02 義妹の心、兄知らず
*京サイド
とうとうおにいちゃんに告白をしてしまった。
「(ついに、言っちゃった)」
本当はまだ、本人に言う気なんてなかった。
徐々におにいちゃんを支配して、わたし無しじゃ生きれなくなった時に言おうと思っていた。
「まぁ、でも見られちゃったみたいですし。どうしましょうか?」
「ぅっ」
「ふふふ」
でも、自分の部屋に貼った写真を見られたんじゃ仕方ない。
バレたとしてもおにいちゃんはわたしに支配される運命なんだから、知られたところでいいし♪
「どうやったらおにいちゃんが、わたしでいっぱいになるんだろう?」
カチカチとマウスを操作しながら、パソコン画面を見つめる。画面には部屋でゲームをしているおにいちゃんの姿が映っていた。
「ゲームなんかしないで、わたしに構ってほしいのに」
プクーッと頬を膨らませながら、画面に映るおにいちゃんを睨みつける。おにいちゃんの顔はそれはもう楽しそうで、さらに腹が立った。
「まぁ、今は楽しませてあげましょう♪ いずれできなくなる訳だし」
画面に映るおにいちゃんを優しく撫でる。急におにいちゃんはキョロキョロと部屋を見回し、首をこてんと横にさせた。
「なんか寒気が……気のせいか?」
「ふふっ」
私はその後もずっとおにいちゃんを見ていた。
*
「(ふぁぁ、昨日は遅くに寝ちゃいました)」
目をこすりながらゆっくりとベッド起きあがる。朝は得意です。朝の空気はとても澄んでいて、その香りを嗅ぐのが大好きだから。
くま柄のパジャマを脱いで、学校指定のワンピースタイプの制服を着る。
鏡の前でクルッとまわって確認。うん、完璧です。
身だしなみを確認すると、わたしは台所に向かった。今からおにいちゃんとわたしの朝ごはんを作るためだ。
台所につくと、台所の壁にかけてあるエプロンをつけ、料理をするから髪をポニーテールにする。
「よし、さっそく作りましょう!」
わたしは料理作りを始めた。今日のメニューは簡単な朝ごはんだ。
マーガリンとハチミツを塗ったトースト。
半熟の目玉焼き。
熱々のウィンナー。
「このくらいで、充分ですかね」
もう少し作りたい気もするけど、やめておく。
なぜならおにいちゃんは朝に弱く、あまり朝ごはんを食べられないからだ。
わたしも少食ですからね。作るのは楽しいけど、これくらいがちょうどいいです。
テーブルに朝ごはんをキレイに並べて、ふふっとわたしは笑った。そして、トーストを見つめた。
「わたしの好きなものを一品だけ混ぜたのは正解でしたね。最近、おにいちゃんの味の好みが変わってきました」
あえて必ず甘いものを一品まぜていたのだが、最初の頃に比べておにいちゃんの甘いものに対する食いつきが変わってきていた。
「わたしと同じ甘いものが好きなおにいちゃん。すごく最高です」
頬っぺに手を当てて、はぁはぁと息をする。どんどんおにいちゃんが、わたしに近づいていた。それを考えるだけで、嬉しかった。
「はっ!? 喜んでる場合じゃなかった、早くおにいちゃんを呼びに行かなくちゃ」
わたしは慌てて洗面台に行くと髪をツインテールに戻し、もう一度身だしなみを確認。
おにいちゃんの部屋に行くんだもん、しっかりと身だしなみをチェックしないといけませんね!
身だしなみが終わると、わたしはおにいちゃんの部屋に向かった。
胸がとくんとくんと鳴って、嬉しくて顔がにやけてしまう。
おにいちゃんの部屋は大好きだ。だって、おにいちゃんの匂いにつつまれるから。
おにいちゃんの部屋に着くとわたしは、ポケットから細い針金を取り出した。
おにいちゃんはなぜか最近、カギをたくさんドアにつけるんです。どうしてか分からないけど……。
きっとおにいちゃんは、臆病なのでしょう。
そんなところも、好きなんですけどね!
かちゃかちゃっとリズミカルにわたしは、カギを外しました。そして、おにいちゃんの部屋の中に入ります。
おにいちゃんの部屋はとても安心する香りで、匂いを嗅ぐだけで落ち着けます。
「はぁはぁ、おにいちゃんのかおりぃ。ずっと嗅いでいたいです」
でもっとぐっと我慢をして、わたしはいつもの日課をします。時間は5時30分、あまり猶予がありません。
まず初めにわたしは、おにいちゃんの顔を持っていたスマホで撮ります。
「おにいちゃん、今日も気持ちよさそうに寝ていますね。でも、クマができています。今日の夜は早く眠れるようにホットミルクを出しましょう」
おにいちゃんの健康管理をするのも将来の"結婚相手"のつとめです!
スマホの日記におにいちゃんの写真を貼って、今日のおにいちゃんの健康管理も書いておきます。
「これでよし、さて次は」
わたしはおにいちゃんの布団を軽く上にあげると、おにいちゃんの布団の中に入ります。
それでおにいちゃんの背中にギュッと抱きつくんです。
「(最高です、これは家族の特権ですね!)」
おにいちゃんはなかなか起きないから、寝ている時には好き放題できます。あんなことやこんなことだってできちゃうんです。
「(でも一番は、おにいちゃんにだきつけることですね! あぁ、今日も頑張れましゅ)」
そのまま1時間おにいちゃんに抱きついて、おにいちゃんをたっくさん堪能します。
そして6時30分、本当は名残惜しいですし、ずっとおにいちゃんを家に閉じ込めておきたいけどそうもいきません。
「(もし、おにいちゃんが学校に行かなかったら大問題になってしまうかもしれませんからね。大人になるまで我慢です!)」
グッとわたしはおにいちゃんを閉じ込めるのを我慢すると、持ってきたフライパンとお玉をカンカンと鳴らします。
「おにいちゃん、おはようございます」
*リツ視点
「おにいちゃんいきますよ♪」
「あ、あぁ」
俺たちは朝ごはんを食べ終えると、手を繋いで学校に向かって登校している。
「あらあら、リツくんと京ちゃん仲良しね〜」
「あ、あははは」
「はい! わたしとおにいちゃんは、とーっても仲良しなんです!」
近所のおばさんに、京はそれはもう満面の笑みだった。
俺の笑顔はとっても引き攣っていただろう。口がピクピクと動いているのを感じた。
「(あまり仲がいいとか言わないでくれ。京がどんどんおかしな方向に突っ走っていっちゃうから!!)」
なんて言えたら、どれだけよかっただろう。
じゃあ、朝から手を繋いでるのはどうなんだよってつっこまれるかもしれない。
これには海のように深い深いわけがある。
実は俺と京の通っている学校は一貫校で、いわゆる幼稚園から高校まである学校だった。
なので登校先は一緒なわけで、こうして毎日のように一緒に登校しているのだ。
ちなみに毎日一緒に登校+手を繋いでいるのは父親からの命令だった。
『リツいいか、京はこんなにかわいいんだ。どこの誰かにさらわれるかもしれないだろ!! だからお前が登下校、京を守るんだ!!』
『あぁ、わかったよ! 父さん!!』
なんて父親と熱い握手を交わしたものだ。(※当時は京を溺愛していた)
だが本性を知ってからというもの、この選択が間違っているんじゃないかと思って仕方ない。
だってクラスが別な以外、ずっと一緒にいるからだ。京の支配欲を見ると、離れるべきだろう。
でも父親との約束を破れないし、父親に「京がやばい」なんて言えないからな。
今までのことを考えると、ずっと京のことを心配していた父親にそんなこと言えるはずもなく……。
「おにいちゃん、わたしたち周りからどう見られてますかね」
「き、兄妹に見えてるよ」
「ふふ、おにいちゃんって冗談がうまいですね」
「……」
俺は京との関係に、頭を悩ませるのだった。
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