第20話 米


 アンジュに案内されたのは宿と言える様な立派な建物ではなかった。が、雨露が凌げるだけマシというものだ。葉っぱで作ったテントの様なものだ。夕方になるとスコールが降ってくる。すぐにやむがこれでは作物も育つまい。肉の塊を宿代として渡すとアンジュから物々交換を申し出されたがワシもあまり持ってきていない。と申し出を断った。

 外が騒がしいので出てみると大蛇が出てきていた。すでに何人か食われているらしい。月光を使って首を切って中の人を助ける。助けられたアマゾネスから求婚されるが断った。


 夜になると酒盛りが行われ蛇肉が振る舞われた。ここの天敵だったそうだ。

 ゴツいアマゾネスがしなだれかかってくるがワシの好みじゃないと断った。ここに来て断ってばかりで気が引けるが蛇を倒したのだからいいだろう?

 酒を振る舞われたがどうせ精力剤の類なので飲むことはせず、蛇肉を食らって寝ることにした。

 夜這いにくるが、腕尽くで外に出した。

 旅人はいつ死ぬかわからないし世帯を持つこともしないでおく。


「なぜやらない?男は気持ちいいだけ」

 アンジュに言われたがそれでは責任が持てない。生まれてくる子供は男なら男の部族へ、女ならアマゾネスになるという。ここら辺が日本と違うところなのだろう。


 次の日には出立してなんとか貞操を守り切った。誰ともわからない娘息子ができるのが耐え難い。

 水分の取り方はアンジュに教えてもらった。茎を切ると水が溢れてくるのでそれを飲む。

 もう日付の感覚がわからなくなってきている。この、広い熱帯雨林をなんとか抜け切った。

 そこは広大な草原だった。

 街がちかくにあったので寄ってみると冒険者証が使えない、金貨は共通ではないが使えたのでそれで入れてもらった。ギルドもまた新しく入会して、今までとってきたものを買い取ってもらう。ここは大きなウェルザリア王国だと教えてもらい王金貨2枚と金貨150枚銀貨30枚になった。王金貨とは金貨千枚分だ。

 入会した時に分かったが俺は二十二歳になっていた。

 門兵に金貨を返してもらい銀貨を渡す。

 さっそく宿屋に入り汗を流す。こちらの国は暑いのである。冷房が効いた部屋に入って北の国より技術が発達している様に思える。

 俺が通ってきたのはこちらでは樹海と呼ばれ、モンスター退治に出かけるらしい。

 冷えたエールを流し込みながら女将から話を聞くと、こちらは二つの国が争っている様で一つは『ウェルザリア王国』、もうひとつは『ザリア帝国』というらしいが、帝国の方は奴隷制度が盛んであまり行きたくないとのことだ。

 ザリア帝国は荒野が多く作物があまり育たないらしく、ウェルザリアに頼るしかないそうだが、それが気に食わない帝国が反旗を翻したそうだ。何か聞いた話じゃのぉ。

「そうなんじゃのぉ。それにしてもこの国の飯は美味いのぉ」

「当たり前さ!新鮮だからね」

 この国にはコメがある、今年も豊作だったらしい!これは買って帰らねばな!

なんでも昔の王様が稲作を始めたらしい


 ワシみたいな日本人だったのかもしれないな。

 とりあえずは米を大量に買った。王金貨2枚分買ったのでこれで米には困らんじゃろ。

「大量に買うねぇ、どっかの行商かい?」

「いや。旅人でな。米が気に入ったんじゃよ」

「そうかいそうかい」

 おばあがやってる米屋で米を買ったからついつい話し込んでしまう。

「ありゃ、樹海を通ってきたのかい!びっくりだよ」

「スコールがひどくてね」

「アマゾネスにはあったかい?」

「あぁ。一日止めてもらったよ」

「じゃあ、酷い目にあったんじゃないかい?」

「いや、なんとかなったよ」

「そりゃよかったねぇ。なんでも、男が行ったら大変な目にあうって話だからね」

「あはは、そうみたいじゃな」

「樹海のモンスターも強かったじゃろ?」

「そうでもなかったぞ?ワシには大事な相棒がいるからな」と刀を撫でる。

「樹海の中にもダンジョンがあるって話じゃないか」  

「そうなのかい?通ってこなかったな」

「ヴァーサーカーの方で管理してるらしいよ」

 アマゾネスにヴァーサーカーか。

 まぁ、どっちにしても帰りじゃな。

「ありがとう」

「またおいで」

 米も買ったし、さて次はどの街に行くかな?

 東回りでウェルザリア王国側からまわって行くかな。

 となると街道沿いに行くのがいいかな。

 街道沿いに歩いているとまたまたまた出る盗賊どもが馬車を襲っている。

「助け入るかね?」

「助けてくれ!」

「はいよっと!」

 

 二十人ほどの盗賊を斬って回る。

 一人残していつものセリフを言う前に、

「アジトはあっちにあります」

「ありゃりゃ、自分でいっちゃまずかろうに」

 しょうがないからついて行くと、

「お頭ぁー助けてくれ」

「あぁ、なんだ?」

「おおでかいな!」

 三メートルはある大男が出てきた。

「ほう、一応剣士らしいな?」

「お前さんこそどこぞの兵士だったんじゃなかろうな?」

「知った口を聞くな」

 大剣を軽々と手足の様に動かす。

「ほう。やるもんじゃて、じゃがまだまだじゃのう」

“スパン”と首を斬って止めを刺した。

残りは逃げようか迷っていたが全員逃すわけない。首を斬り落とし冒険者証を取って行く。

 アジトの中はそりゃ酷いことになっていた。女は犯され男は無惨に殺されておった。

 生き残っているだけマシなもんよな。

金品を全部アイテムボックスに入れると女どもを解放して服を渡す。捕まっている人もいたので出してやる。

 また、馬車のところに戻ったら馬車は逃げた後だった。頭と冒険者証をアイテムボックスに入れて女どもにこの先の街まで歩かせるが先に馬車のやつを捕まえに行く。


 

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