第2話 新世界から異世界へ

 ここは大阪、新世界。だったはず。だけど、なんだここは。辺りは真っ白。俺は、確か、今日も俺の店の『串カツ 久留間』へと向かう途中だった。ああ、そうだ。あの時、酔っ払いに肩が当たって突き飛ばされたんだっけ。それで倒れたんだ。当たり所が悪くって、頭が凄く痛くって。どくどくしたものが流れて来たんだ。ああ、そうか俺は死んだのか。そう思ったらこの白い部屋だ。しかし、何も無いな。死ぬってこういうことなのか。

「ぴろーん。わたし女神。久留間達三さん。世界の狭間へようこそ。」

とんでもなく綺麗な女が話かけてきたな。

「やあ、女神さん。死んだ俺を慰めに来てくれたのかい」

「違うわよ、あなたまだ死んでないもの」

「はあ、死んでないっていうのに女神に会えるものか」

「いえ、会えるのよ。だって死にそうだった所を私が連れてきたんだもの」

「なぜ」

「なぜって、決まってるじゃない。あなた、あの新世界で超有名な串カツ屋さんの店主でしょ」

「有名かどうかは知らんが、まあ繁盛店だったな」

「そうそう、私、ずっとあなたの串カツを食べたかったんだ。それであなたを頻繁に眺めていたの。そしたら死にそうだったじゃない。だから、あなたを連れてきちゃった。これからは、わたしのために串カツを揚げてね」

「よく分らんが、俺の串カツを食いたい奴がいるならば、女神だって天使だって、悪魔だって食わしてやるよ」

「わあー、やったー。でも残念。わたしあなたの串カツを食べれないんだ」

「どういうことだい」

「見ての通り、ここには何もないの。材料も揚げる道具も何もないの。わたしはここで只々、空から眺める事しか出来ないんだ。女神の祭壇で串カツを揚げてくれるならば食べることが出来るのだけど」

「はあ、女神の祭壇ってのはどこだ」

「女神の祭壇はね、わたしが昔に創造した世界の何処かにあるんだ。詳しいことは忘れちゃったから、祭壇は探さなくちゃいけないんだけど、わたしはその女神の祭壇でならば、世界に降り立つことが出来るんだ。そこでご飯も食べられるの。でもね、あなたが居たところとは違う世界よ。剣と魔法の世界で名前は『ビリケ』って言う世界なんだから」

「ならば、俺をその世界に連れていってくれ。俺がその女神の祭壇を探して、お前を呼んでやるよ。べっぴんさんの女神様にいっちょ旨い串カツを食わしてやる」

「へえー、かっこいいわね。ありがとう。楽しみにしているわ。達三さん」

「ああ、待ってろよ、女神さん」

「女神ってのは私の役職名で本当はララっていうの」

「そうか、ララ。いつかお前に旨い串カツを食わしてやるからな」

「うん、達三さん。じゃあ、あなたをわたしが作った『ビリケ』に送るわね。女神の祭壇を探して必ず美味しい串カツを食べさせてよ。ああ、そうだ、あなたに役立つようにスキルをうんとプレゼントするわ。確かあなたは今は、『揚げ職人』のスキルがあるわね。わたしからのプレゼントで『炎の加護』『水の加護』『剣の加護』、特殊スキル『取り寄せ』、特殊スキル『鍛冶師』をあげるわ。わたしの世界でうーんと頑張ってね。達三さん」

「あいよ、おおきに」

「じゃあー、いってらっしゃーい」


――ってな感じで女神にこの世界に飛ばされた俺は、ある宿屋で目覚めた。服や体はあの新世界にいた頃のまま。違うと言えば、辺りはやけに中世ヨーロッパみたいな雰囲気ってことだけだ。いずれにしろ、俺がやることは、今までと変わらない。ただ揚げて、揚げて揚げまくる。そして、いつかララのために旨い串カツを揚げてやるんだ。まってろよ、ララ。
















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