#34 その配信は誰のためにやっているか
「今さらもう遅い。基礎もなっていないうえ、もう
「……悔しいが、それは認めてやろう。妾は過去の遺物、数千年後の世情など分からぬ無知蒙昧よ」
「なら何で? 貴女もミイラ、私のスキルに対抗できずに傷付いてばかり。そんなに国土が惜しい?」
「……否!」
「ッ、ネフェタル女王が立ち上がったわ! あと2本、ビートを続けなさいアブドゥール!」
「お、おう! 負けんなよ、ネフェたん!!」
「あーあ、続けちゃった。醜女になっても知らないよ?」
「構わぬ。妾の旋律に、もう迷いなどない」
……アブドゥールさんのスクラッチが響くと、再び意識が朧げに戻ってくる。
ネフェタル、いったい、どんな手を……
【アリヴァ!】
「……は?」
はっ?
あいや、まだ1小節も経ってない!
【我が奴隷、我が英雄! この詩は全て其方に捧ごう!
我々を永遠の退屈より呼び覚まし 其方は世界中全ての希望!
妾の、視聴者の、そして
願わくば妾の声に応えよ 最愛なる奴隷、配信者アリヴァよ!!】
【とうとう壊れた? 相当イカれた? ショウリョウバッタの小便なった? ここにいるよねオーディエンスらの存在みーんな忘れちゃった?
いや昔っから
所詮は見た目だけ、初戦敗退、私はお前らを盛り上げる絶対!!】
【視聴者? 観客? もはやどうでも良い。
王墓より妾を世界へ連れ出し 配信の世界へ蘇らせし勇者!
何度も助けられ、何度も教わり、何度も魅せられ、ようやく
叫べ、謳え、注げ、祝え! メフィの女王は!! 芽生えし永遠の愛を、此処に叫ぼうッッ!!】
【甘いの聞いてんの辛いのだけども? 私、ラップバトル受けてやってんだけど?
まあいい、これでお前のターンは終了 格付け完了、証明終了
聴こえる? 私を讃える声が! このダンジョンでは私が英雄だ!!
敗者決定、最高設定!! お前のノイズはかき消されて何処にも――】
「届いたぜ。ネフェタル」
「っ、そんな……馬鹿な」
あと1音で完全敗北だった。
もうネフェタルは言霊にやられてボロボロだ。昔の呪詩遣いのバトルも、こんな血で染まった歴史だったのだろう。
だけど、届いた。それだけ他者を想い、恋し、愛する力は強い。
改めて思い知った。そうでなきゃ、わざわざ
「マジでサンキューな。おかげで心も頭もクリアそのものだ」
「……らしくもないわ。王が奴隷を英雄と認め、心をも奪われるなど……」
「もともと、オレは女王に心も身体も奪われてるよ」
「この後に及んで、冗談とは……はは、格が違う、わ……」
気を失った女王に代わり、今度はオレがマイクを握る。
なるほど、よく調整されている。野外での配信にピッタリだ。
「オレに呪詩は無理だなって思ってたけどよ。何だ、それなら先に言えよな」
「何が先に言えなの……っ、まさか」
「そのまさかだよ。オレは最強の配信者だからな、画面の前ならどんな奇跡だって起こさにゃならねえんだ」
それはマネージャーのお前が一番よく知ってるだろ。
だから得物がカットラスじゃなくてマイクだとしても、それでダンジョンを
「
「やめて……お義兄ちゃんは奴隷なんかじゃ、ないッ!!」
決着をつけよう。
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