第29話 ヴァーサーカー

地下に行こうとしているようだが手がないから時間がかかっておる。

「そこの扉を開け!」

「はいはい」

 そこに一人の女がのたうちまわったように死んでいた。

「マリア!マリア!なぜ!何故こんなことを!」

「お主の正義はワシにはわからんが、そこのマリアという女と一緒にいることがまずは大事だったんじゃないのか?」

「クソクソクソ!何もうまくいかない!お前なんかがきたせいだ!」

「いや、ワシが来なくとも近いうちにお主は討たれてあったと思うぞ?ウェルザリア王をみたが甘いところがあるがこうと決めたらやる男じゃったしな」

「やはり兄上の方が俺より上ということか!」

「まぁ、そうじゃな」

「殺せ!いっそのこと此処でマリアと一緒に死んでやる」

「ワシは随分人を斬ったがお前は斬るに値せんのう」

「なぜだ!帝王だぞ!」

「もう奴隷達も気づいている頃だろうよ、そいつらにでも殺してもらえ」

「ウワアァァァァァァ!!」

 ワシは地下から外に出ると一気に暴徒と化した奴隷達が暴れ回っておる。

 ワシは通り抜けて宿へと戻ると宿の女将も殺されていた。ルナに乗り込んだダイヤ達に呼ばれて街を出ていく。

「元よりこの国は国じゃなかったのう」


 ザリアはウェルザリアに吸収されて全てがウェルザリア王国へとなった。 

 ワシらもザリア帝国外に移動してからまだ旅を続ける。

 帝王がどうなったのかは知らんがやつらしい最後じゃろうて。


 ワシは今迷うておった、またあのスコールの激しい場所を通って帰るしかないのかと。

 しかもルナを置いていかなければならんからのぉ。


 次の街が最初に来た街じゃがそれまでに決めないとなぁ。


「どうしようかのぉ」

「どうしたんですか?」

「いや、あっちに帰るのにルナがおるからのぉ、密林が通れんのじゃよ」

「荷馬車から外せば連れていくことはできますか?」

「んー、スコールもあるし厳しいじゃろうなぁ」

「ブルルルルル」

「いけるってさ」

 トパが応える。

「そうか?置いていくのもかわいそうじゃし、いくかのぉ」


 次の街に着いて荷馬車を売ると今度は別の道を通ることにした。

 来た道は大変じゃったからのぅ。


 熱帯雨林の入り口にきた。

「ルナ?大丈夫か?」

「ブルルルルル」

「そうか、じゃあいくとするかの」

 まっすぐな道で歩きやすい。

 最初からこの道でくればよかったわい。


 だがやはりスコールがやってくる。

「ルナにはやはりきびしいのかのぉ」

 だがやはりスコールは少しすると止みまた蒸し暑くなる。

「皆大丈夫か?」

「なんとかだいじょうぶです」

 すると突然男達が現れる。

「なんだお前達は?」

「そこの女を寄越せ、馬もだ」

「はぁ、ヴァーサーカーという奴らじゃろ?死にたくなくば退くといいんじゃが?」

「ヴァーサーカーは死を恐れない!欲しいものは勝ち取るだけ」

「やれやれじゃ、皆下がっておれ」

 後ろに全員がを下がらせると、

「お前、のぞみはなんだ?」

「此処を通らしてもらう」

「ならおれと勝負して勝ったらいい」

「言うたな?」

 男は大ぶりの刃物を二つ使っている。

「そんなもんじゃワシには勝てんぞ?」

 月光を抜いて魔力を込める。

「ウオオォ!」

「せや!」

「お、お前の勝ち」

 殺さずに生かしたのでヒールをかける。

「何故殺さない?」

「こんなんで死んでもつまらんじゃろ?」

「かはは!おれの名はシュウ」

「ヤオキじゃ」

「村まで案内しよう。もちろん女に手を出させない」

「分かったのじゃ、行くぞみんな」

「はい!」

 男たちは女を見ないでスタスタと歩く。

 やはりちゃんと筋を通しているのだろう。

「ここが村だ」

「ほう。アマゾネスよりマシじゃないか」

「お前アマゾネスの所も行ったのか?」

「あぁ、だいじょうぶだったぞ?」

「俺たちも一年に一度ある。アマゾネスと交流する」

「そうか、そこで子どもを預かるわけだ」

「そう、それだけじゃないがな」

 まぁ、言いたい事は分かるから別に聞かない。

「ここで一晩宿を取って明日出発すればいい」

「おうありがとうのう」

「いやいい、これは受けた恩だ」

 なかなかいい男じゃて、さて、何人今日は来るのかのぉ。

 

 おぉ朝まで来なかったなぁ。

 扉を開けるとシュウが瀕死だったので回復する。

「お前が守ってくれてたんじゃな」

「恩人に何かあったら困るからな」

「シュウも街に行かんか?お主なら」

「いやいい、おれはこの村で育ったからな」

「そうか、それもいいじゃろ」


 反対の門を開けてもらい、

「それじゃあな!達者で暮らせよ」

「あぁ、お前たちは強いから大丈夫だと思うけど気をつけてな」

 さてスコールが降らないうちにさっさと出発すると、今度は別の男達が現れた。

「お前ら女置いていてけ、男はいらんから殺せ」

「さてと、昨日シュウがやられたのはお前達みたいだな!殺してやるよ」

 月光を抜くと構える男達!

 そんなに強くないようだな。

「死にたくなければここからいなくなれば見逃してやる」

 何人かはいなくなった。

 さて残ったのはお前ら三人だけ見たいだな。

「ひっ!まて、俺たちも逃げる」

「いや、お前達はダメだなここで斬る」

「ウギャア」

 三人とも殺した。

「悲鳴を聞きつけきたがなにがあった?」

「こいつらが女を寄越せだと言うもんじゃからの」

「グランの奴らか、しょうがない。死体は放置でいいさっさと先に行け」

「わかった、それじゃあの」

 最後まで紳士だったシュウはどこの国でもやっていけるだろうがな。

 2回スコールにあたってしまったがなんとか熱帯雨林を抜け久しぶりの大地へと戻ってきた。

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