いわゆる忘年会的な

「では今回の選手権について説明しまーす」

 ノリノリのシトリー。


「ちょっと待て、それは……」

「えー、前回は体術だけで優勝者を決定しましたが、それだと体力バカだけが有利だというクレームが殺到しまして」

「誰が体力バカだ」とアミー。

「今回は体力ではなく、知力。カード大会を開催して優勝者を決定致します」

「よーし、負けないぞぉ」とジャスティナが張り切っている。

 ナタリーやカリーナ、ズィーヴァもやる気みたいだ。ううむ。


「あははは。デレクのところのメイドはみんな愉快だねえ」とセーラが笑っている。

「ちょっとセーラ。お風呂選手権って知ってる?」

「リズに聞いたから知ってるわよ。優勝者をデレクと一緒のお風呂にご招待、でしょ。もちろんあたしも一緒に入るから何の問題もないわ」

「……はあ」


 たちまちテーブルで始まるカード大会。


 今日はゾーイは休みだったな。チジーもミドマスに出かけている。このタイミングを狙って、実は念入りに計画されていたに違いない。運営が極めてスムーズ。


 半ば呆然と見ていると、エメル、シトリー、ナタリー、ズィーヴァの4人、ノイシャ、アミー、ジャスティナ、カリーナの4人に分かれて、予選会を行うらしい。予選会で半数が敗退し、敗退したものはディナーの準備に回るらしい。


 何事かと、チャウラ、ガネッサも見学に来た。

「選手権? 何のです?」

「秘密ですけど、年末のご褒美がデレク様からあるんです」とノイシャ。

「へー」


 異様に熱を帯びた戦いが繰り広げられる。

 リズとセーラも、背後から手札を見てニヤニヤしている。


「あ、ダウト! 今のダメ。後出しじゃない?」とナタリーが珍しくエキサイトしている。

「えー。ギリギリセーフでしょ。ね、リズさん」とエメルがリズに助けを求める。

「いや、今のはさすがのエメルでも余裕でアウト」

「ほーら」


 阿鼻叫喚の予選の結果、決勝戦はシトリー、ズィーヴァ、アミー、ジャスティナの組み合わせに決定。敗者の4名は意気消沈を絵に描いたようなどんよりした様子でキッチンに向かう。


「アミーは前回の優勝者なんだから今回は参加を見送るべきなんじゃない?」と今更なことを言うノイシャ。

「ふふふ。負け犬の遠吠えってヤツだな」

「くっそー」

 まあ、ノイシャとエメルは、ガパックの温泉で一緒に風呂に入ったからいいじゃん、とか密かに思う。あの時も、口では言わなかったが楽しかったな。


 さて、決勝戦である。


 ここでセーラが突然の提案。

「ねえ。あたしも混ぜてよ。その代わり、あたし以外の人が1位、2位だったら、準優勝の人までをご招待ってことでどう?」

 反対するものなど(俺以外には)いようはずがなく、原稿執筆の疲れから立ち直ったセーラも参戦。

「セーラ様が相手でも負けませんよ」とジャスティナ。


 俺はシトリーの手札が後ろから見える位置に座っていたのだが、セーラからダメ出し。

「デレクはすぐ顔に出るから、人の手札が見える所にいたらダメ」

「え? そうかなあ」

「いえいえ。絶対そうですって」とアミー。

「それと、ジャスティナに味方しちゃダメよ」とセーラにクギを刺されてしまう。

「えー。デレク様は助けてくれると思っていたのにぃ」


 そこにクロフォード姉妹も登場。

 リズが言う。

「あ、ちょうどいいわ。ねえ、ディアナ。誰もズルしないように気をつけててくれない?」

「ズル?」とディアナは怪訝な表情。

「念話で手札の情報を伝えたりする悪どい2人がいるかもしれないわ」

「そんなことはしないぞ」

「あ、思いつきましたけど、カジノでボロ儲けできませんかね、デレク様」とジャスティナ。いやいや、そんな危ない橋を渡る必要はないと思うが。


 さて、決勝戦は大富豪を3回やって、最終順位で決めるらしい。最初はみんな平民。

 なぜか強いカードがシトリーに集中して、第1回目はシトリーが1位。


「大貧民のアミーよ。シトリー様に貢ぐことを許してやろう。ふははは」

「く……。次こそ前回覇者の力を見せつけてやる」


 2回戦。今度はジャスティナが勝者。シトリーが2位。アミーは相変わらず最下位。

「よっしゃ。このまま次も必ず勝つ!」とジャスティナは意気軒昂。

「今日は調子が出ないわねえ」とセーラは3位。ズィーヴァが4位。

「あれー。アミーは負けグセがついたんじゃない?」と未だ表彰台圏内のシトリーがアミーを煽る。

「くっそー。……よし! 決勝で最下位になった人は、ディナーの間、ミニスカートで過ごすということにしよう!」とアミーが突然の提案。


「ちょっと待て。そういう罰ゲームみたいなのは禁止」

 みんな仲良く、和やかにね。


「すいません、ちょっと熱くなりました。……じゃあ、今日は本来は非番なので、個人的に勝手にミニスカートに着替えます」

「……それなら止めないけど」

 単にミニスカートになりたいだけではないのかと。


 さあ、運命の最終戦。

 最初のうち、調子良くカードを切っていたジャスティナだが、中盤からどうも怪しい。

「あれ? こんなはずでは」

 などと言っている間に着々と手札を減らすセーラ。


 結果発表。1位、セーラ。

「なんでセーラが持っていくかな」

「あはは。今年の最後を飾る逆転勝利ね」といい気分のようだ。


 2位、ズィーヴァ。

「え、あたしですか。うれしいです」

 顔を真赤にして、照れている。うん、可愛いよ。


 3位以下はジャスティナ、シトリーと続いて、最下位はアミー。

 シトリーが悔しがること。

「手札が良かったから勝てるはずだったのに。……まあ、アミーに勝ったからいいか」

「いや、あたしはほら、ミニスカートを履いて場の盛り上げ役に徹しようかと」

「ぜーったい、ウソ」

 シトリーとアミーは仲がいいなあ。



 その後、メイドたち総出で大晦日のディナーの用意にとりかかる。

 子どもたちもやって来てお手伝い。

「こんな豪華な年越しのディナー、生まれて初めてです」

「夏より前のことがもう昔のことみたい」


 子どもたちが両親を亡くしたり、辛い悲しい目にたくさん遭ってきたことを思うと、このくらいはしてやってもいいんじゃないかな、とも思う。甘いかな?


 やがてクラリスもやってきて、子どもたちとニコニコ話をしている。


 準備ができて、泉邸にいる全員が出席でパーティーの始まり。


「今年一年、ご苦労様! 来年もよろしくね」

「カンパーイ」

「乾杯!」


「さて、子供たちにお知らせがあります」

「え! 何ですか、デレク様」

「年明けから、この屋敷で番犬を飼うことになりました」

「え!」

「きゃ、うれしい!」

「どんな犬ですか?」

「みんなも知ってると思うけど、マリリンのところから譲ってもらうんだ。年齢は8歳くらいだそうだから若くはないけど、賢い犬だと思うよ」

「うわー、楽しみだなあ」


 その後は凄く盛り上がった、というか、むしろ結構な狂乱。

「デレク様ぁ、約束通りミニスカートですけど、どうでしょう?」とアミー。

「色っぽくていいと思うよ」

「パンツ脱いでもいいですか」

「絶対ダメ」

「うひ」


「じゃーん。あたしも履いてきましたー」とリズ。

「げ。なんでリズまで」

 ちょっと酔った感じのリズは、ミニスカートでいつにも増してセクシー。最近は寒いせいでなかなかお目にかかれなかった太もも様たちが強烈。衆目がなければ押し倒したい。


「あ、しまったなあ。あたしも履けばよかったかな」とセーラ。

「いやいや、セーラはそのままで」

「デレクは絶対、人目がなければリズを押し倒したいとか思ってるに違いないわ」

 心を読むなよ。

「まあいいわ。あとでお風呂タイムがあるし」


 その後、夜がふけるまで子どもたちとカードやゲームで遊んだり、楽しい年越しの夜を過ごす。


「さあ、子どもたちはそろそろ寝なさい」

「はーい」


 全員でパーティーの後片付けをする一方、やって参りましたお風呂タイム。

「ズィーヴァは初めてでしょ。さ、行くよ」とリズ。


 俺とセーラ、リズとズィーヴァで謎研修所へ。

 初めて謎研修所の設備を見るズィーヴァは終始驚きっぱなしである。

「これって、一体……」

「俺にもよく分からないことが多いんだけど、でも、ここの力を使うことができたから麻薬農園の人たちを助けることもできたんだよ」

「そうなんですか」


 脱衣所へ行くと、リズは恥じらいもなく、すっぽんと全裸に。

 一方、ズィーヴァは戸惑っている様子。

「あの、お目汚しではないでしょうか?」

「今更何を言ってるのよ。ささ」とセーラが促すと、ズィーヴァは思い切ったように服を脱ぐ。


「あ」


 思わず口に出てしまった。


 ズィーヴァの背中には、痛々しい鞭の跡が何筋も残っている。


「申し訳ありません。やっぱり……」


 するとセーラがズィーヴァを正面からそっと抱きながら言う。

「何言ってるのよ。傷はあなたのせいじゃないし、傷がついたことであなたがあなたでなくなったわけでもないわ。むしろ、傷があってもまっすぐ、正しく生きていることを誇りに思うべきよ」


 セーラ。なんていいこと言うんだ。


 俺もちょっとジーンとしてしまって、ズィーヴァを背後からそっと抱く。

「大丈夫。ズィーヴァはこんな傷に負けないくらい可愛いよ」


 するとズィーヴァが涙声でこたえる。

「有難うございます。デレク様の所に来ることができて、本当に幸せです」


 空気を読まない、いや、多分空気を読まないフリのリズが、いきなり俺のズボンを引き下ろす。

「じゃーん。デレクちゃんの登場ぉ!」

「きゃ」と、そりゃあ、ズィーヴァも驚くよな。


「ちょ、いきなり何するんだ」

「えー。お風呂に入る時には服を脱がないとダメなんだぞお」

「そうね。早く脱ぎなさいよ、デレク」


 その後は、まあ、いつもの感じである。


 ズィーヴァは終始、背中の傷を気にしているようだったが、いやいや、そんなことよりプロポーションの素晴らしさである。特に、脚がすばらしくすらっと長い。ベッドに横たえてつま先からふくらはぎ、さらに太ももと、じっくり観察したいものである。


「デレク、口から出てる」

「げ。どこから漏れてた?」

「ロングスカートの中に隠れて、ズィーヴァの美脚を一日中撫で回したい、できれば舐め回したい、というのは聞こえてきた」とセーラ。

「そんなことは言ってない」


「まあいいわ。今年一年の汚れを落としてあげるからじっとしてて」

「ほら、ズィーヴァも手伝ってよ」とリズ。

「え、あ、はい」

「ほら、デレクは動かないのよ」

「え、でも」

「あら」

「うふ」


 あのー。

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