第8話 夜桜


 街を出て三日、村や街はなく街道で野宿をしながら歩いている。

 たまに出てくる魔物を倒しながらじゃから飽きはしないのじゃがな。 

 

 歩き始めて四日目。

 ようやく街にはいった。だが街の雰囲気はすこぶる悪い。宿に入ると女将に聞いてみる。

「旅のお方だから知らないのは無理ないねえ、ここは北の領地だったが、中央の国に乗っ取られてしまってね」

「そりゃ酷じゃのう」

「その中央の奴らがやりたい放題なのさ」

「そうなのかぁ」

「あまり関わらない方がいいよ」

「まぁ、そうするか」

 ゆっくり風呂に入って疲れを癒し、飯を食いに下に降りる。

“ガシャーン”

 おいおいなんじゃ?

「こんなまずい飯で金取ろうってのか?」

「いえ、そんな滅相もない」

「じゃあいいだろう」

「いやよくないじゃろ!」

 本当に頭にくるなぁ。

「旅のお方、これはこちらの」

「何だテメェは?俺たちガフッ」

「行儀のなってない犬と口を聞くような真似はしないんでな」

「グッ」

「ガハッ」

 そいつらを外にぶん投げるとパンパンと手を叩く。

「女将の食事をくれ」

「あんた大変なことを」

「いいんだ、あとはこれからくる前に腹ごしらえしなきゃな」

「あんた!スタミナ定食一丁」

「おう!任せとけ」


 ちょうど食い終わった頃に外が騒がしくなって来たので外に出る。

「あ、あいつです!」

「ここは我が軍の領地になった。旅のものだとしても容赦はせんぞ」

「あまり人のことは言えないが躾のなってない犬が多いんじゃないかのぉ?」

 煽ってやると額に青筋を立てている。

「この、こいつらは我が軍の兵士達だぞ!それを犬コロに喩えるとは!許さん」

 剣を抜く大男に向けて剣を取り出す。

「あははは、あいつの剣見てみろよ!刃こぼれも凄いし、歪んでねえか?」

「ぷっ!あれで旅の剣士だってさ」

「だ、だまれ!」

 大男が叫ぶ。どこからどう見ても剣のメンテもしてない様な優男なのに動けない。

「あははは。剣は買い替えないといけないんだがのう、まぁ、これくらいならこれで十分じゃろ」

 煽られて怒りが爆発したのか斬りかかる兵士達。

「ば、馬鹿者!」

“ギイィィィィン”と音がなると兵士たちは倒れ伏していた。全員が息をしていないのがわかる。

「剣はもういい歳じゃからのう、お前のを借りておくわい」

「ダメだ!そいつに剣を渡すな!」

「ウオォ!」

 何人かその声に反応して襲いかかるが“キンッ”と言う音で終わりを告げていた。

「こ。このやろう!」

「駄犬はダメじゃのう!直ぐに反応する」

 もう十数人を斬り殺しておいてこの落ち着きぶりだ。

「はようせんか!ワシは気が長い方じゃないぞ?」

「ウオオォォ!」

「馬鹿じゃのう」

 それが兵士長の聞いた最後の言葉だった。


「ワアァァァァァァァァ」

 とそこかしこから聞こえる歓声にびっくりしながらもここにいる全員を助けるには中央のの奴らをどかさないといけなくなったのに気づく。

 まぁ、ついでじゃな。

兵士長の剣は一回り大きな剣だったので振ってみるとちょうどいい重さだったので借りることにした。

街の南端に兵士が固まっているらしく、それではと中に入ってみると女子に手を出している馬鹿者どもばかりじゃった。

 全員を葬り女子をにがしてやる。

 最後の一人は泣いて北の軍勢に寝返ると言って来たので殺さないで置いておいた。

 が許さないのが女子の執念、女子に刺され死んでおった。


 朝を迎えると死んでいる中王軍の兵士の死体が焼かれていた。戦争なんぞ無駄なことをするからじゃ。北の領地に戻ったことでこの街は活気にあふれた、この街にいい鍛冶屋はいない様だが二つ先の鍛冶屋にいい鍛冶屋がいるそうじゃ。


 じゃあなと手を降り旅立つと兵士の軍団に出会った。話をするとこの先の街を取り戻しに行くところだと言うので守ってやってくれと言って別れた。


 二つ先の街まで走っていってみると一日かからずいけた。鍛冶屋に用があると言って鍛冶屋を訪ねると“カーンカーン”といい音が響いておる。

「すまんが話を聞いてくれんかのう」

「客か?おい!」

「へい。お客さんですか?どのようなご用でしょう?」

「これを材料に剣を打って欲しいんじゃが」

「へっ!こ、これは!親方!」

「なんじゃ!…これは竜の鱗か」

「あぁ、貰ったものだし剣に使えと言われてな」

「そうか!どんな剣だ!」

「そりゃワシに合う剣を作ってくれれば良いのじゃが」

「外に行くぞ!剣を振って見せてくれ」

 外に出て鞘から剣を抜き、練武すること一時間。

「分かった!今日から作ってやる」

「よかった。ワシは作ってもらえんかと思ったワイ」

 宿屋で過ごすこと一週間、まだできないようなので狩りに精を出す。二週間経っても三週間経ってもまだできないようじゃ。

 ようやくできたのが二ヶ月後じゃった。

「なかなかの力作、いや、俺はこれ以上の刀を作れないだろう」

「ほう刀になったのか」

「ああ、必ずしも剣である必要はないであろう?」

「刀の方が縁があるわい」

「そりゃよかった、その刀の名だが」

「なぜか刀身が黒いのう」

「そうだ。だからヨザクラにしようとおもうての」

「夜桜か、良い名じゃ!」

「お主は鎧も黒いからのう」

「これは小さい頃からつけとる鎧じゃて」

「ほう、魔法鎧か」

 やはり黒の魔女の弟子は黒くなるのかのぉ。

「ありがとのう、お代はいかほど」

「ただというわけにはいかんな、金貨千枚!」

「よし!もってけ!」

 アイテムボックスから金貨千枚を渡し、

「いい仕事だった」

「良い刀をありがとうな」

 がっしり握手をして別れる。

 腰には夜桜を刺して北に向かう。


 


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