第2話 聖騎士

「違いますよ!」


 悪魔憑き……それは悪魔に死体を乗っ取られた生物のことを指す。


 高い身体能力を持ち、魔力を使う事によって自己再生できる。


 また、人間に対して殺意を持っている事が特徴だ。


 故に、俺が悪魔憑きである事は隠すべきだ。


「では、何故ミノタウロスから逃げる事が出来たのだ?」


(なんでそれを知って……)


(はは!仲間に裏切られたのかもな!)


 彼の言葉を鵜呑みにせずに、大きく息を吸い込み、ゆっくり吐き出した。


「……答えられないのだな?」


 彼女は剣を構えた。


 すると、山吹色に輝いた。


(避けろ!死にてぇのか?)


 回避しようとした。


 だが間に合わず、頬から血が零れ落ちた。


「次は無い。質問に答えろ!」


(ちゃんと説明すれば大丈夫だよな?)


 痛みを止めるため、傷を治療した。


(いつ暴走するか分かんねぇ奴を生かしておくか?)


「コイツの言うことは聞かなくていい!」と自分に言い聞かせ、真実を言おうとした。


 しかし、彼女はそれを遮った。


「もう時間切れだ。今、貴様は自己再生した。それは悪魔憑きである証拠だ!」


 再び剣が金色に光り輝く。


 必死に体を動かし、左に走り出した。


 風を切り、走り抜ける。


 その時、破裂音が何度も鳴り響いた。


(何だあの武器?オレが外に居た時は無かったぞ)


(銃だよ銃!弾丸発射する武器)


(強ぇ武器か!お前も使えば良いじゃねぇか!)


(高級品だから買えないよ……)


 全力でダッシュし、森に入った。


(で?どうするんだ?)


(このまま駅を目指す!)


(くっだらねぇな。戦わないのか?)


(勝てる訳ないだろ!)


 1対10。もし戦ったら、確実に殺されるだろう。


(なら、オレに体を貸せ!)


(体を貸す?洞窟でも言ってたけど、どうやってやるんだ?)


(確か……体の使用権を与えれば良い!)


(使用権……?)


 そうこう考えているうちに、前方から人影が現れた。


(コイツ速いぞ!)


 俺は常人には追いつけないスピードで走った筈だ。


 しかし、彼女はそれを凌駕した様だ。


「お前は今までに何人殺し、その死体を魔力に変えてきたのだ?」


「殺して無いです!」


「嘘をつく知性があったと報告しておく」


「だから話を……」


 言いかけた時、腕が熱くなった。


 茂みに何かが落下する。


(和解する事を諦めて、さっさと逃げるか体を貸せ!)


 呆気に取られて、無くなった右腕を見つめる。


 雑草を踏み荒らす音が前から聞こえ、我に返る。


 だが、既に手遅れだった。


 女性は目の前。


 彼女の剣は今にも心臓を貫こうとしている。


(ノヴァ、俺の体を貸す。だから……)



「敵を蹴散らせ」



 その瞬間、俺の体は横に回避し、相手の腹を即座に膝蹴りした。


「何っ!?」


 彼女は腹を押えた後、剣を斜めに振り落とした。


 それを受け止め、再生した拳で顔面を殴ろうする。


 だが、腕で防がれてしまった。


(コイツ強いな。俺の攻撃を防ぐなんて!)


 吹き飛ばされただけで済んだらしい。


「聖属性魔法で攻撃した筈だ。何故再生できる……?」


 共に吹き飛ばされた剣で体を支え、跪いている。


「わざわざ言う訳ねぇだろ?」


 木の葉の間から斜陽が差し込んだ。

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