第39話 すずかのお家

 塾の体験をした翌日、すずかのお家に呼ばれた。すずかの家の近くの駅まで、電車に乗る。駅まですずかは迎えに来てくれるそうだ。伯母さんがアップルパイを焼いて、おみやげとして持たせてくれた。


 伯母さんのアップルパイ、うまいよな。

『焼き立てだと、最高なんだけどね』

 オーブンで温めなおすてもあるぞ。

『やってくれるかな?』

 どうだろう。あと、熱いアップルパイにバニラアイスをのっけて食べると、これもうまい。

『なにそれ、太りそう』

 まちがいない。

 

 駅について改札を出ると、すずかが待っていた。手を振る。今日は自宅だからか、グレーのパーカー、スウェットパンツだ。髪をまとめるリボンが赤系のチェックでかわいい。

 

「ももか、いらっしゃい。荷物多いね」

「教科書と、おみやげ!」

「え、おみやげ、何?」

「ママがアップルパイ焼いてくれたんだ」

「美味しそう」

 いきなりの好評でよかった。

 

 すずかの家は、駅から歩いて十分くらいのところにあるマンションだ。四階なのでエレベーターであがらなければ行けないのが不便だが、窓から富士山が見える。

「すずか、今日、富士山見える?」

「うん、見えたよ」

「わーい、楽しみ!」

 歩きながら話す。

 

 玄関のドアを開け、中に入る。ももかは何回も来たことがあるので、

「おじゃましまーす」

と言って、遠慮せず上がる。

「ももかちゃん、いらっしゃい」

 すずかのお母さんが迎えてくれた。

「これ、ママが焼いたの。あたためると美味しいんですけど、そのままでも美味しいよ」

「な~に?」

「アップルパイ」

 すずかのお母さんは受け取って、早速包を開ける。

「あら、いいにおい! オーブンであたためて、持って行ってあげるね」

「おばさんもぜひ、食べてください」

「もちろん、いただくわ」


 すずかの部屋へ行く。窓からはやっぱり富士山が見える。

「すずか、いつ見ても思うけど、うらやましい」

「うん、わたしの自慢!」


 すずかが言い出した。

「ももか、ももかはももかで、どんどん勉強して。私も私で勉強する。わからないことがあったら、質問する」

「すずか、どうしたの?」

「最近ね、ももかに教えてもらってばっかりで、ももかの勉強のブレーキになってる気がする。ももかは自分の勉強を優先して」

「私は全然、気にしてないけど」


 ももか、ももかが気にしてなくても、すずかが気にしてるんだよ。すずかもそのほうが、気が楽なんだよ。


「わかった。気になることがあったら、遠慮しないでね」

「大丈夫、遠慮しない」


 やっぱりすずかはいい子だ。

 

 この間塾で勉強した数列の勉強の続きをやる。しばらくしたら、すずかが聞いてきた。

「ももか、ここの計算自信がないんだけど、あってるかな」

「うん、あってるよ」

「ありがと」

 そんなふうに繰り返していると、ドアがノックされた。

「アップルパイだ!」

 すずかがドアへ飛んでいった。

 すずかのお母さんがトレーにアップルパイと紅茶をのせていた。すずかが受け取って、こっちへ持ってきた。

「ちょっと休憩もしてね。わたしは向こうでいただくわ」

 すずかのお母さんはそう言って戻っていった。

 

「ももかのママのアップルパイ、ほんと美味しいね」

「冷たいより、絶対美味しいでしょ」

「うん」

「紅茶とよく合うね」

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