第2話 俺の遺品を確保する

 マジですか。俺がももかの体内に転生しちゃったの?

 ももかが手を動かし、手鏡を見せる。

『ほら』

 美少女が鏡に写っている。

『美少女とかやめてよ』

 俺の考えることはすべてももかに伝わってしまうらしい。

『そうだよ、エッチなことやめてよね』

 はいはいわかりました。

 

 午後になって、今日もすずかがやってきた。表情が硬い。

 ベッド横に椅子を持ってきて座ったが、全く口を開かない。

「すずか」

 ももかが語りかけた。

「うん」

「コウイチのことでしょ」

「…………」

「私知ってるよ。死んじゃったんでしょ」

 すずかはボロボロと大粒の涙をこぼし始めた。

 

 黒髪ロング、色白のすずかが、泣いている。美しい。俺は見とれてしまった。

「ごめんね、ももかがコウイチせんせい好きだって知ってたのに」

 俺は初耳である。そう思ってもももかの意識からの返事はない。

「ごめんね、ごめんね」


 美少女が、友人のすずか、そして俺のために泣いてくれている。そう思ったら、口に出てしまった。

 「ええこやのー」

 

 すずかは大声を上げて泣き始めた。

 

 30分ほど泣いて、すずかは帰っていった。

 

 今度は伯父伯母(ももか父母)が厳しい表情でやってきた。

「ももか、落ち着いて聞いてね」

 伯母が説明を始める。

「コウイチがね、今朝なくなったの。神社で発見されたって」

「そう」

 すでに知っている俺たちは冷静である。

「いままで、警察にいたの。所持金が0円だったって。でもね、リストラもされてたらしいのよ。だから警察では、事件・事故・自殺3つの線でしらべてるんだって」

 あらららら、えらいことになっとるな。

「コウイチは自殺はしないと思うよ」

 俺は意識をのっとって言ってみる。

「でもリストラだって」

 どう言えばいいのか。しかたなく言ってみる。

「自殺するタイプじゃないと思うよ」

「でもリストラだよ」

 リストラはそんなに大きいことだったのか。俺はももかのほうが心配だ。

『ありがとう』

 ももかが言ってくれた。

 

 動揺する叔父叔母の前で、俺は思い出すことがあった。PCとフィギュアである。

 

 俺は歌声合成ソフト「初聲クミ」ファンである。もちろんPCにはソフトがインストール済みだし、フィギュアがたくさん部屋にある。これを処分されてはたまらない。

 心の声で、ももかに語りかける。

 ももか、おまえ音楽得意だろう。

『うん』

 おれのPC「初聲クミ」インストールされてるぞ。

『おお』

 お前にやる。楽器もやる。

『ラッキー』

 だから、なんとか確保しろ。

『へ?』

 だめだ、俺がしゃべる。

 

「パパ、私、コウイチの遺品欲しい」

「は?」

「コウイチおじさんのこと大好きなの、パパ、知ってるでしょ」

「うん」

「おねがい」

 こんなとき父親は、病弱な娘に弱い。

「わかった、なんとかする」


 よっしゃ。

『コウイチ、ずるいね』

 うるさい、俺の人生で残したものだ

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