0006 異世界への栞

「だから、わらわの話を聞けと言ったんだ!」


 サリーナが腹を抱えて笑っているのを、俺たちは顔を真っ赤にして聞くしかなかった。


「異世界に行ったら帰って来れないって?その女神は力がないんじゃないの!アハハハ!」

「サリーナ様、どうか、それぐらいで勘弁してください。」玲子は恥ずかしさの余り涙目だ。


 それでも爆笑を抑えられないサリーナ。

「いい?異世界に行くって言っても、帰って来れないんじゃ勇者が可愛そうじゃない!力の少ない人間達が召喚したならいざ知らず、私が召喚するのよ!アハハハ!痛!」


「す、スマン、思わず殴ってしまった。」




ー***-




「さて、それじゃあ、異世界に行く前に説明するから、しっかりと聞けよ。」


・これから転移する世界は剣と魔法の世界である。

・異世界に行っても、好きな時に帰って来れる。

・この世界の物は、全て持ち込み可能。

・異世界に行く前に適性検査をする事。

・現地の言葉の読み書き発音は女神クリス・サリーナが付与するものとする。

・現地の通貨は基本、金貨1000枚を最初に所持するが、なくなった場合は、個人で稼ぐ物とするが、例外もある。

・異世界に行く際に病気にならない健康体を授けるが、今現在、何らかの基礎疾患がある場合は、その限りではない。

・異世界での基本的な強さは女神の加護により現在の力の10〜1000倍位の予定になるものとする。

・元から獲得しているスキルの他に新たにスキルが獲得できる場合もある。

・現在、武術などを心得ているものは異世界でも通用する。

・異世界は各種保険等は基本的にないと考えられる。

・勇者の本懐を遂げた後でも異世界に残りたければ残ってもよし。但しその場合は2度と元の世界に戻れないものとする。


「ざっと、こんな感じだね。解らない所あるか?」


「なぁ、アンタと連絡する手段はないのか?」

「本来はないよ。でもね、やっと来てくれるって言ってくれたんだから、サービスしちゃうわよ!」


 サリーナは桜花に手を出し

「スマホ貸してくれ。」

「ああ。」

「え~っと、ここをこうやって~出来た。」


 アドレス帳に「サリーナ」ってある。登録画像もちゃんとあってウィンクをしながらピースサインをしている。いつの間に撮ったんだ?


「でも、異世界じゃ電波ないよな?」

「それは、思念伝達を簡単にできるようにしたものよ。」

「壊したときはどうするんだ?」

「その時は、自動回復魔法で元に戻るよ。」

「充電はどうするんだ?」

「魔力供給で補えるよ。もちろん本人の魔力でなくてもOK!」

「じゃあ、早速・・・。」電話を掛けようとするがサリーナがやめよとばかりに俺を制する。

「今はだめだ。使えないから。」

「なぜだ?」

「だって、この世界は魔素がないからだもの。」

「そ、そうか。それは残念。」

「それで、いつから行く?」

「本当は、今からでもって言いたいところなんだけど、仕事の引継ぎもあるしなぁ」

「なんだ、そういうことを気にしてたんだ。」サリーナが笑う。

「大丈夫、仕事を辞めなくてもいいようにしてやる。」

「どうするんだ?っておい!」


 俺はサリーナにキスをされた・・・。

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