ウィーの大冒険
一度ゆっくり話す機会を設けなくてはいけないとは思っていた。だが、そのための連絡を自分で直接するわけにはいかない。通学以外では俺には監視がつく。となると、どのような手段によればいいか?
その答えが、これだ。
「これも食えるのかね……食えるんだろうな」
俺は剣を手に、そう独り言ちた。
青みがかった灰色の壁に、人間の胴体ほどの幅の丸い穴が開いている。そこから這いずり出てきたのは、一匹の巨大な蛇だった。金色の目で俺を見つめると、シーッと威嚇音を漏らした。
フェイムス地下五階の最後の部屋は素通りできないと聞いていたが、事前情報通りだった。ここまで無駄な戦闘は避け、ギルドが発行している迷宮案内に従って、一直線に深い階層を目指して降りてきた。地下一階の至る所に出没する球状の「スライム」も、地下二階の巨大芋虫も、地下三階の巨大蛙も、地下四階の巨大ネズミも、全部無視してきたのだが、どうやらここで初めての戦闘になりそうだった。
そいつは鎌首をもたげ、こちらの様子をじっくりと窺っている。一瞬の隙を見つけて、いきなりガブリとくるのだそうだ。といって、牙にだけ注意していると、尻尾で足払いがくる。間近な接近戦になれば、今度はいつの間にか胴体に絡みつかれ、絞めつけられるらしい。
危険だが、数人のパーティーを組んで立ち向かう分には、そこまでの脅威でもない。足払いを受けて昏倒した仲間が出た場合には、誰かがすぐさま盾を構えてカバーに入る。じりじりと距離を詰めれば、この大蛇が得意とする攻撃方法も封じ込める。しかし、俺は一人だ。
とりあえず、待っている人も向こうにいる。ここは相手の攻撃を誘発して、後の先をとる。
俺は、構えていた剣を下に向け、腰を落とした。一気に踏み出そうと身構えたところで、頭上から勢いよくまっすぐに、開かれた顎が覆いかぶさってくる。なお一層体を沈めて前方に滑り込み、そこで立ち止まり、伸びあがって、左手を添えて頭上の丸太のような胴体を一薙ぎにした。
手応えを確かめると、身を翻して、崩れ落ちる大蛇の体から遠ざかった。下敷きになって血塗れになるのは、あんまり楽しくない。
見事、一撃でほぼ、大蛇の首は切断されていた。ホアの鍛えた剣の試し斬りとしては、ちょうどいい相手だった。
さて、倒したには倒したのだが、実感がない。
いつもは敵の死をピアシング・ハンドで確認している。最初からその表示がないこの迷宮の魔物については、死んだという確証がない。生き物ではないのだから。
「肉……もったいない」
この大蛇の肉、聞いた限りでは臭みもそんなになく、味わいにもクセがないらしい。ただ、やけに弾力があって、若干水っぽいのだとか。じっくり焼くか濃い目の味付けをすれば普通に食えるものらしく、ちゃんと狩って持ち帰れば、一応の稼ぎにはなる。
だが、この巨体だ。人数を揃えてきたのならともかく、一人では持ち帰れそうにない。諦めて、俺は先に進んだ。蛇の死体を跨いで、その向こうにある狭い通路を抜けると、大きな石の回転扉がある。押すと、抵抗なく開いた。
その先には下り階段がある。一息ついて、俺はすぐ下へと向かった。
降りた先は、ちょっと広い踊り場だ。ここから更に下ると、地下六層になる。つまりここは、その間にある安全地帯という位置づけだ。
本当に、ゲームじゃあるまいし、迷宮にどうして安全地帯があるのか。魂のない魔物といい、明らかに誰かの意図が見てとれる。
階段の終点で、入口から橙色の光が漏れていた。焚火しているのだろう。邪魔者がいなければいいのだが……
「ふぅ、お久しぶり」
「あ」
よかった。いたのはウィー一人だけ。うまくいった。
これが彼女と二人きりで話すために、俺が選べる方法だった。下校中の俺にニドが連絡し、ニドがウィーに待ち合わせの場所を伝える。つまり、ここだ。彼女は先に迷宮に潜り、安全地帯で待つ。その後、俺はフェイムスの迷宮に、タオフィを伴って馬で駆けつける。あとは腕が鈍らないように鍛えるという名目で、一人で中に入る。
彼女は周囲を軽く見回してから、ここまで持ち込んだ小さな折畳用の椅子を取り出して置き、言った。
「座って」
さて、腰を下ろしたはいいが、何からどうやって話し始めればいいのか。正直、気まずい。
「食べる?」
焚火の裏側で、ずっと火を通していたらしい。ウィーもここに来る途中で、大蛇を仕留めたのだろう。となると、彼女も大蛇の死骸を余さず採取したのでもないだろうから、残りの部分はどこへいったのかという疑問がわく。他の大蛇が出てきて回収したりとか、しているんだろうか? それも人目につかないタイミングを選んで。
「じゃあ」
蛇肉の串焼き。シンプルに塩を振っただけのもの。こういうのは火勢は強く、しかも遠くでじっくり熱を通すのがいい。早く焼き上げたいからと火に近づけると表面が焦げる。といって遠くに置けば熱が通らず生焼けになる。今回のは、どちらかというと前者だが、食べられないほどではなかった。
四大迷宮の中でも、フェイムスは最も人気がない。理由は、出現する魔物を倒して得られるものが、基本的に食料品しかないからだ。浅い階層で、それこそこの前のラーダイ達のように、腕試し目的で遊びに来るのはいるが、本格的に腰を据えて金を稼ぎにくるような冒険者なんて、まずいない。
その分、猛毒をもった魔物など、危険度の高いのも少なめらしく、基本的に力任せに暴れる相手ばかりなので攻略はしやすいらしいが、それも地下十層までだ。その先になると、どんどん魔物が巨大化するので、単純な力押しだけで相当な脅威になるという。それでいて、手に入るのはやっぱり食料品だ。
「なんかサマになってるね」
串焼肉の出来栄えはそこそこだが、手際は悪くない。こんな風にキャンプをしながら旅を続けてきたのだろうか。
「まぁ、ね」
空気の抜けたような声で、彼女は返事をするが、俺と目を合わせようとはしない。
「やっぱり、ここ数年で経験を積んだのかなって感じがする」
俺がそう呟くと、彼女はピタリと動きを止めた。それからゆらりと幽鬼のように立ち上がると、焚火を背後にした。長い影が伸びてきて、途端に視界が暗くなる。
猛禽がそうするように、突然ウィーは前に出て、俺の胸倉……ホアが仕立てた黒竜のマントを乱暴に掴んだ。
「誰のおかげだと思ってるんだ!」
「うぇっ!?」
突然、激情に火がつくところは、以前と変わりがないらしい。
「探したんだぞ! ずーっとずーっと追いかけたのに、逃げ回って!」
「はい?」
逃げたっけ? 記憶が定かでない。
「覚えがないんだけど」
「レジャヤでも! ドゥミェコンでも! カリでも! いつも一足違いだったんだ!」
「あ、あの、落ち着いて。ここ数年、何してたの?」
すると彼女は、糸が切れたみたいになって、その場に座り込んだ。そして、訥々と語りだした。
俺が九歳だった、およそ六年前の秋。王都での内乱の際、ウィーは養父のクレーヴェとの因縁に決着をつけたが、その後、当局に捕縛された。そのことをイータから聞き知った俺は、こっそり牢獄に忍び込み、彼女を解放した。その際、奪ってからまだ処分していなかったルースレスの肉体を与えた。そのままウィーは、偽の冒険者証を携えて、西の国境を越えてシモール=フォレスティア王国に逃げた。そして、俺とウィーとの関係も、これで終わったはずだった。
その少し後、冬の最中に俺はピュリスを出た。内乱の半年後、アルディニア王国の横断を始め、その年の終わりには聖都アヴァディリクに達していた。年が明けてからムーアン大沼沢に達したものの、そこで資金難に苦しめられて、しばらく足を止めざるを得なくなった。そこで黒竜との戦いがきっかけとなり、俺はレジャヤに向かうことになった。
この間、一年半とちょっと。
「最初はよかったんだ……最初は。少し、体の動きが思ってたのとは違ったけど、背も高くなったし、重い弓も引けるようになったし。強くなれるって思った」
「うん」
「アメジストになるまではすぐだったよ。依頼を受けながら、シモール=フォレスティア王国を西に向かって旅をして。ほら、昔、ワーリア伯のところで養われてたから、少しはレジャヤの街に懐かしさもあったし、それに……お母様とお兄様のお墓もあったから、姿は変わってしまったけど、せめて挨拶したくて」
まったく当たり前の思考回路で、彼女は西を目指した。そして望み通り、母と兄の墓参りを済ませた。道中では護衛や魔物の討伐の依頼などを引き受けて、路銀を稼いできた。レジャヤでも仕事に困ることはなく、階級も上がっていった。
だが、そこでふと、ウィーは自分の空白に気付いた。
「ボク、何やってるんだろうって」
「えっ」
「もう、やることないなって思って」
「いや、それは自分で考えることなんじゃないの? 生きる目的なんて」
「そう、そうなんだけど……」
自分の中の虚無。欲求のなさに気付いた彼女……いや、彼は、あえて仕事に価値を見出そうとした。積極的に依頼を受け、冒険者としては相当な稼ぎを得られるところにまで至った。だが、彼の中身はウィーだ。お金を得ても、さして使い道などない。
具体的には、例えば、飲む・打つ・買うといった男の遊びに興味を持てなかった。
まず、酒については昔から一切飲もうとしなかった。ピュリスにいた頃も、いつもお茶かミルクしか飲んでいなかったのだ。博打というのは、それでお金が得られるゲームだから、つまりお金の使い道があればこそ熱狂できるのであって、そもそも使い道を見いだせないウィーには、面白さがわからなかった。
そして、肝心の女遊びについては、これがまったく駄目だった。肉体は男でも、精神はしっかり女のままだから、女というものになんらの幻想も抱けなかったのだ。だからウィーは遊ばずに働き、働く意味に疑問を感じながらも黙って貯金した。だが、そんな男の姿が傍からどんな風に見えるかといえば。
「最初は酒場の看板娘だったんだ」
「は?」
「物陰に連れ込まれて、いきなり手を掴まれて、どうするのかと思ったら、服の中、胸元に突っ込ませてきて」
「うわっ」
お金を持っているのにクソ真面目な男。おいしい物件だと思われて、色仕掛けを食らったのだ。もちろん、それで落ちるウィーではなかった。
ところが、話はそれで終わらなかった。身持ちの固い男だと知れると、今度は冒険者とか酒場の女といった連中ではなく、まっとうな商人などが声をかけてきた。うちの娘はいかがですか、というわけだ。
「どんどんいろんな女の人に口説かれるようになって」
変装こそしているものの、ルースレスの肉体は若く逞しく、どちらかといえば美形な部類だった。そこへウィーの優れた腕前が乗っかっているのだ。
モテまくったが、どうにもその気になれなかった。女遊びが駄目なのではなく、女自体が性愛の対象ではない。それはつまり、家庭を築くという選択肢もないことを意味する。こうなると、ますます稼いだ金の使い道がない。金だけでなく、人生そのものの使い道もわからない。
では、男ならどうかという話になるのだが、これはこれで今度は肉体の方が反応しなかった。そして本当の地獄は、その後にやってきた。
「ある日、袖にしていた姉妹がね」
「姉妹? 二人?」
「うん、それがね、用があるからって宿の部屋にやってきて。何かと思ったら、いきなり服を脱いで抱き着いてきたんだ」
「災難だったね」
「だけど、その時に気付いたんだ……」
ずっと前から抱えていた欲求不満のようなもの。どう解消すればいいかわからず、ソワソワし続けていた。
それがこれだとわかった。自分の心はともかく、肉体は性欲を感じている!
「これが男になるってことなんだ、と気付いて、急にもう、我慢できなくなったんだ! 今まで心に蓋をして、自分の体を見る時にも気にしないようにしてたんだけど、無理になった。その……それがあるってだけで、もう違和感がすごくて、毎日、気が狂いそうだった」
「だから僕を見つけて、元通りにしてもらおうとしたってこと?」
「そうだよ! 黒竜を倒したファルスっていう少年冒険者がやってくるって噂を聞いて、まず間違いないって思って。人づてに話を聞いて調べて、泊まってた上等な宿屋まで行ったんだけど、門前払いされて。それなら仕方ないと思って、無理やり侵入したんだ」
「あれはウィーがやったのか……」
だが、その後、俺はピュリスに帰ってしまう。俺を逃がしたウィーはしばらく悩んだが、後を追うことにしたらしい。
「覚悟を決めてピュリスまで行ったのに、すぐ王都でしょ? それも追いかけたけど、急に行方がわからなくなって」
黙ってスーディアに向かったんだから、わかるわけがなかった。
「それで行き先を探してピュリスで情報を集めてたら、ドゥミェコンで人形の迷宮が打倒されたって話が飛び込んできて。こんなの、ファルス君以外あり得ないから、今度こそと思って、砂漠の真ん中まで行ったんだけど……」
無理をして、ラクダを借りてドゥミェコンに駆けつけた頃には、街はほぼ廃墟になってしまっていた。片道分の食料しか用意していなかったウィーは、飢えと渇きに苛まれながら、砂漠を彷徨った。
「ここからなら、ムスタムに戻るよりアラワーディーのが近いかなと思って、そっちに向かって急いだんだ。そうしたら」
最悪のタイミングだった。迫る赤の血盟に対して、フマル氏族が決死の反撃に出ていた時期だ。無人の村落で毒入りの井戸水を飲んでしまい、ウィーは生死の境を彷徨った。辛うじて命を拾ったものの、このままでは飢えと渇きで死んでしまう。それで意を決して、最寄りの大都市、つまりタフィロンを目指した。
「げぇっ」
「そこで初めて、戦争が起きてることに気付いたんだ。激戦の間を右往左往しながら逃げ惑ったよ」
だが、この壮絶な戦争に巻き込まれたおかげで、ウィーは俺の足取りについての手掛かりを得た。
「負け確実だと言われていた赤の血盟が黒の鉄鎖を圧倒するなんて、どう考えても変。だから、これもファルス君の仕業だと思って」
「う、うん」
「だけど、ハリジョンに着いた時には、もうここにはいないらしいってすぐわかったから、無理やり海峡を渡って。カリの街で、賞金をかけて探したんだよ」
「ああ、追われてるとわかったから、早めに出発した」
すると彼女は色をなした。
「気付いてたの? どうして会ってくれなかったのさ!」
「いや、だって、正体不明のハゲがね? レジャヤでも無理やりホテルに侵入しようとしていて、それがカリまで追いかけてきたら、どんな執念してるんだって思うよ。ヤバいって思ったから、急いで次に移動したんだ」
そうしてまたもや俺を見失ったウィーは、真珠の首飾りの港を一つ一つ、南下しながら、俺を探し続けた。
「そこで、一緒に探してくれる仲間ができてね」
「えっ?」
「結局、一緒にラージュドゥハーニーまで行ったんだけど」
そこでウィーは目に見えて落ち込んだ様子を見せた。
「まさか、パッシャの一員だったなんて、ね」
「ええ……」
「寝食を共にして、まるで友達みたいに過ごして一緒にファルス君を探してたのに、最後は」
闇の戦士相手に死闘を繰り広げた、か。
「ボクも傷を負って死にかけて。で、なんかすごい怪物が飛んできて、そのうち街が火の海になったでしょ? ろくに逃げることもできなくて、避難できないまま焼かれて死ぬのかなーって思ったんだけど、運よく街の外れまでは火災がこなくって……全部終わって動けるようになったら、まーたファルス君がいなくなってて!」
「あ、う、う」
「途方に暮れたよ! 本当に途方に暮れたよ! それで悩みに悩んで、帝都で待ち構えることにしたんだ。留学に来るんじゃないかって睨んでたから! 何年待ったか! やっと、やっとやっと、元通りに」
「いや、待って」
俺は敢えて冷たい声で言い放った。
「僕、言ったよね? これまでの人生を捨てる覚悟で生きるつもりがあるかって」
「う、それはそう、だけど」
「新しい肉体を得たんだから、その肉体に合わせて生きていくしかない。そういうものだって納得したんじゃないのか」
「うん……」
煙を吐いて消える焚火のように、彼女は沈み込んでしまった。
「でも、耐えられなかったんだ……」
それはそれで、無理もなかった。
そもそも生きる理由自体を喪失していた上に、肉体が心と食い違っている。すると、普通の男が金を得てすることの一切に意味がなくなる。恋愛はおろか、家庭を築くことさえイメージできなかった。そうなると、稼いだお金の使い道もない。
だいたいからして、ウィーは空っぽだったのだ。復讐以外、ろくな目的をもったことがない。終わってしまえば、あとは愛着のある存在も特になく……まさか別人の体でガッシュ達に会いに行くわけにもいかず、そうしてこの世界から切り離されてしまった。
「ま、まぁ、終わったことは考えても仕方ないけど」
「うん」
「これから、どうする?」
経緯はわかった。あとは今後をどうするかだ。
「ピュリスはリンガ商会が牛耳ってるから、うまいこと抜ければそのままティンティナブリア行きの馬車に乗れる。領地に着いたら、城代のノーラに手紙を書いておくから、そこで領主権限で罪科の取り消しもできる。もちろん、ウィー・リンガスの身分のまま、最初から別人ということにして暮らしてもいい。そこまでは手配できる」
「うん」
頷きながらも、どうも気乗りしないように見える。
「何か問題が?」
「えっ……うん、悪くはないんだけど」
「だけど?」
「もう少し、帝都にいたいなぁって思ってて」
それもそうか、と思う。俺の知り合いで、凄腕の射手だといえば、ノーラも粗略な扱いはしないだろう。ただ、ウィーの立場から見れば、知らない人ばかりの場所で働く生活でしかない。これまでも孤独だったが、これからも孤独が続くだけ。しかも、今のところ、あそこはド田舎だ。
「まぁ、家はあるから、住んでもらってていいんだけど」
「ありがとう。だけど、正直、稼ぎがよくなくて困ってもいるんだけどね」
「うん? なんで? 腕はあるでしょ」
「帝都って、本気の討伐依頼がほとんどないじゃない。最近は海賊も滅多に出ないし。で、冒険者としてはペリドットからだから、稼げる用心棒みたいな案件は回ってこなくて。そうなると、迷宮に潜るしかないんだけど、弓で一人でとなると」
ウィーは悩ましげな顔をした。
「ニド君? は、アエグロータスなら稼げる、俺が案内してやろうかって言うんだけど」
「いいんじゃないか」
「よくないよ。ボクも一時期、男だったからピンとくるんだけど、貸しを作ったら」
そう言いながら、彼女は我が身を掻き抱いた。
あっという間に抱かれて操を散らされて、あとは彼を取り巻く女達の一員にされてしまう。
「きつく言っておこうか?」
「いや、それはそれでよくないと思う。ニド君だって、見返りなしで人助けなんて、する義理はないんだから」
「ふーん……」
俺は腕組みして考えた。
「要するに、まだ帝都にいたい」
「うん」
「自分の気持ちを整理して、やりたいことを見つけたい」
「うんうん」
「だけど、あんまり稼げない」
「そういうこと。自分のせいなのはわかってるけど」
俺はバリバリと頭を掻きながら、溜息をついた。
「すぐには妙案はないかな」
「だよね。ごめん、あれこれ言いたい放題で」
「いいよ。なんだかんだ、結局は無事で、こうして生きてるってわかって。それは嬉しかったし」
おかげでヒジリには土下座する羽目になったけど。
「何かいい話でもあったら、また連絡するよ」
そう言って、俺は立ち上がった。
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