第5話 安全保障会議

西暦2023(令和5)年9月2日 日本国東京都 首相官邸


「現在、我が国を取り巻く安全保障環境は非常に悪化の一途を辿っております」


 日本政府の情報機関である内閣情報調査室サイロのトップ、高木たかぎ室長は、川田首相ら内閣及び統合幕僚監部の面々に対して説明を行う。


「まず中国は海軍戦力の増強に力を入れており、尖閣諸島危機の時点で001型空母2隻と011型巡洋艦2隻、052C型駆逐艦6隻を配備。ある程度の近代的な空母機動部隊を有していました。しかし現在は違います」


 冷戦終結直後、ロシアから莫大な天然資源とともに獲得した軍事技術と、連邦共和国時代のムレアより得た西側技術によって急成長した中国は、2000年代に入って海軍戦力の急成長に注力していた。グズネツォフ級空母をベースにした001型航空母艦、スラヴァ級ミサイル巡洋艦を参考にした011型ミサイル巡洋艦、『中華イージス』の渾名を持つ052C型駆逐艦。それらが2010年代における中国海軍の主力であった。


 そして現在はさらに拡大している。ウリヤノフスク級を参考に設計を洗練させた002型航空母艦。原子力機関を搭載し、優秀な最新兵器を満載した012型ミサイル巡洋艦。国産の対空ミサイルシステムを装備した各級国産駆逐艦・フリゲート艦。空母機動部隊との行動を前提に設計された095型原子力潜水艦。それら西側諸国に比肩する戦闘艦艇が多数開発・建造されていた。


「現時点で中国海軍の主力戦闘艦艇は、空母3隻、巡洋艦5隻、駆逐艦48隻、フリゲート艦48隻、コルベット艦72隻、潜水艦72隻、揚陸艦63隻です。これは台湾と先島諸島への二方面作戦を行うには十分すぎる戦力です」


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