第10話 赤広未那は断言した
「というわけで、これからキミたちには局所激ヤセ魔法
「……」
「透き通った顔してるだろ、ウソみたいだよな、宇宙猫なんだぜ、それで」
例によって赤広未那、若槻莉愛、美山涼香の発言(発言?)順番だ。
「スズは割と平気そうだね。リアは……ダメみたいだね」
「……」
「ウチはまあ……、覚悟はしてたから。常日頃アンタの傍にいて耐性できてる。
ところで創作ダンスは勘弁してつかぁさい」
涼香も耐性ができていると言いつつ短文調でない辺り、動揺が窺える。
「まあ創作ダンスは別案があるならなんでもいいよ? ダッセーほうが受けるかもとは思ったけど、正直言ってその辺りはちょっとわたしにはわからないから。
微笑ましく見てくる層は男性だろうけど、ダイエットに関心があるのは女性の率が高いだろうし、それを期待できないって意味では、ちゃんとしたほうがよさそうっても思うし。
チャンネルコンセプトは魔法講座だけど、どうやってそれを魅せるかっていうのは、多分だけど、まだデビューすらしてない段階だとこれが正解っていうのがないと思うんだよね。
だから、ちゃんと痩せたってわかるようにある程度躍動感があって、ある程度の運動量があれば、なんでも」
「……」
「リア、聞いたか? これって逆の意味で言うと、ここで芸風が決まったら今後もずっとその方向で行くことになるってことだゾ。何か案があるなら捻りだしたほうが今後のためだゾ」
「いやそれ誤解。一回でコケたからって諦めるわけないし? 受けなかったら別の、それこそ創作ダンスでも歌唱でも魔法体験リアクション集でもなんでもやるってだけだし」
「……ふぐぅ…………」
「リア、試合終了したらあかん。限られた中で少しでもマシなほうを掴み取る。それが、それだけがウチらに許された、ただひとつの冴えたやり方なんや」
「うーん。キャッチーでモチベを持たせて修行もできるっていう一番いいプランだと思ったんだけどな。
だいたい、ちょっと下着に剥かれてぴっちりホットパンツのへそ出しルックに着替えさせられて強調された余ったお肉を撮られたくらいでそんなに凹む? そもそも服の上からでもそんなの一目瞭然だし? わたしからすると今更感がすごいんだけど……」
「ぅぅぅ……」
「持たざる者にはわからんよ……というかそんな魔眼保持者は普通におらんて。あと、あの所業は控えめに言ってもトラウマ級。いっそ催眠で記憶飛ばしてほしかったレベル」
「正直、ここまでの拒絶反応があるとは思ってなかったんだよね。ちょっとくらいお肉が余ってる方が男性人気は高いって話はガセ?」
「男性人気とかどうでもいぃ~」
「この問題意識のスレチぶりよ。さすボブ」
さすが暴虐ブラコンの略(ぼうぎゃくぶらこん)。
「男性人気がどうでもよくて、同性のわたしの所業でトラウマ……つまり、ガチレズ……ってこと?」
「ちがうのに~。ちがうのにあたしじゃツッコめないぃ~」
「ボブが訝しんだ。……ウチにもツッコめん。たぶんもっと恐ろしいものの片鱗を味わうことになる」
「まあ冗談はさておき、わたしとしてもあんまり強制的にやらせたくないんだよね。女性の同情票を集めるって意味ではそれでもいいかもっても思うけど、非効率的だからね、キミたちの魔法習得推進の上では」
「……みーなーマジ性格悪い……」
「あんのじょう」
「いや、これは事前に言っておいたでしょ? リアみたいなタイプでもできるだけ両取りできるようにしたいって。予想外だったのはここまでモチベが下がるとは思ってなかったってことで、これは本音。だからちょっと困ってる」
「あー……そういえばー……あれって本気だったんだ」
「ただの挑発だと思ったか? 残念!
……マジで残念なことにミナは基本、嘘は吐かない、嘘は」
「失敬な。わたしだって嘘くらい吐くよ」
「えぇ……。何が失敬なのかわかんないのはあたしの頭が悪いせいー?」
「気にするな、ウチにも致命傷だ」
「人間はおよそ嘘を吐くからだよ。今のはわたしが人間じゃないって言ったも同然だから人権侵害レベルの名誉棄損だし」
「えぇ……」
「もしやミナは人外の自覚がないのでは……? ボブは訝しんだ」
「マジで失敬な。そもそも人外になれるんだったらなってるって話だし。誠に遺憾ながらわたしは全然人間だし」
「うぅん?」
「悲報、ミナが何を言っているのかわからない件」
「あれ? スズは見たことないんだっけ? お兄ちゃんが戦うところ。ああいうレベルになってようやく人外って言うんだよ? たしか五年くらい前だから今は余裕で人外だけど、って、ああ、スズの認識はそこで止まってるんだ?」
「えぇ……?」
「マ?」
「マ。失敬でしょ? お兄ちゃんに」
「えっと……つまり、みーなーくらいで人外って言ったらお兄さんに失礼でしょ、ってこと?」
「蝶が羽ばたいて宇宙の法則が乱れるみたいな話だな」
「そういうこと。わたし程度にだったらキミたちも割とすぐになれるから、安心して人類範疇内生物として一緒に頑張ろうね!」
「えっと、何に安心すれば?」
「暴虐ブラコンが人類範疇内、だと……? そいつはいったい何の冗談だ?」
「人をクリーチャー扱いするスズへのお仕置きはさておき、いい機会だからここで、わたし程度だったらすぐになれるっていう根拠について話しておこうかな。魔法体験リアクション集の撮影はその後でね」
すごくいい笑顔で。
さすがにあの映画のクリーチャーに見立てられるのは許容範囲外だった模様。
「みーなーの笑顔を見てるとドキドキが止まらない。ねぇ、スズちゃん、これってもしかして……」
「それはコイだな。間違いない、ウチは詳しいんだ。まな板の上に載ってるのを稀によく見たことがある。なんなら今ウチが載ってる」
(続く)
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