第2話 魔法の特訓


 魔力をコントロールする為にはまずは魔力を感じなきゃならんようじゃ。

「きついかもしれないけど我慢さね」

「おう!こい!」

 変なものが中に入ってくる感覚がある尻の穴がキュッとするがなかなかきついのう。

「むむむむ」

「無理なら言うんだよ?」

 背中から魔力を送っているメルルに泣き言を言うわけにはいかん。

「分かったかい?」

「た、たぶんな。こりゃしんどいのぉ」

 体がたぷんたぷんになったようじゃ。これを動かすのは根気がいるのう。

「まぁ、急かすつもりはないからゆっくりやるさね」

「あぁ、わかっとる」

 じゃが、この、たぷんたぷんを動かせたなら魔法というものが使えるようじゃし、がんばらねばのぅ」


 月日は流れ一年でようやく魔法の初歩の段階に入った。ワシはいつもの席に座りあることをやっていた。

「すごいじゃないかい?もうそこまでできるようになったのかい?」

「まあの!ワシの名前に負けちゃならんからの」

「名前に意味でもあるのかい?」

「七転び八起きの弥起じゃ。字は違うが何回転んでも起き上がれるようにとつけてくれた名前じゃからの!」

「へぇ。あっちの人間は名前に意味がつくんだね」

「こっちは付かんのかい?」

「私のメルルはうちの婆さんから受け継いだだけだよ」

「そうなのか!それよりこれはいつまで続ければいいんじゃ?」

 ワシは魔力循環という魔力を体内に行き渡らせることをしとる最中だ。

「いつも魔力循環していられるようにさね」

「いつもかよ!こりゃ辛いのう」


「泣き言かい?ヤオキちゃん?」

「う、うるさい!ただ言ってみただけじゃわい」

 小煩いメルルにイラつきながらも魔力循環は辞めない。


 また一年過ぎた。最近では魔力循環を意識してなくてもできるようになっている。また、家の庭に家庭菜園をしだした。やはり土いじりは楽しいのう。

「ヤオキ、魔法の訓練の時間だよ!」

「わかっとる!ここまでやってからじゃ!」

 ほんとに誰のせいだと思っとるのじゃろうか?


「そんじゃ。この前教えた生活魔法からやってみるさね」

「はいよ、『クリーン』」

 土まみれだった服が綺麗になる。

「次」

「『トーチ』『ウォーター』」

 トーチは火を付ける魔法でウォーターはそのまま飲み水を出す魔法だ。

「次」

「『ライト』でオッケーじゃろ?」

 ライトは灯りだ。

「生活魔法はいいみたいさね。なら今度は攻撃魔法さね」

「はいよ!ファイヤーボール」

 サッカーボール大の火の玉が気にぶつかって焦げる。

「その年でこれだけできればいいさね」

「ステータスにはワシは五歳児になっとるけどな」

「そうさね!五歳でこれだけできればいい方さね」

 メルルが頭を撫でてくるがワシは八十過ぎとるのに。まぁ、やらせておくけど。

「次は水魔法さね」

「ウォーターと違うのか?」

「『ウォーターカッター』…どうさね?」

「すごいもんじゃの。木が真っ二つじゃ」

「まぁ、すぐ出来るようになるさね」

 調子いいことばっかり言って生活魔法だけでどんだけ苦労したか。


 それからまた一年、また一年と歳をとり七歳になった。

「ヤオキ!タバコが切れたから買って来ておくれ!」

「はぁ?ワシがなんで行かんといかんのじゃ?」

「あっちからご指名さね。ヤオキが気に入られるからさね」

「はぁ、めんどくさいのぅ」

「ほらちゃっちゃと行くさね」

 俺はクリーンを自分にかけて、鏡を見る。

 白髪頭の小僧がそこに立っている。

「んじゃいってくる」

「気をつけるさね!盗賊が出るかもしれないからね」

「なら賞金が稼げるな!」

「こら、あぶないことはまだだめさね」

「はーい」

 外に飛び出して向かうは北の街の方で、距離で言うと三十キロくらいあるが、身体強化で走ると時速三十キロくらいは出るから一時間くらいで到着する。


「はぁ、はぁ、子供のワシでも疲れるぞい」

 街に入るには冒険者証が必要なのでそれを見せる。

「おう。魔女のとこの子か」

「ワシはヤオキじゃ」

「悪りぃ。ヤオキな」

 たばこ屋は大通りから裏路地に入って奥にある。


「ちわー!」

「ヤオキ!来てくれたのねん!また可愛らしくなって」

「大男に褒められてもワシは嬉しくないんじゃが?」

「もう!いけずなんだから!」

 大男で三つ編みをした店主のモニカ。

「タバコを買いに来たツケじゃな」

「はい!三カートン!」

「もうちょっとくれよ!あいつヘビースモーカーなんじゃから三カートンじゃすぐなくなるじゃろ?」

「ヤオキがその度に来てくれればいいのよ」

「せめて十カートンはよこすのじゃ」

「だーめ!これでも体力作りの一環なのよ?」

 はぁ、あのババアの考えそうなことだ。

「分かったよ!じゃあ三カートンもらっていくぞ?」

「お茶でも飲んでいけば?」

「お、気がきくのう、貰おうか」

 たばこ屋の小さなテーブルにお茶を置いてくれるモニカ。冷たくて清々しいお茶じゃのう。

「このお茶はどこで売ってるんじゃ?」

「これは特級品だから手に入りにくいのよ?」

 なんじゃ!でもこのお茶が飲めるなら来てもいいのぅ。

「よし!元気百倍!あんがとさんな!モニカ」

「気をつけて帰るのよ?」

「分かっとるわい」

 店を出て三カートンのタバコをアイテムボックスに仕舞う。アイテムボックスとは空間魔法の要領で作った異次元の金庫みたいなもんかな。で、裏路地から抜けて帰る。

「ヤオキ!気をつけてな!」

「はいよ!」

 身体強化をしてまた走り出す。明日は筋肉痛確定じゃのぉ。


 

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