第2話 別れ
始まりは、終わりの始まり。
とある映画のフレーズが、やけに心に響いた。
学生時代から付き合っていた彼とは長くて、別れる前の数年間、結婚の話は随分した。
彼は転勤族で将来も全国を転々とするライフスタイルの予定だった。
結婚するなら、私がついていくことが前提だった。彼すごく優しく家族想いだったから、単身赴任で良いよ、と言ってくれたけど本心ではないと感じた。
そのことで、中々結婚の話が進まなかった。
私はやっとの思いで、一級建築士に合格してこれから仕事をもっと頑張りたいと思っていた。
お互いの求めるもの、大切にしたいことのタイミングがずれちゃったんだろうな、と思う。
お別れは、私から言った。
ひたすらに苦しかった。
こんなにも大切に私へ愛を注いでくれたのに、私は、罪悪感さえあった。
別れてからは、しばらく心がぽっかりしていた。
当時の私は20代後半で、日々の仕事に忙しくしながら、デザインに関わる仕事がしたいという子供の頃の想いが再び、芽生えはじめていた。
お金を払ってコーチングを受け、自分の将来に真剣に向き合うようになり、次のステップを視野に入れ始めた頃だ。
今、結婚したら、すぐに転職は中々難しいと思った。
今、家庭に入って後悔しないのか?
私はどうしたいの?
せっかく資格とったのに?
散々悩んで、答えは、挑戦したい、だった。
今から思えば、今の時代必ずしも場所が決まった働き方ばかりじゃないし、いくらでも選択肢はあっただろう。
でも、身近にノマドワーカー的な働き方を実際にしていた方がいなかったこともあり、
私はデザインの最先端が集まる東京で、活躍したかった。
改めて思う。
私はなぜ、そんなに仕事にこだわる?
気がつけば頑張り続けた20代。
高校卒業後、浪人してもなお、志望校に落ちた不器用な私。
悔しくて、勉強を頑張り、首席で卒業。
入社後は、男社会の建設会社で、仕事至上主義で頑張ってきた。
真面目に業務を淡々とこなし、休日は資格勉強に励む。
鏡に映った疲れた自分を見て、頑張る先に本当の幸せがあるのかわからなくなった。
凄いね、と言われたいからか?
自信のなさを埋めるため?
いや、こんな風になってしまったのは、
安定とかお金を優先して
本当に心からやりたいことを
やっていないからだ。
本音を押し殺し、自分を大切にできてなかったからだ。
それが私の仮説だった。
使命、天職を仕事にすれば、頑張るレースではなく軽やかに価値貢献して、幸せに経済的にも豊かになる世界があるという世界観を、信じたかった。
このままでおわりたくない。
彼との別れを決して無駄にしたくない。
そんなハングリー精神をガソリンに、
自分の天職を探す心の旅は始まったのだ。
30歳。彼なし、転職活動中。 @ishiko_aiai
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