未登録国家型ダンジョン ヒンデガルト
#28 お前、嘘だよな?
ダムナティオ・コロセウムは
だが、それ以上の問題……祖国ヒンデガルトのダンジョン化という、想像を絶する事態が起こっていた。
「カムナ、まだ
「申し訳ございません。
「コピーしてから何分経った!?」
「約35分です!」
「つまり、たったそれだけの時間でヒンデガルトを壊滅させたってことだろ。無茶苦茶にも程がある」
頭をくしゃくしゃと掻き、天を仰ぐ。
目標はダンジョン化したヒンデガルトの完全攻略、そしてネフェタルの奪還。
そして敵は、アーやジェイ以上の力を持つダンジョン製作者、エム。
(恐らく人間をダンジョンにする術も持っている。ここから祖国までジェットヘリを最速で飛ばしてかかる1時間の間に、どれだけ勢力を広げてくるのだろうか)
きっとエムは熟達した老人や稀代の天才なのだろう。
ミティアと頭文字のアルファベットが被っているのも偶然だ。
義妹もいま画面外で気絶させられていて、震えながらダンジョン化に抗おうとしているに違いない。
「……なあ、カムナちゃん」
「はい、貴方様のカムナです」
「少し変なこと聞いていいか?」
彼女が世界一のファンだからこそ、聞いておかなければ。
「もし、さ。既にオレが死んでいてミイラだとしたら」
「そんなことはあり得ません、世界の希望が
「……はは」
そうだよな。普通は、そうなんだ。
意思を持って動く死体なんざ、普通は化物だって思うんだ。
なのに、オレの死もネフェタルの存在もすんなり受け入れてさ。
本当に、心が広くて思慮深い義妹だよな。
「現地の監視カメラとネフェタルの配信コメント欄から照合が取れました。アリヴァ様、ダンジョン製作者エムの正体は」
「聞きたくない」
「ですが」
「頼む」
この目で確認するまでは信じない。
いつものスタイルに反するし、ダンジョンに潜るときは情報があればあるほど良いのだけれども。
「……分かりました。ジェットヘリが到着したため、参りましょう」
「すまん。急いでほしい」
「はいっ!」
ワガママだよな。それも分かってるよ。
だけど、初めてなんだ。
初めて、ダンジョンに挑むのが怖いって思ってしまったんだ。
強くなったのに、強くなる決意をした日ですら怖いものなんて無かったのに。
(皆、無事でいてくれ……!)
だから今はこの願いを軸にして、恐怖を乗り越えるしかない。
乱れた深呼吸と共に、心臓のドラムがヘリの音と混ざり合っていた。
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