第9話 【悲報】赤広未那は諦観した【プランB始動(゜д゜)】
「言ったようにわたしの目的としては、
「できたらやるってところは否定しないところ、いいと思うます」
「むしろまだやってないことがなんで?」
例によって赤広未那、若槻莉愛、美谷涼香の順番だ。
「確かに、自力で洗脳を破れるまでは洗脳するっていう手もあるよね。魔法使いを増やすだけなら一番手っ取り早いかも」
「そう聞くとー、確かになんで?」
「さりげなくウチ発案にするのやめてもろて」
「洗脳が解けた後に誰かスケープゴートが必要になるから、仮にできても絶対やらないし。キミたちも絶対に誰にも、最悪でもお兄ちゃんには言わないでよ? お兄ちゃん自分からスケープゴートになりに行きかねないから」
「えーっと、それはおにいさんならできるってことだよねー?」
「……」
珍しく涼香は何も言葉を発しない。
「かつてない説得力」くらいは言いそうなものだが。
「正直、わたしには判断できないかな。お兄ちゃんなら今はできなくてもそういう魔法を作ってしまいかねないし。わたしも今は対面でしか他者操作の魔法なんて使えないけど、感染系の術式と組み合わせればできないことはないって気もするし、この国に限れば何とか。いやそれだと中途半端すぎて逆効果かな……」
「みーなー、みーなー。お願いだから真剣に考えないでー」
「真実味マシマシで飯がまずい」
「いやだからやらないって。わたしがやったらお兄ちゃんが絶対身代わりで庇うし」
「あー、そういうことなら……安心していいの? スズちゃん」
「……間違いない」
「ちょっとどころじゃなく脱線しすぎたから、話を戻して巻きで行くよ。
キミたちのコンセンサスを取った上でなら部位脂肪だけを消費させる魔法をかけられて、抵抗値のおかげでそのリスクは最低限っていうことまではいい?」
「思えばそんな話だったねー」
「遠くに来たもんだ」
二人は遠い目をした。
「それで条件が二つって言ったのも覚えてるかな?
もう巻きで行くからさっさと言うけど、
一つは、ちゃんと効果を出すために運動するってこと。これは創作ダンスがいいかな。ダッセーのがむしろ素人っぽさがより出て受けるかもだし。
残りは、今減らしたい部位の画像記録を撮らせること。自己紹介の動画込みで。
もちろん二つとも配信動画に載せます」
「……あわわ、あわわわわ、あわばばば」
「やはり、そうきたか」
「スズは予想してたみたいだね。まあ、あえて条件を付けるんだからわかるか」
「ちょ、ちょ、ちょっっとぉ、みーなーズルくないそれ⁉ 自分は出ないからってぇっ!」
「リア、残念だが……」
動転する莉愛の肩に手を置き、芝居気たっぷりに首を横に振って指を差す。
その指先が示すところには、
「あ、あば、あばばびばばばばば」
莉愛はますますバグった。
それはあたかも無彩色の白磁のよう。
それでいて、しっとりなめらか。
ほんのりとした柔らかさを触れずとも確信させる。
くびれがあるとかないとかそんな次元ではない。
これが、これこそが『くびれ』なのだと主張するかのような完璧な黄金比。
ありていに言えば服をまくり上げて腰部から鳩尾までの腹部を露わにする未那の姿だった。
そして流れるように腰を捻り半身になって、ストッキングに覆われた脚線美をギリギリまでスカートをつまみ上げて見せつける。
「わたしじゃビフォーアフターできないんだよね」
「ずずずっこいっ! みーなーずっこい!」
「語彙力」
「念のために言っておくと、部位脂肪消費魔法――語呂悪いから何かいいの募集中――を使ったからこうなんじゃないよ?」
「えー? うっそだー。アフターなんでしょぉ? そうなんでしょぉぉ?」
「うせやろ?」
涼香も、未那が自分の体形を魔法で弄ったものと思っていた模様。
「純粋に栄養管理と適切な運動の賜物。ちょっととある事情でわたしの小さい頃からの献立って殆どお兄ちゃんが立てて作ってくれてたんだよね。
で、お兄ちゃんって理屈でものを考えて実践するから栄養学とかそのまま反映した献立で、足りない調理技術は魔法で補ってくるから美味しくって、わたしも別に反発とかしないで普通に食べてて、運動とかも魔法をわたしに教えるついでに身体制御とかさせるものだからバランスが崩れたりすることもなく、結果、対称性の優れたこの黄金比バランスの体形にプルプルつやつやお肌です。
まあ治癒系の魔法が定期的に働いているからそのおかげもあるとは思うけど」
「た、確かに……っ! みーなーってぱっと見モデル体型ってわけじゃないのになんかキレイっていうか、こう、キレイな人から受ける
「キャラ変するほどの衝撃で草」
しかもブレている。
「でもなんでかあんまり身長と胸囲は伸びなかったんだよね、不思議。いつの間にかスズには抜かされてたし、両方とも」
ちょっとばかりむくれるように、未那は自分の胸部を押さえる。
やっぱり気にしていた。
「いやいやいやいや。あなたアンダーとトップの差を言ってみなさいよ」
莉愛はまだキャラ
「裾丈が同じだと知った時のウチの受けた衝撃よ。怖いからカップサイズは言わせんでクレメンス」
キャラ変中の莉愛の追求を涼香は割とマジ顔で止める。
莉愛は「マジか」という顔で涼香を見上げた。宇宙猫。
「それで、どうする? 条件受ける? 受けないなら受けないで別のプランもあるけど?」
「さ、参考までにどんな別プラン……?」
「聞かないほうがいい」
「別にどうってことないよ? 単なる初心者魔法講座をやるだけだし。キミたちには諸種様々な魔法を受けてリアクション芸を披露してもらいます。抵抗値を鍛えないとこういうことになるよっていうネガティブアピールだからあんまりつかみはよくないかもと思ってプランBにしてたんだけど」
「あー、それならー……帰りますね?」
「ドアインザフェイスやめろ! ウチは帰らせてもらう!
ってできるわけないんだよなぁ」
にこっ……と笑ってキレイにお辞儀してさりげない態で立ち去ろうとする莉愛に、同調するようにした涼香が突如一転、がっちりと莉愛の肩を掴んで止める。
莉愛は「裏切り⁉」とばかりに涼香の顔を凝視する。
「スズは賢いなぁ。嫌いじゃないよ、そういうとこ」
ひたひた、ひたひた。
「スズちゃん……?」
「いいかい、リア。大切なことだからよく聞いて。ミナと上手く付き合うコツはね、自分がホラー映画の登場人物になったつもりでいるってことなんだ。たとえ隣に殺人鬼がいるってわかっていても陽気に振る舞うんだ。けっして忘れてはいけないよ。ウチとの約束だ」
「……スズちゃん、それってけっきょく死んでない?」
「かなりの高確率で」
……ひた
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