第8話 嫉妬とシャンプーの匂い
軽く登場人物まとめ
高宮太陽:本作の主人公
橋岡凛 :本作のメインヒロイン
高宮好葉:太陽の妹
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じゃ、じゃあ私も泊まる!」
「「え?」」
―――――――
「泊まるって何言ってんだよ…」
「べ、別に良いじゃん親友なんだし!」
凛は無自覚ではあるが、好葉に嫉妬している。もちろん太陽との関係はただの血の繋がった兄妹。二人が仲良いのは自然な事である。
だが、それでも凛は太陽の家に同世代の女の子が泊まる、というだけで謎の不安感を抱いてしまっている。何かがあるはずでもないのに。
親友という形から入ったとはいえ、凛は太陽に自分のことを好きになってもらいたいと思っている。それ故に、凛から見れば兄妹とはいえ二人の距離感がカップルに見えてしまっている。
「おにい、泊めてあげなよ。夜遅い中彼女を帰らせるの?」
「だから彼女じゃない!それに橋岡さん、隣のマンションでしょ?」
「料理作ってあげたんだよ?」
「それはありがたいけど…」
「家の中の荷物を一緒に整理してあげたのは誰かなあ?」
そこまで言われると太陽も流石に言い返せない。そこで好葉が畳み掛けるように「凛さんともっとお話ししたいなー」と言ってくるもんだから、太陽は言い返すことをやめた。
「じゃあ、橋岡さんは好葉と一緒に俺の部屋で寝てくださいね」
「やったあ」
「あ、寝巻きはおにいの借りるから」
「じゃあ私も高宮くんの借りるね」
「えぇ…」
妹ならまだしも、橋岡は同級生の女の子だ。太陽はまだ女の子に慣れていない分、そういうのはカップルがする事だと思い込んでいた。
「とりあえず…食器の片付けとかはやっておくんで二人は先にお風呂にでも入ってください」
「おにい、そうやって女二人の裸体でも覗く気?」
好葉はニヤリと笑いながら太陽をからかう。
「の、覗くわけないだろ!バカなこと言ってないで早く入ってきてくれ!」
「高宮くん、もしかして興味あるの?」
兄妹のやり取りが面白いと思ったのか、凛まで太陽のことをからかう。
「なっ、ないから!」
顔を赤らめた太陽は二人分の寝巻きを用意するため、自室へ向かった。
―――――――
「高宮くん、上がったよー」
凛と好葉が風呂から上がり、太陽の寝巻きを着ながらそう呼びかけた。
「俺の部屋のベッドを好葉と一緒に使っておいて」
「うん。ありがとうね、無理言って泊めてもらっちゃって」
「まあ好葉も仲良くなりたいって言ってたし、二人とも仲良くしてね」
「言われなくたって好葉ちゃんとはすでに仲良いよっ」
「えへへ、凛さん大好き」
凛と好葉は抱き合っていちゃつき始めた。
(いや、そんなことより…)
好葉はまだしも、同級生である凛が寝巻きの姿でいるのは、思春期男子の太陽から見れば新鮮な姿だ。それも、自分の寝巻きを着ているのだ。
太陽は凛の新鮮な姿を、ついまじまじと見ている。
「ん、高宮くん、どうしたの?」
「あ、いやなんでもないよ」
(言えるわけない、今日は同じシャンプーを使っているはずなのに、いつも以上に女の子らしい良い匂いだと感じてしまうなんて)
太陽は自嘲した。心の中とはいえ、自分が気持ち悪いことを考えているのではないかと。
「じゃあ、二人ともお休み」
凛と好葉を部屋に見送った太陽はソファに横たわり、眠りについた。
―――――――
「ねえ凛さん、少し女子会っぽいことしない?」
「女子会っぽいこと?」
「例えば恋バナとかさ」
「っ…!?」
凛は分かりやすく赤面する。最近は太陽を少しからかうようになってきたものの、いざ本人が隣の空間にいる状態で恋バナを始めるのはやはり恥ずかしいらしい。
「えっと、じゃあ好葉ちゃんの好きな人-」
「それより凛さんは、おにいのどこを好きになったの?」
好葉はいたずらっ子のような笑みを浮かべながらそう聞いた。
「えっ、えっと…」
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