第3話 絶望の告白。
永礼崇にとっては地獄の時間だった。
痛々しい姿でいまだに泣く王子美咲。
かつてここまで怒ったところを見たことのない両親と、怒りの眼差しで睨んでくる憧れの相田晶。
こんな時でも怒るではなく、「話してくれるかい?」と優しく聞いてくる王子美咲の両親。
黙ってやり過ごせるとは思っていなかったが場が悪い。
何より相田晶の前で、相田晶のコメントが気になってしまった事、後は真似をしてみたかったとは言えないが、それ以外に理由らしい理由はない。
相田晶が痺れを切らして「黙ってないで、なんでそんな真似したか言えよ!」と言って怒鳴りつけてくる中、王子美咲は泣きながら「梅子の事が嫌なら、なんで連絡先交換を受けたの?なんで断らなかったの?なんでわざわざ会って酷い事を言ったの?」と聞いてくる。
怒鳴られることの方が何万倍もマシだった。
軽蔑の眼差しで睨まれた方が良かった。
隠し通せるものでもない。
永礼崇は諦めて俯きながら「怖くなったから」と言うと、王子美咲は「前もって梅子の写真は見せたし、どんな子か話したのに?」と聞き返してくる。
永礼崇はいたたまれず「違う…」と呟くと、王子美咲が「違う?」と聞き返したが、そのまま違うと言って黙る永礼崇を見て、苛立った相田晶が「何が違うんだ!言ってみろ!」と怒鳴った時、永礼崇は「俺は晶が怖かったんだ!」と叫んでいた。
シンとなる室内。
全員が必死に永礼崇の言葉を理解しようとする中、永礼崇は「…晶なら間違いなく、『美咲に頼んで、やっとその程度の女かよ』と言うと思った。そんな風に言われるのが怖かった。『その程度の女と付き合うなんて崇は終わったな』、『なんかその女、別にそんなに可愛くないじゃん』って言われるかと思ったら怖くなった」と言った。
それは両親だから、幼い時からきょうだい同然に過ごした王子美咲と相田晶だから、王子美咲の両親だから、永礼崇の言葉が本心からでたものだとわかった。
相田晶も人が悪い。
自身なら言いかねない言葉なのに、自覚もなく「俺がそんな事言うわけないだろ!」と永礼崇を怒鳴る中、王子美咲は「それなら言ってくれたら梅子にうまく説明したのに、なんでわざわざ会って傷つけたの?なんで晶みたいな物言いをしたの?」と泣きながら聞いてきた。
皆の目が自分に向くのを感じた永礼崇は、項垂れたまま「俺は晶みたいになりたかった。心のままに人を傷つける言葉を言って笑い飛ばしてみたかった。人を笑いものにして許される男になりたかった。だから怖くなった時…今回がそのきっかけだと思ったんだ」と呟くように言うと、永礼崇の両親は落胆の顔で絶望のため息をつき、王子美咲の両親は言葉に困っていた。
王子美咲が「そんな事で」と泣く中、相田晶が永礼崇の胸ぐらを掴んで殴り飛ばすと、「俺はそんな事まで言わない!」と言い、「お前は美咲と美咲の友達に謝れ!そんな事で美咲を泣かせて美咲に怪我をさせた!」と怒鳴りつけた。
力なく殴られて項垂れる永礼崇は、「謝る?いいよ。別に謝るくらい。それで気が済めばいいんじゃない?」と言った。
相田晶が怒り狂って永礼崇を殴りつける中、永礼崇の両親は相田晶を止めずに、王子美咲と王子美咲の両親に「美咲ちゃん。ごめんなさい。私たちが謝って済む話ではないけれど、まず謝らせて。そして治療費を支払わせて」と言って謝ると王子美咲は「ごめんなさい。おじさんもおばさんも嫌いじゃないけど、崇には関わりたくない。お金の事とかわからないからウチのお父さんとお母さんと話してください」と言うと、スマホを取り出して家に帰ろうとしながら、「梅子、ごめんね。全部聞き出したよ。私が悪かったの。ごめんね」と謝り続けていて見ていられない。
相田晶は王子美咲の父親に「おじさん。車出してよ。美咲をあの美咲の友達のところに、もう一度連れて行きたい」と言った。
相田晶は王子美咲に「美咲、今からもう一度謝りに行きたいと言ってくれよ」と言い、電話先で「やだ」と言っている声が漏れてくる町屋梅子に、「頼む!この通りだ!」と言うと有無を言わさずに王子美咲の父親に車を出させて、町屋梅子の家まで行く。
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