第28話 帝国


 中の人たちが泣いて喜んでいた。

 そりゃ奴隷にされるところを助けたのだからな。全員が冒険者だった。首を斬った男達の片付けをして。野営の準備を手早く始める。

 その頃にはマリンもこっちにきて手伝っていた。冒険者達はさっきの村へ帰って自分達の装備を取り返すのと街ぐるみでやってなかったかを探るそうじゃ。


 それにしてもよく寝るのぅ。

三人が起きたのは明け方でまだふらついていた。そのまま横になっておけといい、ここからさきは気が抜けないと思った。

 一応は次の街の宿に泊まってみたが普通じゃった。あの街でやってることは知らないようだな。

 もうすぐ国境に差し掛かると、旅のものだといい冒険者証を見せると通してくれたが、疑心暗鬼になっておるな。誰もが怪しく見える。近くの街に入ると奴隷の叩き売りのようなことまでやっておった!

 人々は見知らぬふりをしている。

「おい!ワシは初めてなんじゃがこういうことはどこでもやっていいのか?」

「は?当たり前だろ?これを見ろ!商売許可証だ」

 それを叩き斬ると男も斬り殺す。石の首輪がはめられているのであの時と同じやつなのだろう。じゃがあの時のワシじゃない。

 石の首輪を切って壊す。

 男も女もこちらを見る目が、おかしいものでもみているような目だ。そうじゃの、元凶を叩かないことには意味なんてないんじゃろうな。

 ザリア帝国の帝都はこの街の中心部にあるそこに向かうことにした。

 奴隷達には悪いが金貨を二、三枚渡してこれで人らしく暮らせと言って別れた。


 ザリア帝国がなぜこんなにも奴隷で成り立っているのかはわからないが此処に住む奴も嫌いじゃ。

 ザリア帝国の帝都は中心にあるため何処からでも同じ距離くらいになる。二、三日で着くように作られていた。

「どうなさるんですか?」

「奴隷達の元を断つ。今頃苦しんでいることじゃろうて」

「なんで?」

「呪術には呪詛返しというものがあっての、その呪いが自分に帰ってくるのじゃよ」

「じゃあ、呪術師は?」

「もう死んでるかもしれんのう」

「それを確認に行くんですか?」

「いや、こんな法律を作った王様とご対面といこうじゃないか!」


 俺たちは帝都に入ると宿を取った。

「くれぐれも無事帰ってきてくださいね」

「分かっとるわい」

「絶対ですよ」

「信用がないのう」

「万が一があるから気を抜かないでください」

「分かった分かった」

それではとキスをして夜の街を彷徨う王国ほどじゃないが帝国の城もそれなりに立派じゃのぅ。

「だ、誰だ貴様は!」

「邪魔だ」

 首を斬り落としそのまま歩いていく。

 此処の王様がまともだったらただの人斬りになってしまうのぉ。

 バカは高いところが好きというが王様もそうなんじゃろうか?

 登っていくと兵士が斬りかかってくるが返り討ちにしてやる。

 大事そうに守っているあそこに王がいるのであろうな!

“ブォン”

「ほぉ、金棒とはまた刀との相性の悪いものがでてきたのぉ」

「此処は通さんでぇ」

「ワシの道には後退はない!」

 月光に魔力を流して金棒を斬りそのまま男も斬ってしまう。

 魔力を流しすぎたかのぉ?

 皆が足を止める。

「ほれ、来なんだらワシは行ってしまうぞ?」

「全員かかれぃ!!!」

 ワシは無心で斬った。

 最後に立っていたのは叫んでいたやつじゃろうか?ゆらりと歩くと謝ってくる。もう遅いのじゃ。

 最後の一人も殺して中に入ると一人の男が女を盾にして、

「お、おまえは兄者の手先か?なら倍の金を払おう!」

「兄者とは誰のことじゃ?」

「う、ウェルザリア王国の王のことだ」

「ふむ、よく見れば似てないこともないな?じゃがなぜこんな奴隷ばかりの街を作ったのじゃ?」

「全てを兄に持っていかれたやつの気持ちなんかわかるか!」

「うむ、わからんのう。こんな小さな国じゃ、ウェルザリア王国…あぁ、ザリアが一緒か、乗っ取ろうと必死に人を集めていたんじゃな?」

「知ったような口を聞くな!」

「まぁいい、此処にくるまでたくさんの奴隷を見たがどいつもお前より辛そうな顔をしていたな」

「ふ、ふん!呪術師は絶対に渡さんぞ!」

 女をこちらに放り投げ剣を抜くと女ごと突き刺そうとする帝王に近寄り剣を腕ごと切り落とす。

「ウギャアァアワァァァァァ」

『ヒール』これで痛くないはずじゃ。

「わ、ワシの手がない!手がないぞ!」

「それよりも呪術師を見に行ったほうがいいと思うぞ?呪詛返しで今頃死んでおるかもな?」

「な、なんてことを!」

「なんてことをはお前のセリフじゃないじゃろ?」

「くっ!この!」

 走っていく帝王の後をつける。


 

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