第2話
「今までお世話になりました」
新天地に向かう決意を胸に秘め、解雇にあたって必要な引継ぎを書き記し二代目の黒魔導士に手渡した。
それから私は帝都から遠く離れたこの辺境の地で違約金と自ら買い取っていた少しばかり魔道具ともに置き去りにされたというわけだ。
運が悪ければ魔物に食い殺され、運が良ければ他の勇者パーティーに拾ってもらい近くの街まで同行させてもらえる。それにしてもほとんどの魔道具を献上してしまったから荷物が驚くほど軽かった。背負ったリュックサックの中には加工した魔法石が七つだけ。
思わず笑みをこぼしながら、魔法石の原石を右手で握りしめたあとで空にかざして見せた。一見なんの変哲もない路傍の石ころだが磨けば立派な魔法石になる可能性を持っている。石ころだって誰かの役に立つ素質があるのだから私だってきっと再出発できるはずだ。
――だから……勇者様を恨むことは今日限りにしよう。
たしかにあのパーティーは理不尽で内部が腐ってるが、解雇される理由としては仕方のないことだ、完璧を求めるあまり融通がきかなかった私の原因もある。
ここを生きて帰れたら今度こそ上手くやっていこう。
「――本当に長い間お世話になりました!」
少し悲しい気持ちになりながら、私はもう見えなくなった勇者御一行が乗りこんだ馬車の面影に頭を下げる。
「さてこれからどうするかなぁ」
深いため息のあと、空を見上げて笑う。
とりあえずもときた道を戻ってみよう。勇者が経験値稼ぎで魔物を狩りまくっていたから敵も多くはないだろう。でもその前に大人として誠実な対応をしなければいけない。
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