第31話 お勉強会(午前)

 翌日の登校は、綾に加えてすずかも来てくれた。

「ふたりともありがと」

 すずかが荷物を持ってくれ、綾はももかの体を後ろから押してくれる。

「気にしないでよ。また勉強教えてよ」

 すずかが言うのでももかは、

「もちろん、いいよ」

と答えた。綾は、

「今度の日曜、ももかのうち行っていい?」

と言ってくる。

「もちろんいいけど、部活は?」

「大丈夫、当分日曜は無い。学年末近いしね」

「そうなんだ」

「私も行っていいよね?」

 すずかも来たいそうだ。

「うん、いいよ、勉強しよ!」


 日曜朝十時。すずかと綾がそろってやってきた。

「すずかちゃん、あやちゃん、いらっしゃい!」

「「こんにちは! おじゃましまーす」」


 ももかの部屋にふたりとも来てもらって、早速勉強を始める。

「ね、やばい順に勉強しよ!」

 綾が提案する。綾は嫌いな食べ物は先に飲んじゃうタイプだろうか?

 

「綾、もしかして嫌いな食べ物があったら、それから食べちゃうタイプ?」

 俺が思った通りのことをももかが聞いた。

「うん、よくわかったね」


 というわけで、数学の勉強から始める。

「試験範囲は、三角比からだね」

 すずかが言った。

「私、三角比、ぜんぜんわかんない」

 綾が言う。

「ももか、冬、私に教えてくれたじゃん、綾に教えてあげてよ」

 すずかの提案で、ももかは綾に基礎から丁寧に教えていく。

 

 ももか、図はもっと大きい方がいいぞ。

『そうなの?』

 小さいと、書き加えるときにごちゃごちゃになりやすい。最初から大きめに書いたほうがいい。

「ちょっと図がちいさいわ。書き直す」

 ももかは早速書き直そうとする。

 

 ああ、三角形は直角二等辺三角形みたいにかいちゃだめだ。片方の角は小さく、もう片方が大きく書いたほうがいい。そのほうが、サインとコサインの見分けが付きやすい。

『了解』


 そうやって基本から丁寧に説明していった。小一時間ほど説明して、問題を解いて、とやっていたら、綾が音をあげた。

「ももか、よくわかったけど、ごめん。疲れた」

「うん、休憩しよ。ちょっと待ってて」


 ももかは部屋を出て、台所へ向かう。

「ママ、お茶となんかお菓子ない?」

「もう休憩? 早いんじゃない?」

「数学やってたから、しかたないよ」

「それもそうね」

 伯母さんは、チョコレートと紅茶を用意してくれた。

「お昼近いから、少なめにしたわ」

「ママ、ありがと」

「お昼は、十二時半くらいにできるようにするわ」

「うん、ありがと」


 部屋に戻る。

「おまたせ。お昼ごはんが近いから、お菓子少なめね」

「そっか~」

 すずかが残念そうである。綾もそんな顔をしている。

「お昼十二時半だって。それまでがんばろ」


 次、綾の好きな科目にしてあげてもいいぞ。

『そうなの?』

 一番ヤなやつをまずやったんだ。気分良く勉強してもいいだろ?

 

「綾、次、何やる? 綾、現文好きだよね?」

「うん、でも現文は、テスト中に考えれば大丈夫じゃない?」


 だめだ、現文は、授業のノート覚えとかないと点取れないぞ。

 

「ね、ノート復習しようよ。テスト、きっとそのほうがテスト楽だよ。私、授業出てないとこあるし」

 ももかが提案して、教科書とノートを突き合わせながら復習する。


 意味が少しでも曖昧な言葉は、辞書引いといたほうがいいぞ。


 ももかが率先して、辞書をひいて、意味をノートに書き取っていく。

「そっか、結構わたし、言葉の意味、曖昧だった」

 すずかが感心して言う。

「言葉って、読めると意味がわかった気がしちゃうんだね」

 綾もわかってくれたようだ。

 

「みんなー、お昼出来たわよ」

「「「はーい」」」

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