根暗でぼっちの私が何故かクラスのキラキラ男子達に構われています。
無月弟(無月蒼)
プロローグ 絵本と男の子
昔から、気持ちを表に出すのが苦手だった。
どうやら私は楽しいことがあっても上手く笑えていないみたいで、転んだって泣くことができなかった。
本当はすっごく楽しいのに、転んだら痛いのに、それをわかってもらえなくて。皆からはちっとも笑わない変な子って言われていたの。
だけどおばあちゃんはそんな私のことをとても可愛がってくれて、よく絵本を読んでもらっていたっけ。
「
笑わない私をたくさん可愛がってくれる、優しいおばあちゃん。
そんなおばあちゃんから貰った絵本は、私の宝物。幼稚園でも、よく一人で読んでいたの。
読んでいたのは『ハチミツいろの日々』って言う、ハチミツという名前の大きな犬ちゃんと女の子が、仲良く暮らしていくほのぼのとした絵本。
何度も読んだお話だけど、何度読み返しても面白くて、その日も夢中になって読んでいたの。
面白いな~、可愛いな~って。すっかり絵本の世界に入っていたんだけど。
読んでいると不意に、誰かの声が飛んできた。
「なあ、その本そんなに面白いのか?」
それは明らかに私に向けられた、男の子の声。
男の子から声をかけられることなんて、ほとんどないのに。
ビックリして顔を上げると、そこには最近新しく幼稚園に入ってきた男の子の顔があって、興味津々って感じで私を見ていた。
「えっと……あ、あの……な、なに?」
「だーかーらー、その本面白いのかって聞いてるんだよ」
「お、おもしろい……よ」
「そっか。だよな、お前スゲー楽しそうに読んでたもん」
笑顔でそう言った男の子にビックリした。
楽しそうって、私が?
ママからも幼稚園の先生からも友達からも、ちっとも笑わないって言われてるのに。
楽しそうだなんて、初めて言われた。
「なあ、俺にも見せてくれよ」
「う、うん。いいよ」
男の子はとなりに座って、今度は二人で絵本のページをめくっていく。
何度も読んだ絵本だったのに、誰かと一緒に読むと不思議とドキドキするよ。
そうして読み終えたあと、男の子は私に言ってきた。
「ありがとう、スゲー面白かった。なあ、俺と友達にならないか?」
「友達って、私と?」
「変なやつだな、他に誰がいるんだよ。まあいいや、俺の名前は──」
自己紹介をしてくる男の子。この時私は、上手く笑えていたのかなあ?
鏡なんてなかったから、笑っていたのか、それとも無表情だったのかは自分じゃわからない。
だけどとても嬉しかったことだけは、何年経ってもずっと忘れなかった。
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