第Ⅴ章 心の迷い

ぐっすり眠っていると、外から鐘の音が鳴っているのに気づいて僕とナミは目が覚めた。

「なんだろう…」

「警鐘の音じゃないのか?もし警鐘なら王国が危険な状態なのだろう。とりあえず外に出るぞ!」

僕とナミは急いで宿を出た。

するとそこには大量の冒険者が、傷だらけで倒れていた。

「なに、これ…みんなボロボロに…」

「あれの仕業だろうな…」

そう言うナミの見ている方向に目をやると、大きな魔獣が奥に1体佇んでいた。

「あの黒い魔獣は一体…」

「颯斗!怖がっている場合でない我が王国の外におびき寄せる!その間冒険者を助けてやれ!」

そう言ういとナミは草原に向かって飛び出して行った。

僕は言われた通りにギルドの受付を呼び出して治療をお願いした。

「大丈夫ですか?この回復薬飲んでください!」

「あぁ、助かる…君も冒険者なら逃げた方がいい…あれは憎しみの塊だ…」

冒険者の人はそう言うと気絶してしまった。

「あの魔獣、苦しそうにしてる…助けてあげないと」

僕はナミと戦闘している魔獣に走り飛びかかった。

「グァァァァ!」

僕は黒い魔獣を優しく抱きしめた。

「大丈夫、もう大丈夫だよ、誰も攻撃しないから…1人寂しかったんだよね…苦しかったんだよね…」

「グルルル…」

魔獣は大人しくなり黒いオーラが取れてゆく。

「もう大丈夫だから、安心して…?」

「颯斗、そいつの心が読めるのか?」

しばらくして魔獣は草原へと走っていった。

「増援が来たぞー!」

そう聞こえた瞬間後ろから冒険者の大群が走ってきた。

「その必要はない」

「すみません…もう終わったので大丈夫です…あれ、意識が…」

僕は目の前が真っ暗になって意識が飛んだ。

それからは受付の人は増援の冒険者達に謝罪し帰ってもらった。

「この王国を守って下さりありがとうございました!また緊急依頼の報酬は渡しますので、明日の朝にまた来ていただいてもよろしいでしょうか?」

「あぁ、颯斗の体調が戻り次第またギルドに伺わせてもらう」

それからナミは僕を背中に乗せて宿へと戻った。

そして数時間が経ち、僕は意識が戻った。

「ここは…宿?さっきまで黒い魔獣と…」

「大丈夫か?いきなり倒れるものだからびっくりしたぞ…あの時何故魔獣の心を読めたんだ?」

僕は俯いて言葉を口にした。

「分からないけど、突然胸が苦しくなって、この苦しさはあの魔獣から来てるのが分かって、助けてあげなきゃいけないと感じたんだ…」

「その能力についてまた調べないとだな。後報酬を受け取りに後日ギルドへ来て欲しいとの事だそうだ。今日は疲れてるだろうからまだ寝ておいた方がいい」

僕は頷き、ナミと眠りについた。

しばらくして王国は朝を迎えた。

「や、やばい…体調崩してしまった…昨日のせいかな…」

ナミは横で心配そうに僕見つめていた。

「我に何かして欲しい事とか無いのか…?」

「え…?ん〜そうだな…それなら飲み物買ってきて欲しいな。それと、ギルドで僕が行けなくなったことだけ伝えて欲しいんだけどいいかな?」

ナミは行く気満々だったので僕のお金が入ったポーチをナミの首にかけた。

「颯斗はゆっくり休んでくれよ?」

「うん、ありがとう、ナミ」

ナミは宿を後にして店へ向かった。

「おやおや、マスターの子はどうしたんだい?」

「颯斗は今体調を崩しているんだ。それで代わりに我が買いに来たんだ。飲み水をくれないか?」

木製のボトルが入った袋をナミは自分のしっぽにかけた。

「合計で200Rsだ。マスターの子によろしく言っておいてくれないかい?」

ナミは頷き、首にさげたポーチを店員に渡した。

「まいどあり!またマスターの子と来てくれよ〜」

それからナミはギルドへ向かった。

「冒険者の子がいない…?」

ナミがひとりで入って来たことに他の冒険者達は驚いていた。

「お待ちしておりま…した?颯斗さんは?」

「颯斗は今体調を崩してしまっていてな。用事はまた次の日でも良いか?」

みんな戸惑っていたが、受付の人は了承した。

「それではまた、お待ちしております!」

そしてナミは宿に戻ってきた。

「あ、おかえりナミ。そういえば、今日の分の宿代渡してこないと…」

「それならいらないと言っていたぞ?それと飲み水だ。店の人間が颯斗によろしく言っておいてくれと言っていたぞ」

僕はナミに抱きしめて「ありがとう…」といった。

「いきなりどうしたんだ?」

「ごめん、嬉しくて…いつもしんどい時は大丈夫な事を装ったりして、周りに迷惑かけたくなくて…綺麗事かもしれないけど、それがきっかけで関係を崩したくないんだ…」

僕は俯いてそういった。

「そうだったのか…でも我の前では装わなくても大丈夫だからな?それとまだ身体を休めた方がいい…」

寝ている時ナミはずっと寄り添っていてくれた。

そして時間が経ち夜になっていた。

「お父さん、1人にしないで…そばに居てよ…」

ナミはうずくまっている僕に優しく引っ付いてくれていた。

「颯斗…なぜ我はこんなに颯斗が懐かしく感じるのだろうか……我もそろそろ寝るか…」

そしてナミも眠りについた。

しばらくして朝を迎えた

「ん…お父さん!…ゆ、夢か…」

「颯斗起きたか?体調は大丈夫なのか?」

ナミは部屋の外に居たみたいだった。

「体調は大分マシにはなったけど…どこか行ってたの?」

「まぁな、準備が出来たら宿の広場に来てくれ」

ナミは急いで広場に向かっていった。

「何だろ?早く準備して向かうか」

そして準備を済ませ広場に向かった。

そこには美味しそうな料理が置いてあった。

「我が作ったんだ!食べてくれ!」

「ナミが作ったの…?この料理は…お粥?」

ナミに聞くとどうやら、僕が寝ている間に宿の主人にキッチンを貸してもらい、僕のために料理を教えてもらい作ったそうだ。

「ナミ、ありがとう!すごく美味しいよ…」

しばらく食べていると涙が溢れ出た。

「颯斗?だ、大丈夫か?」

「あれ…おかしいな、なんでこんなに…」

僕は情緒不安定になって嬉しさと懐かしさ、不安が混ざって涙が止まらなかった。

「どうしたらいいんだろ…不安だし帰りたいけど、ナミとも一緒に居たいな…」

「前にも言っただろ?その事は忘れた方がいい。難しいことずっと考えていても答えは見つからない。それなら難しいことは忘れて今を大切にした方がいい」

ナミは擦り寄って慰めてくれた。

「そうだよね…ごめんね、こんなに心弱い僕で…」

涙を拭って料理を口に運んだ。

僕は徐々に食べ進み完食した。

「ナミ…本当にありがとう…すごく美味しかったよ」

「元気になってくれたならよかった…」

宿の主人にも礼を言い、自室へナミと戻りベッドに横になった。

「今日はいい夢が見れそうだな」

「それはよかった。それと、明日の予定はどうするんだ?」

ナミは首をかしげて聞いた。

「明日か…そろそろ自分の家が欲しいよね…でも、この王国でずっと居れるのかな…明日はとりあえずクエスト受けてお金を貯めよう!ナミはそれでいい?」

「あぁ、構わない」

そんな会話をしばらくしていると僕とナミは眠りに落ちていた。


現在のステータス

名前:宇積 颯斗

年齢:16歳

スキル:メゲトス、コルセラピア

全体レベル:7

魔法適正:風、植物、天気

契約魔獣:ウロボロス


あとがき

第Ⅴ章を最後まで読んでいただきありがとうございました!

今回の設定紹介は宿の主人です!

昔は冒険者をやっていたのですが宿の主人の妻が病気で倒れてしまい、妻が営んでいた宿を主人が受け継いで今に至ります。

颯斗を看病しているナミの姿を見ると自分を見ているようで助けてあげたくなりナミに色々教えてくれたそうなんです!

家族の愛、絆って大切ですよね…

今回はここまでにします!

それでは次回第Ⅵ章を楽しみにして頂けると幸いです!ありがとうございました!

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