第24話 〜世界創造〜

「あー馬鹿らし。じゃあな模倣神」

そういうと発明神は手に持っていた光の球を握りつぶした。

ゴハッ。模倣神は一瞬にして消失した。

みんな何が起こったのかを把握できていなかった。

「おまえ……全能神か」

「えぇ全能神です」

発明神の見た目から全能神の見た目へ変貌した。

「さてこちらはどなたの魂でしょう」

悪趣味にも全能神はもう1つ誰かの魂を持っていた。

しかし誰も反応しない。

「強情ですね」

全能神は魂を握った。

ぐっ。こもった呻き声が聞こえ振り返る。

「愛の神っ」

愛の神は全能神を睨んでいる。

「ははは。そんな顔していいんですか」

さらに強く握る。

はぁはぁはぁ。愛の神は肩で息をする。

「辞めてよ」

芸術神が叫ぶ。

「あんた何がしたいの」

「何がしたい?別にぃー苦しむ顔が見たい

悪魔の笑みだ。

「ふっざけんな」

芸術神が殴りに行こうとして、近くにいた軍神が止める。

「やめて。止めないで。あそこに悪魔がいるのよ」

芸術神は泣きじゃくりながら訴える。

軍神は首を振る。

「君じゃ魂を奪われて終わるだけだ」

誰もが動けない。

「あー泣き顔もそそるね」

芸術神は泣きながら全能神を睨んだ。

「さて誰から挑んできます?」

挑発されるが、全能神の強さが全くわからないし、そもそも俺は戦いごとは向いていない。

「おや、愛の神が苦しんでいるというのに誰もかかってきませんか。やはり自分自身が1番可愛いですかね。それじゃあ僕から行かせていただきますよ」

そう言って全能神は全体をぐるっと見渡しヒィと怯えた豊穣神の方を見てニヤリとした。

持っていた愛の神の魂をどこかにしまうと、豊穣神に向かって動く。

やばいっと思ったその瞬間。

全能神の身体から大量の血飛沫が飛び散り胴から真っ二つに分かれた。

「はぁ?」

全能神も状況を把握できていないようだ。口から大量に血を吐く。

「誰……だよ。邪魔をするやつは」

なんとか息をしながら、下半身を探し動こうとする。

すごい生命力だ。いやしかし、長年生きてきたこいつが果たしてこれで終わるだろうか。

「残念です」

全能神を斬ったそいつは剣をしまうと、侮蔑的な視線を全能神へと送った。

「ちえの……かみ」

全能神は不思議そうな顔をした。

知恵の神は右手を全能神の方へ向ける。

カチャン。カチャン。と首、手首、足首に拘束具を着けた。

「ちょっと待ってどういうこと」

芸術神が言葉を漏らしたがこの場にいる誰も答えられはしなかった。

「すいません。今は説明している暇がありません」

知恵の神はどこかへ消えると辺りに静寂が訪れた。

「えっ全能神は裁定者に裁かれていたんじゃないの」

芸術神が俺を見た。

「確かにで断罪されていたのは全能神だった」

いやしかし、全能神の見た目だったってだけで、発明神の魂だったってことか。

みんな同じことを考えているのだろう。発明神と呟く声が聞こえた。

「模倣神も……」

あまりの衝撃で皆呆然としている。

豊穣神が愛の神を支えていた。

「少し横になりましょう」

軍神が愛の神を知恵の神が横になっていたベッドへ運ぶ。

それにしても。あまりにも立て続けに事件が起こりすぎてさすがに限界だ。

「これで本当に終わったのか」



しばらくすると知恵の神が戻ってきた。

「お待たせしてしまいすいません。僕から全能神、いえ混沌カオスの話をさせてください」

そうして俺らは混沌のことについて聞かされた。

「神が悪魔と分断される前、彼は誕生しました。神の力を持っていなかった彼は多くの神から馬鹿にされました。しかし彼の親はそんなことを気にさせないくらい沢山の愛情を注ぎました。

そのおかげもあり彼は勉学も体術もほとんどの神を圧倒する力を得ました。

しかしそんな矢先に神と悪魔の大戦争が悪化したのです。

皮肉にも混沌の両親はこの戦いでそれぞれの血縁者によって引き裂かれました。

母は悪魔軍。父は神軍。混沌はどちらの味方もできません。

彼はどちらにもつけないまま。戦いは多くの被害をもたらし終結しました。

裁定者の元、両者は協定を結びお互いに干渉しないと誓いました。

両方の血をひく混沌。両者の世界を行き来することができました。

そして自分を愛してくれた両親が戦いの最中命を落としたことを知りました。

その後彼はどちらの世界でも迫害されました。

行き場も大切な両親も失った彼は次第に壊れていきました。

そして彼は混沌の能力を制御できずに神を全滅。悪魔は半分程殺しました。

裁定者も彼を捕らえようとしましたが、暴走した彼の力は膨大で暴走が止むのを待つことにしたのです。

しかし、突如混沌は姿を消します。

見張っていた裁定者の担当者は混沌の呪いに殺されました。

時は流れ、神の世界に新たに神が誕生しました。その神は本当の全能神でした。しかし模倣神が誕生する前すでに本当の全能神は殺され、混沌が全能神になりすましていました。

混沌は神の世界で何をしたかったのか、惑星を作り始め他の神々と生活を始めました。

1つお伝えしておきますが、あなた方が創っていた世界は、この神の世界の内側です。本当に生物が住む惑星は神や悪魔が行くことはおろか見つけることさえできません。

さて話は脱線しましたが、混沌については以上です」

「ちょっと待ってよ。じゃあ俺らが今までしてきたことはなんだったんだ」

知恵の神は少し考える。

「これは全能神に聞いたわけではないので、僕の想像でしかありませんが、恐らく混沌は仲間が欲しかったのではないでしょうか。ずっと迫害されていたので寂しい思いもしたと思いますし」

「そうだとしたら我らを襲う必要はないんじゃないか」

軍神が疑問を呈した。

「……」

「僕の存在でしょうか」

水神が恐る恐る発言した。

「僕……というか僕の目が、全能神が他の神と違う存在だということは一眼見た時から知っていました」

「そう言えば私達がまだ第5世界に閉じ込められていた時、模倣神はずっと”全能神”には気をつけろと言っていましたね」

「そうね〜よく言っていたわ」

破壊神と豊穣神が思い出したかのように話す。

「そもそも僕らは模倣神に従って動いていて、第5世界から飛び出してきた時も手は出すなと言われてすぐに捕まりました」

「いやあの時本当に腹立ったわよ。気づいたら私たち悪者だった……んだから」

豊穣神は急に静かになった。

「もう模倣神も発明神もいないのよね」

また暗い雰囲気に包まれる。

「彼らのぶんも生きましょう。転生するのであれば、また逢える可能性があります。それまでこの世界神の世界を住みやすい世界にしましょう」

みんな静かに頷いた。

「それで知恵の神お前はなんなんだ」

全能神を捕らえた彼。敵ではないだろうが、味方ってわけでもなさそうだ。

「僕は、裁定者から全能神の捜索並びに捕縛を命じられた。いわば神の警察といったところでしょうか」

「そうか。知恵の神は仮の姿だったんだな」

「そうですね。皆様と過ごした時間は楽しかったですが、僕は本来ここにいていい存在では無いので、これで皆様とお別れですね。僕に目をつけられないように気をつけてくださいね」

ニコッと微笑む。

「あ、忘れてました。これあげます」

それは偽物の全能神発明神を断罪した際に拾ったものであった。

「これは?」

「発明神さんからの最後のプレゼントです」

「待って。あんたは断罪されたのが発明神だって知ってたのか」

「……」

「わかってて殺されるのを見てたのか」

「……」

「おい何か言えよ。一緒に過ごした奴が目の前で、殺されたんだぞ」

表情すら変えない。

「くそっ」

軍神が間に割って入った。

「それでそれはなんなんだ」

「僕が消えてから、ここにあるボタンを押してください」

そう言い残すと知恵の神は姿を消した。


「えーっとみんな準備はいいか」

軍神が確認する。愛の神も目を覚まし発明神が残してくれたそれを全員で確認することにした。

軍神がボタンを押す。

すると辺り一面に映像が映った。

「何これ」

そこには優雅に飲み物を飲んでいる全能神混沌の姿が写っていた。

「待ってこれいつの映像」

「僕と芸術神が少し写っているから、創造神達が第6世界へ行っている時だと思う」

水神が言った。

「これから何か起こるってこと?」

「混沌は少し微笑んでいるようにも見えるけど」

映像は特に動きがないまま進んだ。

「何?」

一瞬だが映像が揺れた。

みんな何かが起こるぞと察したのかピリッとした空気が辺りをはしった。

突如、発明神が画面の左端に映ると次の瞬間混沌に襲いかかっていた。

一同息を飲んだ。

「待ってこれは入れ替わる前なの後なの?」

「この映像は私が、全能神いえ混沌を殺そうとした時の映像だ。確実に仕留めたはずだった」

発明神の声が聞こえた。

「しかし襲った瞬間、儂は混沌と魂を入れ替えられたのか、致命傷を負ったのは私だった。私は神殺しとして裁かれる。無念だ。この映像が再生されているということは私はすでに断罪された後だろう。知恵の神には私が混沌を襲うことそしてその後に起こるであろう出来事の全てを話していた。実は私は知恵の神の存在も全能神の存在もわかっていた。知恵の神には何度も全能神を殺すのは無理だと言われた。でも誰かが裁かなければいけなかったんだ。被害が大きくなる前に」

そこで音声と映像が切れた。

「ちょっと待てよ。なんで発明神が混沌と知恵の神のこと知ってるんだ」

「彼が、本当の全能神の生まれ変わりだから」

水神が言った。

「えっ。でも発明神って」

「殺したはずの全能神がすぐに転生したら混沌はまたすぐに殺しにくるとわかっていたから、発明神だと嘘をつき、模倣神に発明神だと情報を書き換えてもらった。ってところかな」

「まぁそれなら筋は通りますけど」

「それじゃあなんで全能神の見た目で断罪受けたんだ。別に発明神のままでもよかっただろ」

「それはどうなんでしょう。全能神は怪しまれていたので、全能神を殺した方が混沌は動きやすくなるかもしれないと思ったのかもしれないですね」

「いやいやあいつそもそも仕事ほとんどしてなかっただろ。自分で仕込んだ事件をあたかも自分が解決したかのような振る舞いだったし。常に何か隠している感じがあったからな」

「まぁまぁそこらへんにしておきましょう。当事者がいないのに考えたところで意味ありません」

「これからどうなるの」

「神の世界を作り直しましょう。神が転生するのであればまた会えます。後から誕生する神の分まで私たちが住みやすい世界にして、快く迎えてあげましょう」

「そうだな」

「それで、一旦神の世界作り直すのに、やり直したいよな。第1世界〜第7世界も神の世界の中にあるって言ってたし本物ではないなら壊してもいいかもな」

「私の出番ですね」

破壊神がやる気満々だ。

「なんかよくわからないが、第1世界〜第7世界とこの第8世界の間には謎の層があるみたいだし一旦壊して全体を統一してからどうするか話し合おうぜ」

「それではみなさん取り掛かりましょう」


俺らはその後、神の世界を新たな一歩を踏み出すためにクリーンな状態に戻した。

「よしっこんなものか」

「みんな一旦休憩しましょう」

愛の神と豊穣神がご飯を振舞ってくれた。

「おいしぃー」

「疲れた体に染み渡りますね」

本来は食事を必要としない神。しかしみんなで過ごせる時間を大切にしようと定期的にご飯を食べることにした。

「この後は戦闘訓練だな」

軍神がご飯と口にしながら提案した。

「やりたい」

冥界神は力をつけたいみたいで、ノリノリだ。

「それじゃあ力の強いチームとサポートチームに分かれて特訓をしましょう」

愛の神が提案した。

「それもそうねー回復魔法使えるの愛の神と豊穣神だけだものね。私はサポートの方強化したいなぁ」

命与神が答える。

「命与神まだ新しい神誕生しなそう?」

芸術神が命与神に質問する。

「うーんまだ準備中って感じかなぁ」

「それより新しい神が誕生する前に世界作ろーぜ」

まだ世界には何もないのだ。

「僕は水で遊べるところが欲しいな」

水神は水の世界が無くなってしまったので、少し元気がない様子だ。

「それは急いでつくろーぜ。お前がぶっ倒れちまう」

「私は以前のようなテーマパークなど皆さんが楽しめる場所があるのがいいですね」

「そういえば第6世界電子世界で破壊神が倒したあいつはなんだったんだ?」

「おやっ、創造神はお気づきではないのですか?」

「えっ?もしかして神の誰かだったのか?」

「あれは全能神。いえ混沌でした」

「えっでもあいつその時発明神に襲われてるから無理じゃねーか。そもそも芸術神と豊穣神が行ったとき、混沌は重力神と第1世界を巡ってただろ」

「うーん言い方が悪かったですね。あれは混沌の一部が生み出した無意識の自分自信と言えば想像がつきますでしょうか」

「無意識の自分自身」

「混沌は長い間ぼっちだったのでしょう。話し相手もいなかった。妖精達もおそらくそうでしょう」

「混沌も可哀想だよな。だからと言ってやったことが許されるわけではないが、大戦争が起こらなければそのまま真っ直ぐ愛されて育っただろうし、神も悪魔も殺さずにすんだ」

「えぇ力を制御できなかったとはいえ、意識はあったのでしょうね」

「俺らも力が暴走した時のために、何か止められるものを、止められる力をつける必要があるかもな」

「それなら暴走した時のために、この世界全体に魔法陣を書いておきましょう」

愛の神が軽ーく言った。

「そうだな有事の時のために、全員で最初に描きに行くか」

武力派の軍神ものった。

こうなっては止められない。新たな世界創造が超巨大な魔法陣を描く事から始まるなんて。

いや、それもまたみんなで思い出ができておもしろいかもな。

こうして俺らの新しい日常が始まりを告げた。






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世界創造〜創造神は絵心がありません〜 白雪凛(一般用)/風凛蘭(BL用) @shirayukirin

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