第16話 ゴタ爺と鍛治士



 中央のダンジョンを攻略したワシはその足で南の街へ向かう。途中で盗賊どもが暴れておったから討伐しといたがのぉ。

 南の街まで一月近くかかってようやく辿り着くとたばこ屋へ行く。

「あら、ヤオキちゃん?大っきくなって!ますますかっこよくなったわね」

「そうかの?可愛いから卒業できて嬉しい限りじゃて!」

「あら、可愛い頃も良かったわよ?私も歳をとるものね」

 確かに老けていたがあまり変わらん様に見えるがのぉ。モニカはタバコを持ってきてメルルのツケで持っていく。

「また顔見せにきてよね」

「おう、またくるのじゃ」

 モニカは久しぶりにあってもモニカじゃったな。この街も変わらんのう。

「ヤオキじゃねーか?でっかくなったなぁ」

 兵士のおっちゃんが声をかけてくる。

「おっちゃんは老けたなぁ」

「お前の小さい頃から知ってるんだ、そりゃ老けるさ」

「盗賊の方は?」

「あれからアジトを定期的に見て回ってるから大丈夫だよ」

「そうなのか!良かったのじゃ」

「まぁ積もる話もあるが帰るんだろ家に?」

「あぁ、今から帰るとこじゃて」

「じゃあ長話も何だな、気をつけていってこいよ」

「あぁ、ありがとう」

 手を振替してメルルの家まで向かう。


「ただいま帰ったぞい」

「おかえりさね」

「また時を吸ったか?」

「ゴタ爺のを少しだけな」

「あぁ。それならいいか」

「コーヒーでいいかい?」

「ブラックで」

「また吐きださんがいいがのぅ」

「年取ってコーヒーの味がわかる様になったのじゃよ」

「そうさね」

 他愛のない会話が一番嬉しいのじゃな。

「北の街で刀を作ってもらったんじゃが小さくなってしもての」

「そりゃ魔法の刀じゃないから打ち直してもらうしかないねぇ?」

「小太刀?脇差程度の刀になってしもうた」

「ならこれを持って南のゴタ爺のとこにも腕利の職人がいるらしいよ?」

 メルルが何かを包んでくれた。

「そりゃいい!ゴタ爺にも何年も会ってないのじゃからの」

 今から行っても遅くはないじゃろ?

「んじゃちょっくら言ってこようかのう」

「ビックイーターには気をつけるさね」

「あぁ。大丈夫だろ?」

 砂漠の入り口に来たらまたいるではないかビックイーターが…。

 はぁ。ついてないのぅ。

 ちょっと待つか。


 砂漠の前で待っていると、ようやく警報が解除された。

 走って行くとすぐに着いて、

「ヤオキか?でっかくなったなぁ」

「おっちゃんは小さくなったなぁ」

「お前がデカくなったんじゃい!ワシわ変わっとらんわい!」

 プンスカと怒るおっちゃんを宥めて、久しぶりにゴタ爺に会いに来たのじゃからと中に入って行く。路地裏の小さな店に向かうとコーヒーのいい香りがする。

「ヤオキか?」

「ゴタ爺久しぶり」

 ゴタ爺は変わらずに働いていた、少し若返ってはいるがゴタ爺だ。

「金平糖入るか?」

「いる!ゴタ爺の金平糖好きなんだよね」

「そうかそうか、大っきくなったのぅ」

「そりゃもう二十歳だからね」

 金平糖を口に入れ舐めると懐かしさで涙が出そうだ。

「コーヒーでも飲むか?」

「いれてくれるの?」

「あぁ。コーヒーの味もわかる様になったじゃろ」

「あぁ。ブラックで」

 ゴタ爺とコーヒーで乾杯しながら飲むブラックコーヒーは苦味があるが飲みやすいすっきりとした後味だ。

「ゴタ爺?ここら辺に鍛冶屋はあるかい?」

「鍛冶屋って言ったらここにゃ一軒しかないぞ?腕利きの職人が一人おる」

「刀が体に合わなくなって来てさ」

「ほんとじゃのお、あはは」

「わらわないでよ!これでも相棒なんだから」

「あはは、悪い悪い。んじゃちょっと待っておれ」

「ほい、これを持って行くといい」

「これは?」

「見せたらわかるわい」

「わかった。んじゃちょっと言ってくるよ」

 店から出て大通りに出る反対側の裏路地に入ると“カーンカーン”といい音がしている。

 店に着くと「こんにちわー」聞こえないようだ。

「こんにちはー!」

「聞こえとるわい!ちょっと待っとれ!」

「はーい」

“カンカカン”

 とリズミカルな音を出している。

「はぁ、何じゃ小僧?」

「刀が小さくなったから新しいのを作って欲しいんだけど」

「は?刀?あはは、お前さんなんかに振られる刀は可哀想じゃの」

「それは俺が剣を振るのも見ないで決めるのか?」

「そんなに自信があるならそこの鉄の棒を切れや!」

「はぁ、舐められたもんじゃのう夜桜行くぞ」

“キン”

 という音と共に鉄の棒は縦に切れた。

「うむ、ワシが悪かった。その刀を見せてみろ」

「赤竜の鱗で作った黒刀か!名品だがお前にゃ少し小さいのう」

「ああ、あとメルルとゴタ爺にこれもらった」

「どれ?これは金龍の髭と鱗かよ!こりゃ大仕事じゃな」

 ゴタ爺がくれたのはどうやら鱗らしい。

「とりあえず一週間はくれ、それでもできなきゃ一か月はかかるぞ!」

「あはは急がなくていいよ、丁寧にやってくれよ」

「おう!任せとけ!」

 少し金策しとかないとな。  

 まずはギルドに行ってこれまで集めた素材をうる。アイテムボックスは劣化しないのでいいな!

 これだけで金貨3000枚になった。

 だがまだダンジョンでのドロップ頻度があるのだが、「まだあるんですか?買い取りますよ」というお姉さんの一言で出す事にしたら。途中で止められた。

「ギルドのお金がなくなりそうなんでここら辺で」

 と言われてとめたが三分の一も出していないのだが。

それでも全部で金貨5000枚を超えたのでよしとしよう。

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