第23話 体力づくり

「パパ、バス停まで一緒に行く」

 翌朝ももかは、出勤する伯父さんと一緒にバス停まで行くことにした。もちろん体力づくりの散歩のためである。

「寒いけど、大丈夫か?」

「うん、いずれは学校行かなきゃいけないし、少しでも歩く」

「そうか、じゃあ行こうか」


 バス停までは大した距離ではないが、出勤だけに伯父さんの足は速い。ももかはちょとずつ遅れてしまう。伯父さんは振り返って、

「ごめん、ゆっくり歩くよ」

と言ってくれたが、

「パパ、遅れちゃいけないから、パパのペースで歩いて。あとからついていくから」

と、ももかは返事した。

「うん」

と言って伯父さんは足を速くするが、後ろを気にしてときどき振り返る。

 ももかはその度笑顔で手を振る。


 伯父さんがバス停について、ちょっと遅れてももかもバス停にたどり着いた。

 ちょっと息が荒い。

「ももか、がんばったな」

「うん、でも、まだまだだね」

「無理はするなよ。もう帰っていいぞ」

「えー、パパがバスに乗るまでいる」

「寒いぞ」

「歩いたから寒くない」

「そうか」

 伯父さんは嬉しそうでもあり、心配そうでもある。


 バスがやって来た。

「パパ、行ってらっしゃい」

「行ってくる。ももか、無理するなよ」

「うん」

 

 伯父さんは、行ってしまった。


 ももか、ゆっくり帰るぞ。

『そうなの?』

 無理しちゃダメだ。授業出れなくなるぞ。

『わかった、でも、少し遠回りして帰っちゃダメかな。まだ時間あるし』

 ダメだ。帰って勉強した方がいい。

『体力優先じゃないの?』

 そうなんだが、安全第一だ。今日はまず、帰る。大丈夫だったら明日は遠回りしていい。

『了解』

 夕方余裕があったら、散歩すればいいさ。

『そうする』


 朝の優しい光に、冬枯れの木が光る。見上げれば空は青い。気持ちがいい。

『外に出てよかった』


 家に帰って勉強机にすわり、昨日できなかった勉強をする。時間がないので教科書を読むだけだ。ホームルームの時間が近づいたので、今日もパソコンの電源を入れ、ログインする。

 またも綾のドアップが映って笑ってしまう。

「昨日病院どうだった?」

 綾が聞いてきた。

「うん、とくに問題なかった。でね、とにかく体力つけろって」

「そうなんだ、私、鍛えてあげようか?」

「そんなことになったら、私死んじゃう」

「ハハハハハ」

 すずかもやってきた。

「もう、綾、ももか殺さないでよね!」

「ハハハハハ」

「はーい、ホームルーム始めまーす!」

 田嶋先生が登場し、学校の一日が始まった。

 

 お昼になった。先日と同じように、昼食はももかの部屋に持ってきて、パソコン越しにみんなと食べる。食べ終わるとそのままおしゃべりがふつうなのだが、ももかはみんなに言った。

「わたし、体力作りしなきゃいけないから、ちょっとお散歩に出てくる」

「そうなの、ざんねーん」

 すずかが言う。

「私もね、ホントはおしゃべりしてたいんだけど、今日体育の時間無いし」

「そうだね、がんばってね」

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