第3話 僕は1人。

『お母さん、あのね...ぼくね。あっ、間違えちゃった、私だね』

お母さんは振り向きもしなかった。

まるで、ぼくをみていないみたい。

僕はここにいるのに。

ぼくはここに存在してるのに。

なんで、僕は私ちゃんのコピーをしなきゃいけないんだろう。

僕のこと見てよ。

顔は一緒なんだよ。

僕はここにいるんだよ。

僕は、ぼくって言っちゃいけないの?

苦しいよ。

なんで、私ちゃんじゃないとダメなの。

なんで、なんで、僕じゃだめなの。

あれ、誰かの呼ぶ声がする。

誰だろう。

あー、私ちゃんか。

ごめんね、今日もお母さんに振り向いてもらえなかった。

今日も失敗しちゃった。

私ちゃんとのバトンタッチはいつも上手く行かないね。

今日も限界まで苦しんじゃった。

『私ちゃん、ごめんねー』

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