第2話 存在
先ほど思案していたところから離れ、俺は今駅のホームに忍び込んでいた。
なにぶん田舎のホームのため監視カメラもなくスッと入ることができた。
電灯が少しだけ照らすホームに登らずそのまま線路沿いを歩くこと一時間、
時計は4時25分を指す。
少し都会に近づいてきて、線路からでも遠くに光が見えてきた。
防犯カメラが付いてるところに出る前に早めにフェンスを乗り越えて街に歩を進める。
顔がバレて無い内に遠くに移動することに決めた俺は5時までに靴を買い親父の靴を処分した。
始発に間に合うように鉄道に乗り込みホーム側から追手が来てないか逐一確認しながら海沿いの小さな町を目指す。
神経をすり減らす事四時間、乗り継ぎを何回も繰り返し計画通り相当遠くまで来たようだ。
精神をすり減らした俺は影の下にある海辺のベンチで座り込んで一時的な休憩に入っていた。
「ねぇそこの君〜?」
背筋が跳ね上がる、若い男性の声だ。
「ん?そっち誰かいるのか?」
続いて中年男性の声がし、そちらに目を向けると警察官が2人、タッグを組んでいるのか一目見ただけである程度仲がいいことが分かる。
「おにーさん大荷物ですねぇ」
若い警察官がにこやかに話しかけてくる
「あ、はい、ここらでゆっくり休もうかなぁなんて」
「あ〜そうなんですね!...ちょっと申し訳ないんですけどお仕事って何されてます?」
職務質問かよ、最悪だ。いや、フードを被り続けていたのが悪かったか。
「ニートです」
「あ〜そうなんですねぇ、失礼ですが、ご家族と喧嘩されて家出みたいな感じですかね?」
「と言うよりは外の世界の厳しさを知ってこいと叩き出されてしまいまして」
「成程、では身分を証明出来るものってなにかお持ちですか?」
「いや、急いで荷物を詰めたので入れ忘れてしまいました。」
「ご自分で詰めたんですか?」
「早く外に出ないと殺される勢いだったので仕方なく...」
「そうでしたか...では最後に手荷物だけチェックさせてもらっ……でも?あれ?」
「?どうしました?」
「え、え?ど、さっきのおにーさんどこ行きましたか?先輩」
途端に俺が見えなくなったように辺りをキョロキョロと見回し助けを求める若手警察官
「まさか」
俺は若い男の警察官の胸を軽く叩いた、
「?なんか痒いな」
俺が手を引っ込めたあとポリポリと胸を掻く目の前の警察官
「は、ははは」
力が抜け荷物も置いてふらつきながらその場を後にする、
警察官は目の前から俺が居なくなったのに今なお必死に俺を探してる。
とうとう人に認識もされなくなった。
「どうすりゃいいんだろ、俺」
もう俺は、ただ海を見ながらそうつぶやくしかないメンタルだった。
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