黒の旅人
あに
第1話 ワシの人生
似た様な話で申し訳ありませんが、異世界物が書きたかったんで書いてます。今から一本に絞ろうかと思って書いておりますのでぜひ良かったら読んでみてもらえれば幸いです
あに
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動けない?周りは暗くて段ボールの匂いがする?ワシは段ボールに入れられてるのか?
いやいや、ワシは趣味の家庭菜園をしていただけだったけど?なんでダンボールの香りのするここで動けないんじゃ?
『あー届いた届いた』
誰かの声がする。
“ビ、ビー”とガムテープを剥がす音がする。
光が入って来て目が眩む。
「さてと、歳を食わせてもらうよ」
誰がどう見ても魔女の婆さん?
「むー、むー」
「あら、元気のいいお爺さんだこと」
「じゃあ。頂きます」
ワシに手を触れるとワシは萎んだ風船が膨らんでそして小さくなっていくそんな感覚に囚われていた。止めろ!この感覚は嫌じゃ!
「あー、吸った吸った!若返ったよ」
婆さんだった魔女は若返って綺麗な
一方ワシは縄が解けているのに気がついて自分の口のガムテープを取ると、
「なんじゃこれは!ワシになにをした!」
声が幼くなっている。そういえば目線もおかしい気がして手を見るとちっちゃい赤ちゃんの手じゃ。
「元気がいい坊やだよ!途中で自分から魔法を跳ね返すなんてね」
「何が坊やじゃ!ワシは御歳80のジジイじゃぞ!」
「鏡見てみなよ」
と指差す方に姿見があって箱に入っとるのは産毛の生えた赤ん坊じゃった。
「こりゃどう言うことじゃ?ワシは若返ったのか?」
「そうさね、本当は最後まで吸い尽くして捨てるつもりだったけどよく跳ね返したもんだよ」
「どう言うことじゃ?」
「わたしの魔法は人の歳を吸い取って若返るのさね」
「は?人の歳なんかもらったら年老いるんじゃ無いか?」
「相殺していくのさね、人のいく年月を私の過ごした時間とね」
「分かったようなわからんようなまぁ、魔法でいいわい!ワシを元に戻して他のやつにすればいいじゃ無いか?」
魔女はタバコに火を付けると、
「そりゃ無理さね。あんたは私に買われたんだからね」
「は?ワシを買った?どこでじゃ?」
「今流行りのなんでも売れるセブカリってアプリを知らないのかい?」
「なんじゃそれは?アプリ?あ、スマートホンのやつか、あれには疎くてのぉ」
「これがあなたを買った証拠よ」
スマートホンの画面を見せつけてくる魔女、そこには
「誰じゃ勝手にワシを売ったのは!さては曽孫の小太郎あたりじゃろ!あのボンクラが拳骨かましてやるわい!」
魔女はタバコを消して、キッチンの方に向かう。
「コーヒーでいいかい?」
「ワシはブラックでお願いします。じゃなくてじゃな!帰してくれよ!ワシはこんなちんちくりんの姿なんかじゃ帰るに帰れんじゃ無いか!」
「もう無理よ?だってここ異世界だもの。それに吸った年月はかえせないさね」
「だー!じゃあ、ワシはどうすりゃいいんじゃ!」
ヤカンがピーとなって湧いたのを知らせている。コーヒーを淹れていい匂いじゃが、ワシの気持ちもわかってくれよ!
「あんたはここに住むさね!なかなか見所があるから修行すればきっといい魔法使いになれるさね」
「ここに住む?ワシが?それはいいとして魔法なんて使ったこともないぞ」
「そりゃあっちの世界には無いものがこっちにはあるさね、魔力って言う魔法を使うためのものがね」
コーヒーを差し出してくれたのでなんとか椅子に登ってコーヒーに手をつけると苦い。
「ぺっ、拙いコーヒーだな!」
「舌が赤ちゃんに戻ってるからミルクの方が良かったみたいね」
魔女はバカにするようにコーヒーを飲んでまたタバコに火を付ける。
「ま、まぁ。飲めなく無いわい!で?ワシはこれからどうすればいいんじゃ?」
「ッフゥー、私の言う通りにやれば若いうちから魔法が使えるようになるさね。それで出ていけば第二の人生スタートさね」
「第二の人生か…」
婆さんも先に死んでしまってもう未練はなかったのにこんなことになるなんてのぉ。
「ワシは第二の人生を歩む事に決めたぞ!あんた名前は?」
「私かい?メルルさね」
「ワシは
「じゃあ、こっちではヤオキと呼ぶよ?」
「わかった、メルル、よろしくなのじゃ」
「こちらこそよろしくさね」
「とりあえず服だね!ホイッと!」
「おお!な。なんか恥ずかしいのう」
子供服を着る八十のジジイは。
「あはは、よく似合ってるよ、とりあえずここの案内からだね」
「よろしく頼む」
メルルはタバコを消してワシを抱くと家を案内し始めた。
「ワシ歩けるんじゃけど?」
「そんなんで歩いてたら日が暮れちまうさね、でここがヤオキの部屋さね」
「ほう。ここで寝起きすればいいのか」
「でこっちが私の部屋さね、用がない時は入らないようにね。食べられても知らないからね?」
「分かっとる、女子の部屋にみだりに入らんわい」
小さくなったから大きく感じとった家じゃが割とこじんまりとしておるのぉ。
「ワシは今いくつくらいじゃ?」
「見た目で言うと二、三歳かしらね」
「はぁ、先は長そうじゃの」
「まぁ、焦らないことさね」
「焦らずいくわい!」
キッチンに戻って来た。
テーブルの上のコーヒーを飲むとやはり苦いが、負けちゃおれんからのう!
一気に飲み干した。
「うー。不味いわい」
「よく飲めたわね?でも体に毒よ?『ピュア』」
「おぉ、なんかスッキリした気がするわい」
「まぁ、基本の魔法だけどね」
「分かった!頑張るぞい」
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