は何が住むんですか」

まだ眠りから覚めていない神は「えーとなんだっけ」と小声でこぼした。

「あーこんな感じだよこんな感じ」

と言って俺の右側を指した。

そこにはでろーんとした影のようなものがあった。

なんだこれ。

「これが住むんですか?」

「ん〜この世界は地球を参考にしているし、人間の暮らす世界にするつもりだよ」

「人間ですね」

きっと寝起きで力が出ないだけなのだろう。

「ん?ちょっと待ってくれ。”この世界は”って言いました」

「あれぇ言ってなかったけ?君には7つの世界を創造して欲しいって」

「聞いてませんよ」

あれそうだっけ?ごめんごめんと軽く流された。

「じゃあ君の質問には答えたし、もう戻ってもいいかな」

また大きなあくびをした。

「しばらく起きないから」

「ちょっとまて」

俺の制止も虚しく。全能神は姿を消した。

マジで協力的じゃないよな。そんなに頑張って世界創造しなくてもいいんじゃないかと思ってしまう。

しかもあれは完全に眠りに入るつもりだったな。俺は諦めて絵を描き始めることにした。

目の前に、俺が最初に描いた猫が少し可愛くなり高さ20cm幅20cm奥行き20cm程の機械になり宙に浮かんでいることに気づいた。

「えっ?なんだこれ?」

眺めていると急に音がした。

キュイーン。

モード自動。バイタル安定。

猫から音がすると、目が開いた。

「こんにちは。何か御用でしょうか」

「えーっと俺が描いた猫だよな?」

「はい。あなたが生み出してくださった猫の形をした機械です。全能神の機能の一部ですので、わからないことがあれば私にお聞きください」

なるほど。便利だな。全能神がいなくてもこいつに聞けばいいってことだな。

「早速で悪いが、ここと同じような世界があと6つもあるのか」

「ここと同じような惑星は全部で6つあります。しかしそれ以外にもう1つ世界が存在するので、あなたが描かなければいけない世界は全部で8つです」

「待て待て待て。惑星がここを入れて7つで間違いないか」

「はい。惑星自体は7つで間違いありません」

「それ以外の世界ってなんだ」

「あなたは7つの惑星を創造し、8つ目は神のための世界を創造しなければなりません。こちらは惑星などではなく、7つの惑星とは次元が異なります。神の世界はそれぞれの自分のエリアであれば創造神以外の神でも物を生み出すことは可能です。しかしそれ以外の場所に描くことはできませんので最終的に創造神が完成させるということになります。こちらはあなたも含めた神たちの世界。7つの世界が完成次第こちらのデザインもお願いします」

「待てぇーい。神なんだから自分のスペースだけあればいいだろ。他に何が必要なんだよ。今いない全能神と命与神の2神はもしかして自分のエリア創ってるから忙しいっていうわけじゃないよな」

「まず1つ目の質問からですが、神も交流する場所などが必要になります。具体的にどのような場所が必要かについては他の神々に確認してみてください。次に2つ目の質問についてですが、他の2神は確かに神の世界に行ってますが、自分のエリアの装飾をしているわけではございません。それぞれの役割を果たしているだけです」

「役割?全能神と命与神……彼らの役割ってなんなんだ」

「それぞれの役割については……」

急に猫ロボは動きを止めた。

「おい、大丈夫か」

まだ起動してからそんなに時経ってないぞ。こんなに早く壊れるのであれば不良品だろ。

「申し訳ございません。権限の都合上私からお伝えする事ができません。それぞれの役割については、直接ご確認ください」

「あーはいはい。わかったわかった。直接聞けばいいんだろ」

「ありがとうございます」

それにしても。神の世界を含めて8つも世界があるのか。……うん。

取り敢えず聞かなかったことにしよう。

「えーっとそれであと、俺は動物とかは描いても意味ないんだよな?」

「動物も描くことは可能ですが、生物に関しては他の神が対応します。あなたが描いても生物として動くかの判断は他の神に委ねられます。不要だと判断されれば排除されるでしょう」

「そうか……」

生物系は描かなくてもいいのか。確認しておいてよかった。

「後もう1つなんだが、地球には長い文明があるが、どの時間を参考にして描くべきなんだ?例えば時期が新しいほど、進化してるだろ?その場合そこで暮らす人間はその文明を発展したものだと認識するのか?歴史を振り返ることができるのか?」

「いえ、元々の世界がこういう世界だったと認識してその後成長していくことになるでしょう。まぁ地球でも解明されない文明などありますからね。細かいことは気にしないことです」

都合の悪いことは神の力でどうにかするってことか。

「まぁそれじゃあ好きな建物や時代を混ぜ合わせたりして創造していいってことだな」

「はい。問題ございません」


疑問だったことを確認したので再び描き始めることにする。

「さてそれじゃ建物とか描いていくことにするかー」

適当に描いた大陸に建物を描いていくことにする。

よくみる中央に大きな建物があって、周囲に建物を描くか。それとも川を描いてその周りに人が住むところを描くか。

歴史的にみると大陸が広い場合は川の周辺に文明ができたとかできてないとか。

うーん悩んでいても始まらないし、いくつか大陸作ったんだからそれぞれのパターンを試していくか。

とりあえずこの大陸については自然豊かな感じにしたいから、建物は低めにして、煉瓦造りの家でいいかな。

俺はいくつか人が住めそうな家を描く。

「それにしても同じような家ばっか描くの辛いな」

塀とか、洗濯物干せる場所とかも描いていくか。

果たして俺はどこまで描くべきなのか。ぶっちゃけ細かいところまで描いていたら、時間がかかりすぎるし、俺の体力も集中力すらもたないな。

まだ絵で描けるだけマシか?

内装については俺の専門外だし、実際は建物作るのにいろんな材料を使っているが、俺はあくまでも外枠というか……建物という概念だけを描いているからな。

その後も黙々と建物やら自然を描いていく。

よしここは終わりだ、次の大陸描くぞ。

2つ目の大陸はただの直方体の高層ビルをたくさん描いて、道も土からアスファルトに変更した。移動手段は車か?電車か?まぁ電車を各地まで行けるように中央から外側に向かって描けばいいか。俺は乗り物の資料を見ながらなんとなく電車を描いた。

その他砂漠っぽい地域では建物は地下に作ったり、大陸ごとになんとなくのテーマを決めて建物やら景観を描いていった。

どのくらいの時間が経ったのかはわからないが気づくと第1世界は完成していた。

「よしっ完成だ」

全体を見渡して完成した世界に満足する。相当大変だったが、こうやって見返してみると頑張った甲斐があるものだ。

「おーい1つ目の世界完成したぞ」

俺はその辺に適当に叫ぶ。

時間差で現れた神。知らない神が2神増えていた。

「初めまして〜芸術の神です☆キラッ」

すげぇテンションの高い神だな。見た目も派手で髪色がピンク。アクセサリーもたくさんつけている。服装も制服をアレンジしたかのような短めのプリーツスカートにセーラー服だ。

「冥界神」

ぺこりと静かに頭を下げた。こちらの神は最低限しか喋らないのか。

長い前髪で右目が隠れている。黒っぽいマントで全体を覆っているが、足元は短いパンツに長さの違う黒いソックスを履いている。

それにしてもテンション差エグいな。

「俺は創造神よろしく」

「それで第1世界ができたって聞きましたけど」

全能神がつぶやいた。

「あぁできたぞ」

全員の視線が俺が描き上げた世界に注がれる。

「……」

そうだろそうだろ。完成した世界を見て感動しているだろう。

「まぁこれだけ広いと全体を眺めるのに時間かかるよな。ぐるっと回って全体を確認してくれ」

こうして俺らは全員でぐるっと見て回った。

「独創的ですね」

「いやっ全然ないわ」

「下手」

「絵心ないんですね」

神々がそれぞれ感想をもらしたが、予想外の反応に困惑する。

「いやっ、さすがにひどくないっすか。だいぶ苦労して描き上げたんですが」

「何をどうしたらこうなるのよ。ちょっと頭の中で自分の描いた世界を想像してみなさいよ」

芸術神の言う通りに、世界をイメージしてみる。

「あっ。オッケー」

芸術神が指をパチンと鳴らすと、先程までの世界が一変して、頭の中にイメージしていた世界へと変わった。

「おおっ凄い」

「こう言うイメージだったんですね」

「いい感じ」

「……もうさ芸術神が世界を創ればいいんじゃない?」

時間を掛けて描いてきた世界を馬鹿にされ、あまつさえ一瞬で俺の世界は創り変えられ、さすがにイラッとしながら俺は芸術神に向かってそう言った。

しかしそこにいたはずの芸術神の姿がない。

「あれ?芸術神は?」

「そこにいますよ」

俺の腰元あたりに視線が注がれた。

「ちっちゃ!!どうした?何があったんだ」

「……オメェの絵があまりに酷すぎて力使いすぎたんだよ」

挨拶した時のテンションはどこへやら、小さくなったら口も悪くなった。あまりにも別人すぎて本当に同一人物か?芸術神が姿を隠し、別の神に変わったんじゃないかと辺りを確認してしまった。

「あーもうさいあく〜」

小さくなった芸術神がイライラを全面に表す。

「芸術神ちゃん可愛い〜」

気づけば命与神が芸術神を抱きしめていた。


「この世界はひとまず完成でいいでしょうか」

全能神が言った。

俺は不満だらけだが、俺の描いた世界にもう一度戻されても、馬鹿にされるだけだしな。悶々とするが何も言えずにいる。

「創造神お前絵苦手だろ?」

芸術神に言われる。

「苦手も何も。世界を作れるのは俺しかないと言われ、ほとんど説明もなしに作ったんだぞ」

「あーそれは悪かったな……」

小さくなった芸術神は少し言いすぎたとばかりに反省の色を見せる。

「いやでもそれにしても……」

芸術神は何やらぶつぶつと言っている。

「それでは第2の惑星へ移動しましょう」

全能神が空気など読まずに言った。

「付いて行く」

芸術神が言うと。

「私も」

冥界神も言った。

「まぁまだお二方はやることもないと思いますし、行ってもいいんじゃないでしょうか。まぁ私は忙しいのでいけませんが」

全能神が言った。

「私は……」

命与神は小さい芸術神を見つめながらだいぶ悩んでいる。

「だめだ。今回はパスで。ごめんね芸術神」

名残惜しそうに言った。

「で次の世界はどこだ」

「次の世界に飛ばしてあげますね。1つだけ注意事項ですが、自分から惑星の外に出ようとは思わないでくださいね。惑星の外枠の部分が相当高温になっているので、神といえど一瞬で消えますので」

「はっ。どうしてそんな世界作ったんだよ」

と文句を言っている間に違う世界に飛ばされたようで景色が一変した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る