0004 ニンフ達

 俺、玲子、その向かいにサリーナが座っていて、ニンフ達3人はサリーナの後ろに立っている。


「おい、ニンフさん達も座らせたらどうなんだよ!」

「構うことはない、こいつらはわらわの世話係だからな。」

「だからって、立たせておくことはないだろう、この人達もお客さんなんだから!」

「お気遣いなく・・・勇者様。そのお言葉だけで幸せでございます。」

 黄髪のニンフが畏まったようにお礼を言ってくる。

「僕は座らせてもらいたいけどな!」と赤髪のニンフが言う。

「お黙りなさい!サリーナ様の御前ですよ!」今度は緑色の髪色のニンフが制するように注意をする。


「勇者?」何の事?きょとんとした玲子が聞き直す。

「なんだお前・・痛っ!」サリーナの言葉に対し脊髄反射的に殴る俺。

「お前、俺の婚約者に向かってお前とはなんだ!」

「お前こそ、わらわの事をお前って言っとるじゃないか!それに、昨日と同じ所を殴るな!まだ、治っとらんのだ!」

「うっさい!玲子は俺にとって特別な人なんだよ!」

「桜花さん、弱い者いじめはやめて!」玲子が二人を止めるので、しぶしぶ喧嘩は収まった。


「玲子、と言ったな?」サリーナは確認をしながら玲子の顔をじろじろと見ている。

「・・・はい。」

「実は桜花は勇者なんだよね。わらわと繋がりを持った・・・痛っ!」

 今度は、ほっぺたを思いっきり引っ張る俺。

「ややこしい言い方をするな!俺たちは何にも繋がってねー!」

「いひゃい、いひゃい!昨日の夜に、あんなに激しくわらわを突いたくせに!」

「お前の頭を殴っただけじゃねーか!ややこしいんじゃ!」

「弱い者いじめはやめてー!」再び、玲子が喧嘩を止める。


 一通り収まり、場が落ち着いた所で玲子が話を続ける。

「何で、桜花さんが勇者なんですか?」

「玲子・・・そこは真面目に聞くんだな。」俺は呆れ顔だ。理由はわかってるけど。

「だって私、異世界アニメが大好きだもの!この展開は異世界に転生するパターンよ!現実に見れると思ってなかった!」ほらね。玲子の目がキラキラと輝きを増しているのが解る。


 玲子・・・見た目・性格共に完璧なのだが、実は「アニヲタ」だったのだ。俺は、玲子の気を引こうと全力でアニメを見て勉強した・・・初めて会話した時もアニメの話で、そこから二人は急接近したのだが、俺は玲子の様にはアニメにのめり込めなかった・・・アニメが好きって嘘ついてスマン玲子!


「ほほう、じゃあ玲子に話した方が話が早そうだな。」サリーナが言った。

「ダメだ!玲子にだけは話すな!」

「なぜだ?」

「絶対に賛成するからだよ…。」

「いいことじゃないか?」

「良くない!俺は行かんぞ!絶対に行くか!この幸せを捨ててたまるか!」

「ん?お前もなんだか話が分かるような言いぐさだな?」

「俺も異世界物のアニメは見るんだよ。だから、事の顛末は解るんだよ!」


「それよりも、先にごはんにしない?サリーナ様、おなかは空いてないですか?」

「玲子は気が利くな~今夜のメニューは何だ?」

「ハンバーガーです!」

「・・・お前、余程ハンバーガーが好きなんだな。そんなに食いたいのか?」

「昨日お前が持って帰ったから、俺は食えてないんだよ!」

「一人で作るのは大変だろ?わらわのニンフ達を貸してやるから、一緒に作れはいいぞ。」

 サリーナの指示に従い、ニンフ達がキッチンに行こうとするのだけど・・・。

 俺はある疑問を持ったのでキッチンに向かおうとするニンフ達を一旦、止めた・・・


「なぁ、ニンフ、ニンフって言ってるけど名前はないのか?」

「ああ、ただの世話係だからな、それにコイツラの事なぞわらわは興味もないしな。」

「じゃあ、俺が」と立ち上がり、ニンフ達を見る。


 一人は赤髪、一人は黄色い髪、一人は緑色の髪・・・信号機なのか?

「じゃあ、君は髪が赤いから茜、君は黄色だからいろは、君はみどりって名前を付けるよ。その方が色々と便利だろ?」


 サリーナが慌てて、「ば、ばか!やめろ!」

「何でだよ?名前があった方が便利だろ?」


 3人は急に顔を赤らめて、モジモジしている。みどりに関しては涙を浮かべている。

「もう、遅いかぁ〜」サリーナは顔に手をやり、ため息をもらす。

「いいか、よく聞けよ!お前が行った行為は『今からお前は俺の物、結婚しました!』って事なんだよ!」


「は?」俺。「え?」玲子。


「まあ良いか。わらわの国では一夫多妻制だからな・・ましてや勇者なら、なおの事か。」

「私が気にします!」玲子が慌てる。

「俺も気にするわ!」俺も叫ぶ!


『これからよろしくお願いします旦那様!』

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