第3話 盗賊と金
家に帰ると三カートンを渡して、
「トレーニングならいってくれ」
「モニカが会いたがってたからちょうどいいと思ってね」
「しかし三カートンなんて一週間も保たないじゃないか!」
「それでいいのさね、修行は一日にしてならずさね」
「くっ!小難しい言葉を知っとるのう」
だからこのババアは嫌なんじゃ!
そしてことあるたびに呼ばれてこき使われる。ワシはメイドじゃない!
「これも修行さね」
「髪くらい自分で乾かせよ!ワシはドライヤーじゃないぞ!」
「はぁ。人に乾かされるのはいい気持ちじゃ」
こいつには何を言っても効かんのじゃから諦めの境地というものじゃろうか。
ようやくコーヒーの味がわかるようになって来たがミルクを入れる。ブラックじゃ苦すぎるのじゃ。
「そろそろ魔物狩りにでもいくさね?」
「おお。とうとう実践か!」
「まぁ、弱いとこから順にいくさね」
森の浅いところに連れてこられた。
「さぁ、ここにいる魔物は弱いから存分に戦うさね」
「まて。この量はなんだ?」
「モンスターパレードが近いのかもね」
とワシを投げてど真ん中に落とす鬼の様なメルル。
「そんなとこに放り込むな!」
「さぁ、モンスターパレードを止めるさね」
「うおぉ!『ウォーターカッター』」
横に動かせば大概のモンスターが切れていく。走り回って攻撃を避ける。
「その調子さね」
「『サイクロン』『ダブル』」
「おぉ!よくできたさね!」
こっちは命懸けじゃ!!
なんとか少し怪我しただけで済んでホッとしてると、回復魔法をかけてくれるメルル。
「助かる。もう魔力もなくなりかけてたからな」
「まだまだ修行が足りないさね」
よく言うのじゃ、ワシを勝手に連れて来といて!あ、売られたんじゃった。
ようやく十歳になって、木剣から鉄の剣を貰った。剣とはなんとも不思議なもんでワクワクするのじゃ。
「ヤオキも大人になって来たからそろそろ人も斬らないといけないねぇ」
「は?そりゃダメじゃろ」
「盗賊が攻めて来たら?」
「そりゃ、やもなく斬るしかなかろうが」
「そう言うことさね、盗賊に会った時に斬った覚えがあるかどうかが生死を分かるさね」
まぁ、そりゃそうだけどな。
「そのうち機会があると思うからその時は覚悟して殺す事さね」
「あいわかった!まぁないにこしたことはないがな」
その機会は早々にあった。モニカのとこから帰っていると馬車が横転している。盗賊の仕業の様じゃ!
「助太刀いるか?」
「お願いします」
兵士か騎士かわからんが手負だ。
「なんだこのガキは?」
「せぇい!」
盗賊の首を斬った。
「うー、魔物だ!これは魔物を切った感触だ!」
そう言い聞かせて吐き気を我慢して剣を振るう。盗賊達は剣を持っているが動きが遅すぎる。
ようやく最後の一人になった。
「アジトはどこじゃ?」
「い、言うわけないだろ!」
「じゃあ死ぬか?」
「…こっ、こっちだよ」
しょうがないからついていくと、
「お頭ぁ!敵襲だぁ!」
「こいつ!」
盗賊の首を斬り落とす。
ゾロゾロと出てくる盗賊ども。
「なんだガキじゃねえかよ」
「でも、殺されてますよ」
「
転がった首を蹴る。
「仲間じゃないのか?」
「は?あははは!仲間じゃなかったらなんだよ!死んじまったらしょうがないだろ?」
どうしようもない悪党じゃのぉ。
身体強化で素早く動き盗賊を斬ってまわる。
“ギンッ”
「おいおい、なかなか強えじゃねぇか!」
「『ファイヤーボール』」
「あぢぢぃ!」
ワシの剣を止めたのはお頭らしい。結構やる様だから魔法も使ってやるしかないな!
「てめぇ!いでえじゃねえか!」
「馬鹿が!痛くない攻撃魔法なんぞあるか!」
お頭は斧が獲物のようじゃな!それなら、
「『ウォーターカッター』これでどうじゃ!」
斧の持ち手を切ってやった。
「お、俺の斧が!てめぇ、やりやがったな!」
仲間の剣を奪うとこっちに走って来る。
俺も近づくと剣の応酬だ。
「『ファイヤーボール』」
「あぢっ」
「隙あり!」
首を半ばまで斬ると首を抑えたまま倒れた。他の盗賊も似たような強さなのでそれなりに苦戦はしたが快勝じゃないだろうか!
アジトの中に入ると汚いのでクリーンを使う。探してみると金貨がごっそり出て来た。
ありがたくいただく。めぼしいものは片っ端からアイテムボックスにいれる。
捕まってる人がいたので助けてあげる。二十人ほどいた。
「ワシはこれから北の街に行くからついて来たくばついて来い」
盗賊の頭と冒険者証を抜き取りアイテムボックスに入れる。
馬車のとこに戻ったらまだ横転したままだったので、
「元に戻すぞ?」
「ゆっくりとお願いしていいか?」
注文が多いのぉ。
「よいしょっと」
『キャッ』
あぁ、中に人がいたのか。
ついでに騎士?の怪我も回復魔法で治してやる。
「ありがとうございます。にしても大人数ですね」
「捕まってた人たちじゃ、一緒にいくぞ」
盗賊の頭と冒険者証だけ抜いて後の死体は森の中に放り投げる。
もちろん金を抜いてからじゃがのぅ。
北の街に着くまで二時間ほどかけて帰って来た。門兵に話をすると報奨金と懸賞金が出るらしい。後日取りに来るよう言われた。
「んじゃ、ワシはこれで」
「待ってください」
「なんじゃ?」
「あなたのお名前を」
「ワシはヤオキじゃ」
「分かりました必ず御礼をします。ありがとうございました」
捕まってた人も御礼を言って来る。
いいことをしたのに吐き気がする。人を斬って気分が悪いのじゃろう。帰り道で吐いてしまった。まぁ、終わるまで我慢できたからよしとしよう!
帰ってそのことを話すと、
「ずいぶんあっさりと殺したもんだね」
「やらなきゃやられるだろうが」
「でどうだい?慣れたかい?」
「慣れたくないけどな。しょうがないじゃろ」
そう、しょうがないのだ、命の軽い世界なのだから。
「そ。しょうがないさね。やらなきゃやられる弱肉強食の世界さね」
メルルもこれまでずいぶんと長く生きて来たんだから殺してるんだろうなぁ。
「お宝はあったかい?」
「それなりにだね!あったはあったよ。しかも報奨金と懸賞金がもらえるんじゃ」
「おぉ、そりゃ良かったさね」
「まぁのぉ」
まぁ、昨日の今日で出会うとは思うてなかったがのぉ。
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