第25話 学校へ行きたい

 カワセミにももかは元気をもらったようだ。体育の授業中か授業後に、毎日公園へ行く。公園のおじさんたちとも仲良くなって、おじさんたちの撮った野鳥の写真も見せてもらうようになった。おじさんたちは、近所の定年退職後の人たちで、持て余した時間を野鳥の撮影に費やしているらしい。退職金をつぎ込んだのか、立派な写真機材を自転車に積んで公園まで通ってきているそうだ。

 

 ある日、おじさんに言われた。

「今日は、この時間なんだね」

「うん、今体育の授業中」

 そう答えると、おじさんは不思議そうな顔をした。だから説明する。

「私、去年長いこと入院してたの。でね、学校に通う体力が無くなっちゃったから、家でオンライン授業してるんだけど、体育の時間は体力づくりに散歩してるの」

「そうなんだ、大変だね」

「うん、早く学校に行きたいんだけど、なかなか体力つかなくて」

「がんばってね」

「ありがとう、がんばる」


 2週間ほど公園通いをつづけたら、歩くスピードが上がってきた。


 ももか、よくがんばったな。

『そろそろ学校行けるかな』

 田嶋先生と相談しよう。

『うん』


 その日のホームルーム後、ももかはインターネット経由で田嶋先生に聞いてみた。

「先生、私、少しは体力がついてきたと思うんです。来週あたりから、半日だけでも登校しようかと思うんですけど」

 田嶋先生は、ちょっと考えて返事してきた。

「ももかちゃん、やる気になってるところ悪いんだけど、まだ学校に戻って来ないほうがいいと思う」

「え、」

 ももかはショックだったのか、いきなり目に涙が溢れてきてしまった。

 

 ももか、インフルエンザが流行しているんじゃないか?

『そうか』


「先生、もしかしてインフルエンザですか?」

「そうよ。クラスでもぼちぼち休んでいる人が出てるの。体力がもどりつつあるももかちゃんがかかっちゃったら、大変よ」

「そうですね。でも出席日数は?」

「大丈夫。三学期はリモート授業で、ほとんど出てることになってるよ」

「じゃあ、進級は?」

「このままだったら、大丈夫だよ。こないだ計算してみた」

「ありがとうございます」

「これから受験のシーズンでしょ。2月の半ばまではお家で勉強しといたほうがいいと思う」

「わかりました」


『みんなに会えないのは寂しいけれど、しかたないね』

 ま、ネットで会えるじゃん。

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