0005 ハネムーンは異世界
ソファーにサリーナが座っている。
その向かいに俺、そして俺を取り巻くようにくっついている女性たち・・・。
右横に玲子、左横に茜、後ろから手を回してくるのがいろは、床に座り俺の股に頭を預けているのがみどり・・・。
なぜ、こうなった・・・。
「な、なぁ、窮屈だから、もう少し間を開けてくれない?」
「桜花さん、私の事を嫌いになったの?」と玲子。
「旦那様は僕の物だからよ、絶対に離れないぜ。」男前発言をしてくる茜。
「私にそんな厳しい命令だなんて!ハァ、ハァ…。」Mっ気があるのはいろは。
「・・・」何も言わずにどかないのは、おっとりタイプ?のみどり。
サリーナはため息しかつかない・・・。
「なぁ、勇者よ、こんな平均以下の女どもの一体、どこがいいんだ?目の前にとびっきりの美女がいるじゃないか?」
「俺は名前があれば便利だと思った。そういう軽いノリだったんだよ・・・。」項垂れながら小さな声で答える。
「だから、やめろって言ったじゃないか!」
「もっと、はっきり言ってくれよ~!」
「しかし難儀な問題だなぁ~、名前を付けた以上、コイツラの魂にお前とお前が付けた名前が刻まれたんだ、離婚は出来ないと思えよ。」
「マ、マジか!?」
「まぁ、こいつらは給仕には慣れてるから、今後の生活は楽になるぞ!」
「そんな慰めの言葉、いらんわ!」
「慰めなら・・・」顔を赤くした茜が「僕たち全員で旦那様と一緒の布団に入って・・」
「それ以上、言うなぁー!」気持ちいい光景なのは解ってるけど、今そんな想像をすれば、大きくなってしまうだろうが!他の女に反応している所を玲子に見せられるか!
「まぁ、そういう訳だ。玲子、諦めてくれ。」サリーナが諭すように言う。
「な、ならば!」玲子が立ち上がる!
「誰が正妻か、今ここで決めようじゃないですか!」
「玲子、お前たくましいな。」サリーナはびっくりする。
「こういう展開が大好物なんだよ・・玲子は・・・」
ー***-
女性4人が誰が正妻になるかを決めている間にサリーナが話しかけてくる。
「のう、勇者よ。」
「ん?もう桜花って呼んでもいいぜ。」
「そうか。桜花よ、勇者として召喚されてくれないか?頼む。」
「解ってる。」
「それじゃあ、一緒に行こう!」
「誰が行くかぁ、ボケェー!」
「何でだ?今は了解してくれる、良い感じの空気だったじゃないか!」
「今まで、アニメやゲームで異世界物を散々見てきたんだ!事の顛末は解る!」
「お前は、魔族に襲われる民をなんとも思わないって言うのか?」
「そんな事を皆が考えてたら、戦争なんて起きねぇよ。実際に起こっても皆、対岸の火事さ。お前達の住む世界にも多数の国があるんだろ?何で、国同士が話し合って協力しない?何で一人の異世界人に頼る?」
「そ、それは・・・。」
「結局、どこの世界も同じってことさ。」
俺の突き放すかのように放った言葉に落胆したサリーナは席を立った。
「そうか・・・。お前がそういう奴とはな。邪魔したな。ニンフ達は置いて行く。皆で楽しく過ごしてくれ。」
「おう、さよならだ!」
「待ってください!」玲子がサリーナを呼び止めた。
玲子は一枚の紙を出し、「桜花さん、サインと印鑑お願いします!」
その紙は『婚姻届』だった。
「話し合いの結果、私が正妻に決定致しました!」
「そして必ず、桜花さんを勇者にし、魔王を討伐致しますので、サリーナ様、ご安心くださいませ!」玲子は熱い闘志と共に力強く握りこぶしを握った。
「待て!待て待て待て!俺が勇者になるって言ったら、俺は異世界に飛ばされるんだぞ!」
「そうね。」
「そうねって、結婚早々、お前を一人に出来るかぁ!」
「安心して。」
「何をだよ。」
「私も一緒に行くから。」
「は?」
「だ・か・ら、私も異世界に行って冒険者になるのよ!」
「何言ってるんだ?」
「ハネムーンが異世界っていいじゃない!」
「もう、帰って来れないかも知れないんだぞ。」
「あなたと一緒なら大丈夫よ。」
「死んでしまうかも知れないんだぞ。」
「大丈夫、あなたは死なない。私が守るもの。」
「・・・・。」
俺達は見つめあい二人だけの世界を堪能している所に申し訳なさそうな声でサリーナの言葉が聞こえた。
「いい雰囲気の所、悪いのだが・・・。」
「覚悟は出来てます!異世界に飛ばしてください!」決意した?嬉しそう?玲子が言った。
「こちらの世界には、好きな時に帰って来れるからな。」
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