第34話 テストが近い
3月になった。だんだん体力がついてきたし、病院の藤沢先生も健康体だと言ってくれた。すずかと綾は、朝の通学につきあってくれるが、最近は足が早くなって教室に着くのが早くなってきていた。その分、三人で勉強する時間が長くとれる。綾は朝練があるときは朝練に行っていたのだが、学年末テストが近いので朝練は無い。
教室に着くと、綾がさっそく聞いてきた。
「順列とか組合せとか、よくわかんない」
すずかは、
「公式覚えればいいんじゃないの?」
と言った。それに対し綾は、
「公式も覚えにくいし、なにがなんだかわかんないんだよ」
と、半泣きである。すずかは冷たく、
「綾、文系でしょう? 単位さえ取れればいいんじゃない?」
と言った。
すずかは、評定について理解していないな。
『評定って成績のことでしょ』
そうなんだが、綾は推薦で大学行きたいんだろう。スポーツ推薦じゃない場合、高1から高3まで、勉強したすべての科目の成績の平均できまるんだ。
『それって、ある科目捨てるとやばいってこと』
その通り、綾は知ってるみたいだけど、すずかはそれ知らないか忘れてる。
ももかが発言する。
「綾、大学、推薦狙い?」
「そうなんだよ」
「だったら、高1から高3まで、全部の科目の平均で勝負になるね」
すずかが驚いた。
「そうなの?」
綾は、
「そうなんだよ。数学壊滅すると、響くんだよ。ほかも自信ないし」
と、それこそ泣きそうである。
「そうか、がんばんなきゃね」
すずかは事態を理解できたようだ。
「じゃ、順列から教えてあげる」
ももかは、綾の前に教科書をひろげた。
おい、綾のタイプは、具体例で押して行った方がいいぞ。抽象的なのは苦手だろう。
「あのね、1、2、3、4の数字が書いてあるカードが一枚ずつあるとするでしょ……」
ももかは、早速、超具体的に説明を始めた。
しばらく説明してももかはしめくくった。
「だからこの場合は24通り」
綾は
「そうか、よくわかった」
と、納得してくれた。
「公式を覚えるのもいいけれど、意味がわかってしまえば大丈夫だよ」
と、ももかは笑顔で綾に言った。
放課後も三人で勉強する。朝の勉強は時間が短かったので、数学をまだやることにした。朝は順列を勉強したので、引き続き組み合わせ、確率とすすめる。なんとなくだが、ももかが教え、すずかと綾がそれを聞く感じになった。
気がついたら5時を回っていた。
「ももか、いっぱい教えてくれてありがとう。テスト、どうにかなる気がしてきた」
綾に感謝された。
「わたしも、暗記でごまかしてたところがよくわかった。ほんと、ありがと」
すずかにも感謝される。
「わたしはね、自分の知識が整理されて、やっぱり勉強になった。ふたりともありがと」
実際、ももか教えるの上手になったよ。
『そう? ありがと』
家にかえると、めずらしく伯父さんが帰宅していた。
「ももか、塾行くか?」
いきなりそう聞いてきた。
「なんで?」
「ももか、ここのところ勉強がんばっているだろう。それだけがんばるなら、塾の力を借りて、効率よく学習するのもいいんじゃないか?」
「考えてみる」
「テスト後になっちゃうんだけどさ、体験学習予約しといたぞ」
「え、どこ?」
「駅前の個別指導」
「うん、わかった」
ももかは自室に行く。
『コウイチ、はっきり言って余計なお世話よ。コウイチいるんだもん、いらないよ』
実際問題としてはいらないと俺も思う。だけど、伯父さんの気遣いも考えてやれよ。
『そうか、私のために、だもんね』
そうそう。
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