第3話 宿屋のおかみ
宿屋で目覚めた俺は、今までにいた世界とは明らかに違う辺りの様子に少しだけ驚いた。古臭い木の作りの壁に軋みがひどい床と粗末なベットだ。まあ、新世界で狭い賃貸を借りて店をやっていた時とそれ程変わらないな。俺は直ぐにそう思うとベットから起きた。服装は新世界で厨房に立っていたころに来ていた店の制服だ。白の無地に白いズボンと清潔感溢れる装いで白の帽子まで用意されている。ふん、ララの奴、俺を見ていたというのは本当だったんだな。服装を丁寧に再現している。これはやるしかないな。さて、どうしようか。まあ、とりあえず、この部屋から出るか。
俺は部屋を出た。出た先は長細い廊下となっていた。如何にも安宿という感じがする。どうやらここは二階の様だな。そこに見える階段を降りるとするか。
俺は一歩ずつ下に降りた。一階には太った女性がいた。
「おや、起きたのかい。あんた、昨晩、この宿の前で倒れていたんだよ。歩けるようになって良かったよ」
ほほう、俺はこの宿に救われたという訳か。
「私はこの宿のおかみのレイザ。あんたは名前はなんていうんだい」
おかみがそう聞いてきた。
「俺は串カツ屋だ。それでいい」
「へーえ。へんな名前ね。へんな格好だし。串カツ屋」
「助けてくれてありがとう。しばらくここにいていいかい」
「いいけど、お金はあるのかい」
「いや、ねえ」
「お金がないならば、泊まらせてあげることは出来ないよ。昨晩のお代はいいけどさ」
「ならば、レイザ。いや、おかみさん。俺をここで雇ってくれないか。俺は料理が出来る。ある料理の専門だがな」
「いいね、丁度厨房で働いていた人が辞めた所だよ。住み込み料理人として雇ってあげる」
「面目ねえ」
こうして俺の異世界での食い扶持と当面の宿が見つかった。
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