第3話
「契約破棄ってムートさんどうなるっすか?」
「どうにもならん、追放された挙句に置いてかれた……助けてくんないベルリーさん」
「置いてかれたって……」
遠くにいる相手を投影して会話ができる魔道具、アップルフォンⅪによって映し出されたベルリーは危機的上級に絶句する。
「そういうことだから当分勇者様への新商品紹介は私からはできない。すまないな」
「それは全然大丈夫っすけど……」
こんなときに限って魔道具メーカーから連絡が入るものだ。新商品の提案に勇者様へ仲介してほしいとの要望は今の私に叶えて上げることできない。
私は途中自分の不甲斐なさから歩くのを辞めて近くにあった小岩に腰を下ろした。
「それより今どこなんですか?」
「分からない、でも来た道を戻っているからあと数日もすればギルドに帰れるはずだ」
「数日って死にますよムートさん」
深刻な声色で心配してくれる彼女は魔道具メーカー、グットマン商会で働くベルリー。
ベルリーは私と一緒に勇者様や魔導士に新商品の提案や実際に現場で魔物の討伐をサポートした戦友の一人であり、良きビジネスパートナーである。
「ちなみにどんな商品が出来たんだ」
「そんなことはどうでもいいっすよ! とにかくはやくヨダカのギルドへ向かってください、そこで一度ボクとおち合いましょう」
「あぁ分かったよ。無事に着いたらその時は入社テストを受けさせてくれ」
「分かりましたっす。上司に伝えとくんで、とりま一次試験はヨダカのギルドまで生きて戻るってことでよろしくっす!」
「ありがとう。じゃあ幸運を祈っておくれ」
「うっす、ムートさんに幸あれ!」
通話が途切れた私は大きくため息をついて再び歩き始めた。
帝都以外の街には常に魔物の襲撃に晒されている。そのため各村や街には必ずギルドがあり、小遣い稼ぎの冒険者や経験値稼ぎの勇者様、ハンターらがクエストクリアの名目で護衛をしていた。当然フリーランスのディーラーも待機しているがその日限りの契約では到底暮らしてはいけない。それに魔王軍を討伐する大儀がなければ魔導士ディーラーなどパートナーにおいて重要視されていないのだ。
しかしそう思われていたのはたしかここ二、三年ぐらいまでであった。
ここ数年、出没する魔物が明らかに強くなってきている。もっと詳しく言えば賢くなっているのだ。
最前線で戦う勇者様を近くでみてきた私には、その事実を肌で感じることができた。
最弱のモンスターのスライムですら徒党を組んで集団で攻撃するバリエーションが増えたし、ゴブリンですらパーティーにおいて誰を倒せば弱体化できるのかを考えながら攻撃をしてくる感覚がある。
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