第7話 【いい加減に】続々・赤広未那は修行した(させた)【サブタイ回収しろ】

「というわけで青春っぽいイニシエーションを済ませたところで今度こそ修行するよっ!」

「男の子もいないのに青春っぽいって……」

「アオハル違う。あれはもっと恐ろしいなにかだ」


 例によって赤広未那、若槻莉愛、美谷涼香の順番だ。


「はいそこ。青春は辞書によって意味が違うから。必ずしも異性必要ないから。キミたちはそこで百合の花でも咲かせていればいいよ」

「え、やだそんな……ねー?」

「チラチラ目線くれるのヤメロ」


「それじゃ、まずは今回キミたちにかける予定の魔法の解説から始めます」

「ネタを振っておいてこの仕打ちー」

定期いつものこと


「まあ解説と言っても、細胞のミクロ単位の話から始まり神経系がどんな風になっていてそこをどうしたら『狙った部位脂肪だけを消費させる』っていう人間の生理を無視したことができるのかってことを延々語ってもしょうがない。

 最終的には理解したほうがいいと思うけど、そこまで理解しなくても大体何をやっているか、さえ把握していれば使用する分には大まか問題はないのが魔法のいいところ。家電やスマホなんかの文明の利器と一緒だね。

 それなのにどうしてこの魔法が高難易度なのか。今回の場合、パラメーターの設定が自分でできないと大変なことになるから。

 ぶっちゃけ胸部装甲が薄くなるとかは全然大きな問題じゃなくって、最悪の場合脳細胞が自食現象を起こしてスッカスカになったりとかありえるし」


「こわっ」

「ふつうに怖いんだが?」


「魔法って怖い。その認識は正しいよ。自分に作用する系の魔法は特に危険。

 なぜなら魔法の基礎として、違う魔法は同時に使用することが難しいというものがあるんだけど、それは同時に魔法を行使するとそれぞれで干渉して全く別の効果になってしまったり、誤作動を起こしてしまったりするからっていうのが一因。

 だけど、他人にかける分にはそれほど怖がる必要はないよ。より正しくは、怖がる必要がないようにできる」


「それってみーなーが他人の脳をスッカスカにしても気にしないからってだけ、じゃないよねー?」

「暴虐ブラコンへの信頼が熱くて草枯れる」


「確かに、わたしはあんまり気にしないけど、そういうことじゃないよ」

「……冗談だったのに~」

「炎上するわこんなん」


「まあね。わたしが出演しない理由の一つだよ。炎上商法って手もあるけど長く続けるならその手は悪手だからね」

「なぜか得意げ」

「暴虐ブラコンの面目躍如」


「暴虐暴虐うっさい。わたしをなんだと思っているのか」

「え……?」

「何って……暴虐ブラコンは暴虐ブラコンだけど?」


「リアの「え」一文字のほうが行間分情報量が多い構文やめろし」

「えーっと、ネタなんだよね?」

「ネタの解説するときは死ぬときって決めてんだ」


「訴えられないようにピー音ばっかりにさせないようにしてほしいっていうのは、無理だよね……もう生態だもんね。言わなきゃ死んじゃうんだもんね。どれがそれだって解説すると死ぬんだもんね。どうしようもない。むしろ殺してあげようか?」


「みーなーが言うと冗談じゃないから。聞こえないから」

「ヤンデレ乙」


「デレとか違うし。大体、お兄ちゃんにもデレたことないのに」

「えー、そこなのー? ……って、スズちゃん……?」

「……………………………………………――――」


「え、何その放送事故レベルの硬直。どったのスズ? 目がガンギマリでやばいよ絵面が。芸風変えた?」


「――じょ、冗談でもそないなこと言わんといて。過去一カコイチ怖ぁなった、ガチで」


 震え声で。

 

「は? 冗談? 何が?」


 前回、常人なら膝をくっするであろう圧に耐えきった涼香が、ただ首を傾げただけの未那に、ビクッとして仰け反り、引きつった顔を背ける。

 圧なんて出ていないのに。

 もう完全に涙目だ。


「あ、ありのままに今起こっていることを話すぜ。ミナの、ミナの目がマジなんよ。本気で冗談言ったつもりがないんだ。何を言っているかわからねーと思うがウチにはわかる。頭がどうにかなってまう。催眠術とか超スピードとかそんなちゃっちぃもんとちゃう。あれはあれでガチで怖ぁなったけどミナだったからなんとかなった。最強兄の妹暴虐ブラコンのやることだから耐えられた。ただの妹だったら耐えられなかった。ただの妹のつもりのミナには、ウチ、よぉ堪えへんっ!」


 ネタに塗れてちょっとわかりづらいが涼香に来した恐慌のマジさはその声音から明らかだった。


 莉愛などはネタやフリなのかどうかを迷っておろおろするばかり。


 ついにはうずくまって頭を抱えてしまう涼香に、未那が呆れたように声をかける。


「何を言っているのかな、スズは。ブラコンであることは認めるけど、わたしちゃんと妹してるでしょ?」


 ちゃんと妹してるって、なんだ?

(↑ツッコミ役が錯乱しているので代わりにお送りしております)


「呆れ……とちゃうやろ!?

 ただの妹はおにーさんと話しているときにウチらと話す声と二オクターブは違って聞こえたりせんやろ!?

 顔に紅入れたんかってくらい朱が差したりせんやろ!?

 目の潤みが半端なくって常時瞳キラキラさせたりせんやろ!?

 リアとか比じゃないくらい甘えたなオーラだしたりせぇへんやルォ!? この辺がギリやろがい!

 あげく、ボケかましたおにーさんにうっれしそうに……

『仕方ないなぁお兄ちゃんは』

 ……っとかッ!

 正味で白目剥いたん、あんときが初めてやったわ……。

 あれがっ、デレじゃなくってっ、なんだっちゅーぅんねんっ!?」


「この辺がギリ……」

 流れ弾を喰らった莉愛は口端をヒクつかせて左胸を押さえながらたたらを踏み、呻く。


 そして狙撃された未那はというと、


「ぇ、ウソやだ……そ、そんなふうになってるの? ホ、ホントに?」


 片手は服の裾をつまんでイジイジ。

 もう片手は軽く握った手で顔を隠すようにモジモジ。

 内腿をこすり合わせるようにして、顔を斜め下にそらして、その横顔は耳まで完全に朱に染まって瞳は涙で潤んでいる。


「あ、なんかスズちゃんの気持ち、少しわかったかも。これは怖い」

「せやろ?」


 混乱しているときに自分よりも混乱している人を見ると冷静になる心理と同じで素になった莉愛が感想を述べ、涼香がしたり顔(強張ってる)で頷く。


「かわいい。間違いなくかわいいんだけど、むしろそれが怖い」

「せやろ?」


 ドン引きした人の常で、真顔の莉愛は未那を評する。

 涼香はそんな莉愛にすがるように壊れたレコード状態だ。


「ぅなぁぁぁ……初めてのデレはいつにしようって見計らってたのにぃぃぃぃ~」


 未那は一人顔を両手で覆ってトンチキなことをのたまっている。


「計算高そうなこと言ってるところ、確かにみーなーなんだけど、これは確かに狂ってるねー、お兄さんに」

「せやろ?」





「せやろ?」

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