第4話 ビックイーター
また一年経過して十一歳、
「ヤオキー!コーヒーがきれそう」
「えー!、またあの道行くの疲れるんじゃが?」
「行って来るさね!お爺も待ってるよ」
「お爺も良いけどあっこ疲れるんじゃよ」
「いいからいってきて」
「はぁワシがなんで行かんといけないんじゃか」
コーヒーは今度は南の砂漠の中にある街に買いに行かにゃならん。
「それじゃ入って来るぞい」
「ビックイーターに気を付けなね」
「なら自分が行けば良かろう」
「私だとすぐだから修行さね」
「はいはい」
修行って言えば良いと思ってないか?
ワシは南に二時間かけて行くことにした。
時間は目安で目標じゃな!
んじゃひとっ走り行くか!
気合いを入れて身体強化で走って行く。
やっと砂漠が見えて来た。
「ぬぅ、ビックイーターがいるではないか!」
ビックイーターはでかいミミズじゃ。
なんでも食べる悪食で食べられるが最後だ、でてこれないらしい。ただまだ一匹で砂漠を泳いでいるみたいだ。なんとか逃げ切れるか?
街はオアシスに作られておりそこはビックイーターも襲わないらしい。
「よし遠くに行ったら行くとしよう」
十分ほど待ったところで遠くに行くビックイーターが見えたので身体強化マックスで走り出す。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオ」
こっちに気がついたのか急に反転して来るビックイーター!
先にオアシスにつけばワシの勝ちだ。
「ヌオオオオオオオォォオォォォ」
『ザアアァァァァァァァァァァァ』
後ろから追って来るビックイーター。
こうなれば一か八かじゃ!
『ウゥイィンンドゥアゥッップゥ』
背中から風魔法で自分を吹き飛ばす。
「ナアアァァァァァァァァァァァァ」
大大ジャンプとも言える行動に自分でもびっくりしたがなんとかオアシス範囲に入れたようである。ビックイーターはオアシスを避けて行った。
「うおぉ、怖かったし痛い」
上空からのダイブで擦り傷だらけの砂まみれだ。回復魔法とクリーンを使いなんとかなったが。今のワシじゃと食われてたら出て来れんと思う。
「ヤオキ!だいじょうぶか?いまはビックイーター発令中だぞ」
見知った兵士が来てくれた。
「大丈夫じゃった!なんとかな!怖かったのじゃ!」
ふらつきながらも立って大丈夫とアピールする。
「気をつけろよ?ビックイーターはなんでも食っちまうからな!」
「分かっとるよ!だから怖かったんじゃて」
「そらそうか、まあ大丈夫なら一安心だな」
「あぁ、ありがとう」
ようやく辿り着いた街に入るとそこはいろんな種族がいて獣人やら岩男のような奴やらがいる。ほぼ冒険者でこやつらの狙いは砂竜と呼ばれる別の魔物じゃ。
また大通りからちょっと奥まった場所にある小さな店に入ると、
「なんじゃヤオキか!デカくなったのぅ」
「この前会ったばかりだゴタ爺さん!」
ゴタ爺さんはワシをみるたびにデカくなったと言うがボケてんのか?
「いつものコーヒーをお願いします」
「ホイホイ!ヤオキもお使いが出来るようになったか!」
お使いくらい出来るが…ビックイーターさえいなければね。
「ほれ金平糖じゃ、好きじゃろ」
「ありがとうゴタ爺さん」
ワシの大好きな金平糖を用意してくれる優しい爺さんじゃ。
「ほい、コーヒーじゃ。まだビックイーター警報が出とるからここで休んで行きなさい」
「ありがとうゴタ爺さん」
金平糖を食べながら爺さんの入れるコーヒーを飲む。ホッとするひとときだ。
「してメルルは元気かの?」
「元気すぎだよあの婆さん」
「そうかそうか、メルルはこのコーヒーしか飲まんでな」
そう!あの婆さんはこだわりが強すぎるのだ!
「まぁ、コーヒーはゴタ爺さんのが一番だからな」
でもこれはワシも納得しておる。
「おっ、ちょうど警報も解除されたみたいだな」
「気を付けて帰るんじゃぞ」
「ゴタ爺もまた今度」
「待っとるぞー」
よし、これで今回のお使いは終了っと、
アイテムボックスにコーヒーを入れてトコトコ歩いていると、
「坊主!金持ってそうだな?」
「持ってる金よこしな」
ヤンチャな小僧どもがこんな子供相手に何をしとるんじゃて、
「ワシより弱い奴は相手にせんからそこを退きなさい」
「あぁ?こいつ舐めてんな!」
「やっちまおうぜ」
「とぅ!」
“ゲシゲシ”と相手を蹴り飛ばして踏んづけてるのは、
「よおヤオキ!元気してたか?」
「ワシはいつでも元気じゃよ」
猫獣人の冒険者でスズと言う。
「コイツらこんな子供から金巻き上げようとしやがって!」
「す、すんません」
「許してください」
スズはこれでもAランク冒険者じゃ。
冒険者にもランクがあってFからAまである。Aランクといったらトップクラスじゃな!
「コイツらはこれでよしと!ヤオキはいつ見ても可愛いな」
「ワシは可愛いよりかっこいい方が好きじゃぞ?」
「あははそう言うとこがまた可愛いじゃねーか!」
「そうか?というかありがとな、余計な手間が省けたわい」
「まぁ、ヤオキにも負けるだろうコイツらはほっといて良いだろうさ」
「そうじゃな」
街中をスズと二人で歩く。
「またメルルのお使いか?」
「そうじゃ、こき使いやがる」
「あははは、可愛い子には旅をさせろってな」
「死に物狂いでのお使いは流石に懲りたのじゃ」
「警報中に砂漠には入るなよ?」
「今度からそうする」
「入ったのかよ!大丈夫だったのか?」
「危機一髪じゃった」
「はぁ、よかったよ」
「心配かけてすまんのぅ」
「さぁ、警報が解けてる今がチャンスだから早く帰ると良い」
「分かったのじゃ!またなスズ」
「おうまたな!ヤオキ」
ワシは身体強化をつかい、砂漠を疾走する。
やはり警報なしじゃと楽で良いもんじゃ。
ようやく帰って砂漠の砂を落とすと、コーヒーを渡す。
「あんたも無茶したらダメじゃないさね!」
「ん?また水晶で見てたのかよ!ま、まあ、なんとかなったじゃろ」
「ヤオキもこれで分かったと思うがビックイーターの見える範囲では行動しちゃダメさね」
「分かっとる!今回のことでよーく分かった!」
タバコに火をつけると、ようやく。
「おかえりヤオキ」
と言ってくれたのでただいまと返しておいた。
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