第4話

(誰だ?)


(知らねぇ。俺に体を譲れ!)


(ここに居る全員殺すんだろ?渡さないよ)


(ちっ!)


扉に駆け寄り、思い切って開いた。


すると、一人の少女が現れた。


彼女は肩にかかっている銀色の髪を触っていた。


「どうしたの?」


迷子かと思い、聞いてみた。


「お兄さんも悪魔憑きでしょ?ここに居る全員殺そうと思うんだけど、私に協力しない?死体は半分あげるから」


(ノヴァ、逃げてもいいか?)


(どこに逃げるんだ?ここは列車だぞ)


彼はケラケラ笑っている。


(どうすれば……)


協力したら、聖騎士に殺される。


逃げたら、きっとこの子に殺される。


「俺はやめとく。そんな事したら、聖騎士に殺されるだろ?」


「聖騎士……ね。ここは出入りできないから、怯える必要無いと思うけど」


「下りた後の事は分かんないだろ!そもそも、大人数殺す必要あるか?」


「……」


悪魔にとって、死体は食べ物だ。


それでも、殺戮する必要は無いと思う。


「お兄さん、人間の味方なの?」


冷たい視線を感じる。


(あ、これヤバイ)


どうやら、逆鱗に触れてしまったらしい。


「それは……」


言葉を濁そうとした時、何かが胸を貫いた。


衝撃でそのまま倒れてしまった。


「悪魔だったら、それくらい治療できるでしょ?」


(鎖……?)


先端に短剣が巻き付けられている鎖が胸を貫いていた。


(面白ぇな!コイツと戦わせろ!)


痛みに耐えながら引っこ抜き、胸を再生すると、立ち上がろうとした。


すると、今にも閉まろうとしている扉が目に入った。


「邪魔しない方が身のためだよ」


彼女は去っていった。


「どうすればいいんだよ……」


一人きりの部屋でそう呟いた。


(乗客助けてぇんだろ?俺に変われ!)


(勿論!俺の体を貸す。だから……)


(『敵を倒せ』だろ?)


(ああ!)


俺の体は部屋を飛び出した。


(居た!)


右には扉をこじ開けようとしている少女が居た。


(コイツは人間じゃねぇから、殺しても良いな?)


人間の見た目をしているが、中身はモンスターだ。


(……いいよ)


「震えて待っとけば良かったのに」


意外という顔つきで、そう言った。


「おいガキ、3秒で片付けてやるよ」


「さっきはボコボコにされたのに?」


列車が大きく揺れたのを合図に、戦いの幕が切って落とされた。


「その攻撃はもう見たぜ!」


蛇のように蠢き、接近する鎖に目を疑った。


「面白ぇスキル持ってんな!」


頭に直撃する寸前、鎖を思いっきり叩きつけた。


すると、床に突き刺さり静止した。


「意外とやるね。だけど……」


(ノヴァ!避けろ!)


彼は言う事を聞かず、少女を粉々にしようとした時、背中に何かが突き刺さった。


(くそっ)


そのまま体を貫通し、全身に巻きついた。


「再生能力は高いけど、動きは知能の無い雑魚悪魔と同じ。少し期待したんだけどなー」


激しい痛みに身を悶える。


「くそっ!お前……正々堂々戦えよ」


「人間と馴れ合い過ぎて戦いのルールを忘れたの?これは死ぬかどうかの戦い。ルールなんて無いよ!」


「ムカつくガキ……だな」


空中で身動きが取れず、もどかしい思いを抱く。


(少し我慢しろ)


(え?)


その瞬間、感じたことの無い痛みが全身に走った。


どうやら、再生で体をつなぎ止めているらしい。


「こっからは本気でいくぜ!!」


手で鎖を破壊すると、少女を殴りつけた。


そのまま吹っ飛び、寝台がある場所への扉まで来てしまった。


(このままじゃ客に見つかるかもしれない!ノヴァどうにかしろ!)


(へいへい)


返答したが、そのまま追撃を続けた。


「しつこい男は嫌われるよ?」


彼女は扉に向かわずに、車窓から景色を眺めた。


すると、窓を破壊して外に出た。


(逃げやがった!つまんねぇな)


(おい!痛かったんだけど!)


(すまんすまん。少しだけ体を魔力に変換した。まあ、そんな事はどうでもいい!兎に角追いかけるぞ!)


(どうでもいい……?)


唖然としたまま、決戦の時が訪れた。

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魔力無限の悪魔憑きは日常生活を送りたい しゅーくりーむ @syu-kuri-mu

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