第21話 ドラゴン


 馬車はそう遠くに行っておらず捕まえるのも容易だった。なぜ逃げたかと聞けば口籠る。馬車の積荷を見ると奴隷ばかりだった。

「普通の奴隷なら逃げんわな!」

「ふ、普通の奴隷ならいッ」

「あまり時間はかけたくないのでな」

 そいつの頭をアイテムボックスに入れて身辺を探ると出てくるのはかなり怪しい書類ばかりだ。馬車で女達を迎えに行く、御者の経験はちょこちょこ教えてもらった甲斐があった。

「御者やりますよ」

「慣れてないのを悟られたか、頼むよ」

 次の街まで行くと首を出して盗賊団を退治したことを知らせる。やはり被害がありお頭と呼ばれていた男は元兵士だったようだ。


 奴隷商の方も怪しい書類を見せると全部が全部偽物ではないが偽物が多かったらしく。この街の奴隷商だったため検査が入った。

 違法に奴隷にされていた女達は泣いて喜ぶが普通の奴隷達は浮かない顔だ。まぁ、そりゃそうじゃが。

 ワシに助けを求める声もあったがワシも一人で旅してる身じゃからのう。

 まぁ一人金貨3枚渡して許してもろた。

賞金は三日後になったのでしょうがないから奴隷じゃない奴らを連れて宿に向かう。夜這いに来る奴もいたがワシは無視した。

 そんなこんなでやっと三日たった。

 ワシも若くなって我慢するのもきついんじゃ!!

 賞金などで王金貨5枚に金貨800枚を貰い、奴隷商のこともあったので金貨200枚+された。金貨6000枚分の働きをしたわけじゃな。

 奴隷にならずに済んだのにワシについてこようとするのが多くて困った。ワシは旅をしておるから女子は連れて行けんといっておるのに。何故じゃ?

 盗賊に奴隷扱いされていた女どもは金をやるとすぐに消えたのにな。

 しょうがないのでひとっ走りすることにする。これで追いついて来れぬじゃろうて。


 次の街を飛ばしてまた次の街を目指す。


 ここまでくればよかろうて、街に入り宿に泊まる。さて、この国も奴隷が多いのう。

盗賊もそれなりにいるみたいだし。考えても仕方がないがどうにかならんのかのう。

 次の日に出立すると、街道をまた進んでいく。

 日差しが強くて暑いのう。

 そりゃドラゴンも寝とるわけじゃ…何しとるんじゃ?

「こら起きんか!」

『誰ぞ我を起こす奴は?』

「ワシじゃが。他のやつの邪魔になるで山にでも行ってこい」

『我は腹が減ったのじゃ、それにこの暑さでバテた』

「んじゃ。倒されても知らんからのぉ、達者でな」

『まて、小僧!お主我が喋れることを知っておったのか?』

「似た様なドラゴンと会ったことのあるだけじゃ」

『お主飯をくれぬか』

「魔物肉でいいのか?」

『なんでもかまわん』

「ならほれ」

 どさどさと肉の塊を出すとうまそうに食うドラゴン。

『うむ、腹5分目くらいじゃな』

「そうか。ならよかった」

『お主欲がないのう?我は初めて見たぞ』

「欲なら人並みにあるぞ?」

『誠かならば背中に乗るがいい』

「よっと、こうか」

『よし掴まっておれよ』

 ドラゴンは空高く舞い上がると地形が丸わかりじゃな!

 ドラゴンは旋回すると岩山まで来た。そこで止まりワシを背中から下ろすと洞窟の中を指さして全部持って行くが良い。

「は?」と中に入ると金貨や王金貨などがひしめき合っていた。

「全部もらっていいのか?」

『集めすぎたわい、目が痛くなるからいらん』

「ならもらって行くにしてもどうしようか。アイテムボックスには入るが」

『なにを躊躇っておる?全部持っていっていいぞ』

「この人間達じゃ!何で人間なんておるんじゃ!」

『死んでおるじゃろうが?』

「死んでおるからじゃ?」

『ドラゴンだと倒しに来るから適当に相手して死んだ奴もそこに』

「はぁ、豪華なゴミ屋敷じゃの。ええわいワシがついでに弔ってくるわい」

『おぉ。スッキリしたのぅ、これで快適に寝れるわい』

「はぁ。しょうがないのう」

『またくるが良い』

「送って行かんかい」

『お主飛行魔法がつかえるじゃろ』

「なんでそれを?」

『わからないでか。鑑定くらい出来るわい』

「はぁ、ここからじゃとそれなりにかかるが、ドラゴンに乗ってると勘違いされそうだししょうがないか」

『それじゃあまたの』

「あぁ、それじゃあの」

 ワシは飛行魔法でもといた場所に戻ることにした。


 上から見るとドラゴンが寝そべっていた位置がクッキリしておるのぉ。


 “スタン”と、降りれば元の位置じゃ。んじゃいくとするかね。

“ドン”と言う音と共にワシに掴まっとるものがおるとそこに。

「やっと追いつきましたよ」

「何じゃお主らか」

 前の前の街で置いていった奴隷にされそうな女子どもが目の前におる。

「私達を、妾でも何でもいいのでおそばにおいてください!」

「なんでじゃ!ワシは旅の途中じゃと言うたであろう」

「だからこうやってついてきたのでございます」

「邪魔はしませんから」

 いや、いるだけで邪魔なんじゃが。

「わかった、ちょっと離してくれるか」

「ダメですよ。離してはなりません」

 はぁ、何でこんなことになっておるんじゃ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る