第40話 アップルパイと志望校

 お茶とアップルパイを楽しみながら、おしゃべりをする。


「すずか、この間の塾、なんか私がぶち壊しにして、ごめんね」

「ううん、そんなことないよ。私もね、理解できなくても解ければいい、みたいな考え方は嫌い」

「それって、コウイチの影響?」

「そうだと思う」


 すずかを教えたのは結構以前のことだが、こういう影響が残っているのは嬉しい。

 

「ももかさ、医学部志望はいいとして、志望校どうしてるの?」

「うん、ちょっとむずかしいんだけど、市立大学」

「なんで?」

「私立だと、億近く学費がかかっちゃう。国立は難しい。市立なら少しは易しいけど、学費は国立と同じだから」

「なるほどね、考えてるんだ」

「うん、まあね」

『コウイチの入れ知恵だけどね』


「すずかはどうするの?」

「うーん、わかんない。でも、看護とかもいいかもしれない」

「そうか、一緒の病院で働いたりして」

「うん、それいい!」


 なんかモチベーション上がったな。

 

「なに盛り上がってるの?」

 すずかのお母さんが、紅茶のおかわりをポットに入れて持ってきてくれた。

「ママ、ありがと。ちょうど飲み終わったところだった」

「そう? それはよかった」

「ママ、アップルパイ、食べた?」

「いただいたわ、とっても美味しかったって、お母さんにも伝えてね」

「はい、伝えます」

「ママ、あったかいアップルパイにね、バニラアイスのっけると美味しいんだって」

「なにそれ、早く言ってよ。それなら買ってきたのに。で、何の話してたの?」

「志望校」

「ももかちゃん、医学部目指すんだってね」

「はい、入院中、いっぱいお世話になりましたから」

「えらいね。それにくらべてすずかは……」

「私もね、看護師目指そうかなって、考えてる」

「看護も大変よ。大丈夫?」

「うん、がんばる」

「失礼だけど、ももかちゃん、体力つけないとね」

「はい、臨床が無理そうだったら、病理でもいいんです」

「しっかり考えているのね。じゃ、体力つけるためにバニラアイス買ってこようか?」

「ママ、それ筋肉じゃなくて脂肪になっちゃう!」

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